2030年には34.1%の
輸送能力不足が生じる恐れがある
平林氏は講演の冒頭、日本の物流がどのような問題を抱え、それがいかに深刻なのかについて、数字を交えて解説した。
「日本の物流危機とは、突き詰めればECの取引拡大などで小口多頻度化する貨物量と、賃金が相対的に低く、過酷な長時間労働を強いられるトラックドライバーの人材不足という需給ギャップの拡大によって、モノが運べなくなる事態に陥りかねないことです」(平林氏)
トラックドライバーの時間外労働に上限規制が設けられた「物流の2024年問題」によって、労働力不足による物流需給のひっ迫はますます激しくなった。
平林氏は、「2024年問題が注目されたとき、物流効率化に取り組まなかった場合、2024年の輸送能力はコロナ前の19年に比べて最大14.2%不足すると試算されましたが、このまま需給ギャップが拡大すると、2030年には34.1%の不足が生じる恐れがあります」と警鐘を鳴らす。では、この危機を乗り越えるため、企業は物流をどのように見直すべきなのか?
平林氏が提言したのは、労働環境の改善による人材確保や、不合理な商慣行の見直し、デジタル技術を活用した物流DXの推進などである。
「労働環境の劣悪化がドライバーの減少を招き、物流コストアップの要因となっています。また、調達や生産、販売などのデータが同期されておらず、需要予測や生産・供給計画に応じた物流が実現できていないことも効率化を妨げる要因になっています。物流の能力が競争力を左右する時代においては、企業は物流も統合したサプライチェーン・マネジメントを実践する必要があります。その管理を円滑化するためにDXが求められるわけです」(平林氏)
垂直領域【物流統合型サプライチェーン・マネジメント(SCM)】
物流の能力が競争力を左右する時代において、企業は調達、生産、販売のほか、物流も統合したサプライチェーン・マネジメントを確立する必要がある。これを実現するには、非合法な商慣行の見直しや、物流DXが必須だ
フィジカルインターネットで
最大17.8兆円の経済効果も
続いて平林氏は、25年4月に施行された物流効率化法について説明した。
同法は、荷主・物流事業者間の商慣行を見直し、荷待ち・荷役時間の短縮や積載率の向上を図るために施行されたものだ。すべての事業者に、物流効率化のために取り組むべき措置について努力義務を課し、国が定めた判断基準に基づいて指導・助言や、調査・公表などが行われる。さらに一定規模以上の特定事業者については、26年4月以降、物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられた。
「CLOには、発荷主と着荷主、荷主と物流事業者の関係をつなぐ『外交』の責任者としての役割も期待されています。外部との連携強化によって、個々の企業の枠を超えた物流変革に取り組んでいただきたい」と平林氏は呼びかけた。
最後に平林氏は、次世代の物流システムである「フィジカルインターネット」の実現に向けた経産省の取り組みについて語った。同省は国土交通省と共に年1回程度、フィジカルインターネット実現会議を開催している。両省が策定したフィジカルインターネット・ロードマップを基に、施策の進捗管理や検証などを行う会議体だ。平林氏は「同ロードマップは2040年をゴールに設定しており、フィジカルインターネットが実現すれば、40年に11.9兆円から17.8兆円の経済効果がもたらされると試算しています。経産省としても、民間と緊密に連携しながら実現に向けて頑張っていきたい」と力強く語った。
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