


双日
双日は世界に77の拠点があり、その1つがタイの首都バンコクにある。タイでは、主にプラスチックなどの化学原料や自動車、消費財などを扱っており、「バンコク拠点をベースに、タイ市場でのビジネスに非常に力を入れている」(荒川氏)。
タイ国内の関連企業として、高度化成肥料製造会社のThai Central Chemical Public Company Limited(TCCC)や、2024年5月に設立したばかりのSojitz Kaset Dee Xがある。Sojitz Kaset Dee Xはタイの農家に向けて、営農支援サービスや農業資材、農機、ファイナンスなどを提供・販売する農業プラットフォームを展開していくという。
全事業エリアでデジタルを積極的に使う
双日は荒川氏が入社した2021年ごろからDXに注力し始めたという。最も力を入れたのが人材育成だ。荒川氏は「当社の最大のアセットである社員がデジタルを使いこなすことができれば、付加価値を創造する力がさらに高まると考えた」と説明した。
双日はデジタル人材のスキルレベルを5段階に設定している。レベル1は全社員が身に付けるべきデジタルスキルだ。情報処理の国家資格である「ITパスポート」の取得をアシスタント職を含めた全社員に義務付け、既にこれを達成したという。レベル2は総合職を対象としたもので、eラーニングでデジタルに関する23講座の修了を求める。
レベル3以上は「応用人材」と位置付けている。広く提供されている育成プログラムは総合商社の現場での実用性が乏しかったため、「パートナーの支援を受けて独自にプログラムを作った」(荒川氏)。
双日は現在進めている「中期経営計画2026」において、「Digital in All」という言葉を掲げている。荒川氏は「デジタルを使わないと価値創造や成長ができないということを前提に、全事業エリアでデジタルを積極的に使っていこうという方針だ」と語った。
データを駆使し、農家の収益向上につなげる
事業におけるデジタル活用の一環として取り組んでいるのが、タイでSojitz Kaset Dee Xが取り組みを進めている農業プラットフォームだ。元々は「TCCCの肥料を購入していただいているタイの農家の方に、より豊かになっていただけるようテクノロジーで貢献したいと考えた」(荒川氏)ことからスタートしたプロジェクトだという。
タイの農業は情報網が発達していないため、「例えば病気でない苗を調達したり、気候変動に備えたりといったことが難しい」(荒川氏)。広く生産されているキャッサバ芋については、「どこが高く買ってくれるのかといった販売先に関する情報がないため、近隣に持っていくしかなかった」(同)。
こうした状況を変えるために、3年前から開発に取り組んできたのが農業プラットフォームだ。同プラットフォームによって、キャッサバ芋の栽培から収穫、販売に至るまでの様々な支援を農家に対して提供する。
例えば、特定の農家がどれだけの農場を持っているか、いつ、どれだけの量の種をまき、現在の育成状況はどうなっているかといったデータをプラットフォーム上で管理する。農家が所有している農機具のデータも保存できるため、「この農家のキャッサバ芋はこれくらい育っていて、来月にこの農機具が必要になるが、所有していない」といったことが分かる。これにより、農機具を必要なタイミングで貸し出す、といったことができるわけだ。
今後、衛星データを活用することで「作物に病気がはやっていないか、はやっている場合にどのように広がっているか」といったことを効率的に把握し、対処につなげることも可能だ。
キャッサバ芋は鮮度が重要で、収穫後3〜4日で状態が変わってしまうという。そこで、収穫量のデータやキャッサバ芋を加工するミルの稼働状況などを分析し、「収穫の時期を平準化してミルの稼働率を最大化できるようにする」(荒川氏)。加工したキャッサバ芋は、プラットフォームに登録している販売先に出荷することが可能だ。
双日は今後、農業プラットフォームで提供するサービスをさらに拡大する意向で、同プラットフォームを利用してサービス提供するパートナーも募っていく考えだ。