アナクア
半導体、エレキ、エンタメ……「感動」の源泉に知財あり
ソニーの知財戦略は、対話から
事業成長の「根幹」に知財を
エレクトロニクスからエンタメまで、幅広い分野で飛躍を続けるソニー。同社は数多ある知的財産をいかに管理し、戦略を立案しているのか。ソニーグループの知財部門を率いる下田平麻志氏が、パナソニック時代の元同僚で新たにアナクアの日本法人代表取締役社長に就任した足立和泰氏と、忌憚なく語り合った。
─ソニーの知的財産管理は、どのように行われていますか。
下田平 ソニーはエレクトロニクスの会社からエンタメの会社に変わったと見えるかもしれません。しかしコンテンツを通じて、人々に感動を与えるという理念は創業以来まったく変わっていません。
知財部門のすべきことは、経営に示唆を与えるための情報提供や提案だと思っています。変化のスピードも速く、過去のように十分先が見通せない状況の中で、経営陣とは対話型でニーズも得ながら、コミュニケーションをしています。その際に周辺の様々な情報を掛け合わせることがポイント。それができる知財を目指しています。
当社には半導体、エンターテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S:旧エレクトロニクス系)、映画、音楽、ゲーム、金融の6つの事業があります。創業以来の半導体とET&Sでは知財を集約管理していますが、変化のスピードが速いゲームや音楽といった新しい事業は現場にも知財部門を置き、ガバナンスを利かせる求心力と事業を現場に任せる遠心力のバランスを取りながら管理しています。
扱うデータは特許だけでなく、意匠や商標など様々です。これらの創出から権利の活用までグループ全体で一元化し、利用者が各視点から管理・分析を行っています。
(左)ソニーグループ 知的財産・技術標準化部門 部門長 下田平麻志 氏パナソニックでエンジニアとして通信・放送関連の規格・システム開発に従事。その後知財、経営企画、事業企画などに携わり、R&D責任者、海外子会社トップなどを務める。戦略の立案だけでなく「実行」にこだわる。
(右)アナクア アジア太平洋地域ゼネラルマネージャー兼日本法人代表取締役社長 足立和泰 氏パナソニックで様々な分野の知財担当を経て、パナソニックIPマネジメントの代表取締役社長を務める。2023年よりサントリーホールディングスで、新規事業創出のための知財管理などを経験。2025年4月より現職。
求められる、変化への覚悟
膨大なソニーの権利を評価せよ
足立 対話型というお話がありました。アナクアの「AQX プラットフォーム」は知財管理システムですが、コミュニケーションツールでもあります。一元管理した知財データは、各ステークホルダーがそれぞれの視点で活用可能です。単なる管理ツールではなく、コミュニケーション基盤として事業活動に貢献できます。
─知財管理システムにどのような役割を求めていますか。
下田平 進化のスピードが桁違いに上がっています。既存技術を高スピードで凌駕する新しい技術の下でビジネスをどう構築し、それを支える知財はどうあるべきかを真剣に考えていく必要があります。これまで通りの仕事では到底追いつかず、変化に対する覚悟が必要です。
このような状況では、複雑化した知財情報を使った戦略立案も、より一層スピード感を求められます。そのためには効率化が欠かせません。アナクアを採用した理由の一つが、新技術・機能の迅速な導入です。AIを採用した最新バージョンによって、大いに効率化できると期待しています。効率化によってより多くの戦略立案の時間を創出したい。
知財情報の活用には、知財担当だけでなく発明者や特許事務所など様々なステークホルダーが同じように情報を扱える環境が必要。技術輸出規制や個人情報保護など各国法に対応したSaaS型のAQX プラットフォームがそれを実現します。
加えて、先進的な使い方をしているトップランナーのベストプラクティスを活用できるので、情報を極めて効率的に扱えます。私たちがやるべきことにフォーカスできます。
足立 ソニー様は非常に多くの権利をお持ちです。膨大な権利一つひとつを、世の中の流れを見ながら評価していくことは困難です。そこで必要なことは知財をポートフォリオとして俯瞰することです。AQX プラットフォームを使うと、時間経過によって評価や分類などを変え、簡便かつ複眼的に権利の価値を見極めることもできます。
特に、このAQX プラットフォームに搭載されたポートフォリオ管理機能は、同プラットフォームで提供されるAIを活用した13種類の特許の日本語サマリーの自動生成や、お客様独自の技術分類を他社特許にも適用できるAI分類と組み合わせることで、知財ビジネス管理や知財戦略の構築を大幅に効率化します。その結果、自社の強みや事業、技術と結びついた知財の特定がより容易になります。ソニー様にはこの機能をいち早くご活用いただき、高い評価をいただいています。
こうした付加価値の強化を継続していくため、アナクアではお客様からのご要望に応じてシステム開発を進めますが、それだけでは顕在ニーズにしか対応できません。潜在ニーズをつかんで新機能を提供したい。海外と日本のお客様ではニーズが異なるはずです。アナクアの中でも日本から発信し実現していきたい。
下田平 足立さんの強みは、ユーザー側の立場で考えられるところです。複数の業界を経験し、知財専門会社のトップという経歴もあります。アナクアへの期待はすなわち、日本法人のトップになられた足立さんへの期待でもあります。
足立 身の引き締まる思いです。これまでの経験を生かし、機能はもちろん、サービスの強化も進めたい。例えばお客様同士が共に学び、刺激や気づきを得ることができる場を活性化していきたいと思います。
下田平 確かに知財データは業界や国、環境によって本当に様々な使い方があります。他社の使い方を学ぶことで、新たな気づきを得ていければ。
知財は今、生まれ変わる
日本一丸でチャレンジを
─ソニーの今後の展望を教えてください。
下田平 半導体とET&Sについては経験も豊富で実績もあります。もちろんエンタメ系においてもその経験が生きる領域はたくさんありますが、事業全体として知財が経営の大きなツールとなるようチャレンジをしています。その意味で、知財の使い方、我々の貢献の仕方が新しく生まれ変わるチャンスだと思っています。 事業部門とも密に連携し、単に技術を守る知財ではなく、事業成長を支える知財を目指します。
─読者へのメッセージをお願いします。
下田平 昨今生成AIが世間を賑わしていますが、日本にはコンピューティング技術やセンシング技術など先端を走る領域が少なからずあります。残念ながら巨大テック企業に占有されている現状がありますが、当社に限らず日本企業にもまだまだチャンスはあると考えています。
そのために経営のツールとして、いかに知財を使いこなして事業成長を支えるかに知恵を絞り、チャレンジしていきたい。日本の中だけで競争していても今後の成長はないので、外に目を向けて業界、ひいては日本一丸となって、チャレンジできればと思います。






