工程を逆算して課題を発見
物流起点での部門連携が実現
ダイキン工業の物流本部設立は1984年と歴史がある。入社以来物流畑を歩み物流本部長に着任した生地氏は、ビジネス全体を俯瞰しながら物流起点の全体最適に取り組む重要性を痛感してきた。
「当社では、BtoCの家庭用空気清浄機から、BtoBの大型の空調機まで多種多様な製品があり、その数は国内だけでも5000機種以上。変種変量の製造ラインにおける多品種小ロットの生産は、物流工程で人手による仕分けが多く発生し、重量製品についてはクレーンによる荷役も必要でした」(生地氏)
顧客ごとの配送ニーズへの対応も欠かせない。全国にある卸店や工事店などの事業所、家電量販店や大手卸店の倉庫、建設中の工事現場など、配送先は多様だ。季節性が高い商品は、冷夏・暑夏などによる季節波動を受けやすく、納品が週末に集中することもあり、配送フローは日々変化する。
同社は物流工程の最適化から逆算し、社内で連携して生産プロセスの改善から取り組んだ。
「まずは、しっかり物流部門から声を上げることです。生産部門と連携し、同機種のまとめ生産や別機種が混載したパレットの削減を実施しました。また、物流効率を考慮し製品サイズや形状の設計変更に取り組んだことで、従来はクレーンが必要だった大型製品もフォークリフトでの積み降ろしが可能になり、荷役時間を大幅に短縮できました」と生地氏。
さらには空調業界共通のパレットを導入することで、流通工程における同業他社製品との混載を可能にし、輸送効率の向上を目指す。異業種との共同配送も積極的に推進している。
ダイキン工業が進める「物流部門発」サプライチェーン改革
抱える課題を可視化し、収益性の向上やキャッシュフローの改善につながる改革を進めなければ、社内外の共感と協力は得られない。デマンドプル型の視点を軸に、物流部門内にとどまらないサプライチェーンの最適化を推進する
プッシュ型からデマンドプル型へ
転換に必要なCLOの俯瞰力
同社の「物流部門発の改革」が前進した鍵は、従来のプッシュ型からデマンドプル型への考え方の転換にあったと言える。顧客の需要を起点とし、サプライチェーンの川下から川上へと遡って、物流プロセスだけでなく、調達から生産、販売までのサプライチェーン全体における無駄の徹底排除を全社一丸となって推進した。
「この実現のためには部門間の利害関係の調整、生産部門と物流部門の人的交流、社内独自のデータ分析も非常に大切な要素でした。物流部門はサプライチェーンの最終ランナーで、受け身な立場と見られがちですが、真のミッションは事業を発展させ、お客様の困りごとを解決することにあるはずです」(生地氏)。これから物流統括管理者(CLO)の任に当たる人をはじめ、生産や販売など物流以外の部門の人にも伝えたいメッセージだと生地氏は強調する。
最後に同社の今後について生地氏は、「気候変動の影響も背景に、四季を通じて需要の高まる空調機器を安定的に供給していくためには、精度の粗い計画に基づいたプッシュ型の生産戦略や在庫戦略から脱却しなければなりません。物流危機が社会で共有される今は変革のチャンスとも言えます。今後も社内外とのコミュニケーションを通して、物流起点の経営改革を進めていきます」と語った。
関連記事
RELATED LINKS
物流・ロジスティクスセミナーレビュー
効率化・人手不足解消に挑む「進化を続ける物流」
2024年問題を乗り越え、
物流危機を回避するには
フィジカルインターネットの実現に向けた
経済産業省の物流政策
経済産業省
商務・サービスグループ
流通政策課長 兼 物流企画室長
平林 孝之 氏
物流・ロジスティクスセミナーレビュー
効率化・人手不足解消に挑む「進化を続ける物流」
2024年問題はどうなったのか?
その顛末と教訓
サプライチェーンを止めないために学びをどう生かすか
日本ロジスティクスシステム協会 理事
JILS総合研究所 所長
北條 英 氏
物流・ロジスティクスセミナーレビュー
効率化・人手不足解消に挑む「進化を続ける物流」
一貫パレチゼーションの仕組みを提供し、
物流標準化を推進
「パレット」の共同利用が
物流全体の効率化につながる
日本パレットレンタル
代表取締役社長
二村 篤志 氏
物流・ロジスティクスセミナーレビュー
効率化・人手不足解消に挑む「進化を続ける物流」
深刻化する人手不足──
倉庫自動化はどこまで進んだか
物流倉庫自動化の現在地と
推進を支援するソリューション
プロロジス
開発部 物流コンサルティングチーム
ディレクター
本庄 哲太 氏
物流・ロジスティクスセミナーレビュー
効率化・人手不足解消に挑む「進化を続ける物流」
将来のフィジカルインターネットを目指し、
改革を着実に推進
全体最適のための物流改革で
CLOの果たすべき役割
日清食品
常務取締役
事業統括本部長 兼 Well-being推進部長
物流統括管理者(CLO)
深井 雅裕 氏