


Closing Session
入山氏は基調講演で、日本とタイの様々な共通点を指摘した。共に製造業が強く、今後IoT(Internet of Things)が拡大すると大きなチャンスがあることや、人が担っていた多くの作業がデジタル化した後に競争優位に立つために必要になる「おもてなしの心」を備えていることなどだ。ガンタトーン氏も「日本とタイはとても似ている」と、入山氏の意見に同意した。
ガンタトーン氏は日本の大学を卒業した後、目黒にあるタイ王国大使館に5年間務め、経済産業省や文部科学省との窓口を担当したという。その経験から、「日本とタイは、どちらも暗黙の了解が多いハイコンテクスト文化であるのが大きな共通点だ」(ガンタトーン氏)と話す。
例えば、どちらの国の人も「忖度をして相手を立てたり、本音をなかなか言わなかったりする」(ガンタトーン氏)。場の空気を読むため、初対面で相手を傷つけるようなことを絶対に言わない点も同じだという。
このように近しい国民性を持つ日本とタイではあるが、ガンタトーン氏は「お互いにすぐには心を開かないため、相性はとても良いはずなのに、実際にはそれほど仲良くなれない」と指摘した。例えば、日本人の駐在員がタイに来た場合、部下のタイ人と本音でやり取りできるまでに長い年月がかかることが多いため、「やっと分かり合えたと思ったタイミングで帰国する、といったことが珍しくない」(ガンタトーン氏)。
タイには日系企業が約6000社進出しているが、こうした両国の国民性が影響し、「日系企業同士で付き合うことが多く、タイの大手企業などとつながることがこれまでほとんどなかった」(ガンタトーン氏)。しかし、「仮に日系企業とタイ企業が協力したとしたら、共通点が多いために非常にうまくいくはずだ。今後はぜひそういった関係を築いてほしい」(同)。
GXにタイ企業と協力して取り組むべき
続いてガンタトーン氏は、タイ企業が日系企業と違う点として、ファミリービジネスが全体の7割を占めており、トップダウンで物事が進んでいくことを挙げた。GX推進においてはこの点がプラスに働いており、「地球や母国の長い繁栄を願い、何らかを還元したいというピュアな思いで取り組んでいる」(ガンタトーン氏)。
入山氏もこれに同意した。「社会や産業の既存の仕組みを変えるのは大変で、GXもそういった取り組みに当たる」(入山氏)とし、「日系企業はファミリービジネスが少なく、しがらみが多い。GXを推進する場合、決断力があり、長期的な展望を持っているタイ企業と一緒に取り組む方が、成功しやすいのではないか」と続けた。
ガンタトーン氏は、タイにない日本の強みとして、「課題を発見して定義し、正解にたどり着くまでそれを繰り返す力」を挙げた。気候の変化が少なく、食が豊かなタイと異なり、「日本は四季があり、厳しい自然や限られた資源の中で試行錯誤して稲作に取り組んできた歴史がある。そのため日本人は、深い思考が得意だと感じる」(ガンタトーン氏)。
ガンタトーン氏は「タイは農業など目に見えることは得意だが、バイオなど目に見えない、高度なことは苦手な傾向にある」とし、「デジタルもあまり得意ではないので、日本と協力して取り組んでいくべきだ」と展望を語った。
入山氏はタイの強みとして、「今大きく成長しており、先進国のような古い制度がない分、一足飛びで最先端に進む『リープフロッキング』と呼ぶ現象が起きている」と紹介した。今後はタイから日本がイノベーションを学ぶ機会が多くあるはずで、「これまでは日本企業がタイに出ていくケースが比較的多かったが、タイ企業を日本に迎え入れることも重要になるはずだし、一緒に海外に出ていくことも視野に入れるべきだ」(入山氏)とした。