社内の物流課題を可視化・共有し
会社全体に意識改革を浸透させた
深井氏は、2019年に営業部門から物流部門に異動。物流業務は未経験の状態から、日清食品の物流改革を指揮する立場となった。
「社外の様々な人に一から教えを請いました。結果としてそれが、課題の本質を早く見極めるきっかけになったと思います」と深井氏は明かす。
深井氏が見つけ出した日清食品の物流の課題。それは、大きく2つあった。
1つは、即席麺などを卸や小売店に届ける商品物流が季節波動と特売波動に影響されやすいこと。もう1つは、工場に資材を入れる調達物流が、工場ごとの最適化になっていたことである。
「即席麺がよく動く12月には、動きが鈍い6月に比べて約1.8倍もの物流リソースが必要です。この季節的な幅の違いが、トラックや倉庫の確保を難しくしていました。また調達物流では、各工場がそれぞれの生産計画に基づきバラバラに発注することで発生していたムリ・ムダ・ムラ。それに資材部も生産部もSCM部も気づいてすらいませんでした」と深井氏は説明する。
これらの課題を解決するため、まず深井氏が取り組んだのは、業務プロセスの可視化と共有だ。季節の違いや特売の有無によって物流量はどれだけ変わるのか? バラバラな資材発注がどのような無駄を生み出しているのか? これらのエビデンスを、資材部や生産部といった社内の各部門に公開したことで、「会社全体としていかに物流の無駄をなくし、効率化していくか?」という共通の視点が生まれ、意識改革が図られていった。
「物流に関する社内データを横串で共有できる環境が整ったことで、複数工場が個別のサプライヤーに資材を一括オーダーする仕組みが出来上がるなど、一歩一歩改革が進んでいきました」(深井氏)
CLOの高い視座での取り組みが、
会社全体に好影響を与える
さらには他社との協働体制も構築中だ。「ハードルはありますが、異業種との共同輸送によってトラックの積載率が向上すれば、お互いにメリットがあります。発着荷主が協力しての共同保管も効率化に有効です。実現に向け着実に進めていきたいと思っています」(深井氏)。
異業種の企業と協力し共同輸送の仕組みを構築中
フィジカルインターネットの実現に向けて、異業種企業との共同輸送を計画する日清食品。写真のように、軽い即席麺と重い飲料をバランスよく積めば、容積積載率と重量積載率を最大化できる
同社はさらなる物流課題の解決のため、需要予測の精度向上や、物流リソースの最適配置などを目指し、AIエージェントの積極的な活用を始めた。デジタル人材の育成にも取り組み、従来の考え方に縛られない社風を醸成したい考えだ。
これらの一連の姿勢や取り組みが評価され、日経ビジネスが25年夏に選んだ「CLOオブザイヤー」で同社は金賞を受賞した。
畑違いの部署からCLOに就任し、日々、物流改革に取り組む深井氏は、これからCLOとなる人に向けて、「サプライチェーン全体を最適化するという高い視座を持って物流課題に取り組めば、会社全体に様々な好影響を与えられる」とエールを送る。
最後に深井氏は、「会社や業界を超え、ウェルビーイングなどの社会課題の解決まで目指した物流改革に今後もチャレンジしていきます」と語り講演を終えた。
関連記事
RELATED LINKS
物流・ロジスティクスセミナーレビュー
効率化・人手不足解消に挑む「進化を続ける物流」
2024年問題を乗り越え、
物流危機を回避するには
フィジカルインターネットの実現に向けた
経済産業省の物流政策
経済産業省
商務・サービスグループ
流通政策課長 兼 物流企画室長
平林 孝之 氏
物流・ロジスティクスセミナーレビュー
効率化・人手不足解消に挑む「進化を続ける物流」
2024年問題はどうなったのか?
その顛末と教訓
サプライチェーンを止めないために学びをどう生かすか
日本ロジスティクスシステム協会 理事
JILS総合研究所 所長
北條 英 氏
物流・ロジスティクスセミナーレビュー
効率化・人手不足解消に挑む「進化を続ける物流」
一貫パレチゼーションの仕組みを提供し、
物流標準化を推進
「パレット」の共同利用が
物流全体の効率化につながる
日本パレットレンタル
代表取締役社長
二村 篤志 氏
物流・ロジスティクスセミナーレビュー
効率化・人手不足解消に挑む「進化を続ける物流」
深刻化する人手不足──
倉庫自動化はどこまで進んだか
物流倉庫自動化の現在地と
推進を支援するソリューション
プロロジス
開発部 物流コンサルティングチーム
ディレクター
本庄 哲太 氏
物流・ロジスティクスセミナーレビュー
効率化・人手不足解消に挑む「進化を続ける物流」
サプライチェーンの川下から
川上へ遡り課題を解決
「物流部門発」で前進する
経営・プロセス改革とは?
ダイキン工業
物流本部長
生地 幹 氏