RYUKA国際特許事務所
今の知財には、マーケティングが足りない!?
選択と集中を可能にする
「特許マーケティング」とは
特許でいかに成長するか。発明の検討だけでは足りない。市場や競合の動向によって特許の位置付けが変わるからだ。RYUKA国際特許事務所は特許出願を「未来への投資」と捉えてビジネス視点を加える。同社が提唱する「特許マーケティング」は出願投資のExitを可視化し、経営層と知財部門の乖離を埋める。
特許は利益の源泉を守るべきものだ。エスプレッソ機を例に、RYUKA国際特許事務所(RYUKA)所長の龍華明裕氏は説明する。
「N社はエスプレッソ機や方法の特許を多数取得しましたが、コーヒーカプセルの特許が薄くなり互換カプセルが生まれました。カプセルは消費され続けるため、マシン販売より大きな利益を生みます。そこで例えば、カプセル表面に、お湯の温度や抽出時間を制御するプログラムを印刷するとカプセルの特許を強化でき、プログラム印刷がなければマシンが動かないようにすると互換カプセルを排除できます」。プリンターのカートリッジも、これと同様の「消耗品の高機能化」により特許保護されている。
利益の源泉を特許で押さえるとオープン&クローズ戦略を採用できる。「例えばエスプレッソ機の特許・商標と設計図や製造ノウハウをパッケージでライセンスし、世界中で多様なマシンを提供すればカプセルの販売が増えます。その後にライセンス先を増やしてマシン価格を下げさせると、利益を他社マシンから自社カプセルに戻すことができます。これがクアルコムなどのオープン&クローズ戦略ですね」(龍華氏)。
特許満了までにブランドを浸透させ、提携先のネットワークを構築すると、次世代のカプセル規格を定めやすくなり、カプセルを特許で保護し続けられる。「これがDolbyなどの規格支配戦略です」(龍華氏)。このような特許戦略を立てて初めて、特許出願の内容と出願国が定まる。
日本企業に休眠特許が多い原因を龍華氏は指摘する。「経営と知財の乖離が課題です。『面白い発明だから出願する』のではなく、その特許を生かす事業と知財の戦略に沿って出願する必要があります」。
RYUKA国際特許事務所 所長 龍華明裕 氏
特許マーケティングで
経営と知財の乖離を解消
特許出願は未来への投資だ。市場で自社の位置をどこに置くか、目的を定めることで出願投資の最適化が可能となる。これを実現すべく、RYUKAは独自の「特許マーケティング」を提唱する。
「製品をつくる際には、マーケティングが行われます。市場規模や成長率、競合の強みや製品価格などを分析し、勝てるポジションを想定してから開発に着手します。特許にも同じプロセスが必要です。『発明ありき』ではなく、競合会社間における自社の『特許ポジション』を想定してから出願すべきです」(龍華氏)
特許マーケティングでは横軸(自社・他社の利益)と、縦軸(自社・他社の特許の強さ)で4つの領域に分けて出願目的をマッピングする(図1)。
●図1 「特許マーケティング」で定める特許の出願目的利益と特許の強さ、両方のバランスを考慮した4象限のマトリクスで、特許の出願目的をマッピング。この図式に基づいて次の知財戦略を練る
(出所:龍華明裕氏の資料を基に作成)
「自社の利益も特許も強い右上の領域を目指せるなら、他社排除のための特許群を作ります。強い特許を目指せるものの、他社利益の方がはるかに大きい左上の領域ではライセンスによる金銭化が視野に入ります。他社利益が大きく自社特許が弱い左下の領域では、これらの目的を立てられませんが、少数の特許を得るだけでもクロス(相互)ライセンスによる防衛を目指せます。自社利益が大きく、他社特許が強いと見込まれる場合は訴訟リスクが高まるため、損害賠償低減に向けた対策が必要です。また出願先も重要なポイント。自社利益が大きい右側の領域では、自社マーケットへ出願。一方、他社利益が大きい場合は、他社マーケットに出願する戦略を立てられます」(龍華氏)
ただし現時点での分類ではない。5年後、10年後の目標領域を定めることで、出願目的の変遷を時間軸で表現できる(図2)。
●図2 「特許マーケティング」で出願目的の変遷を図式化競合会社、製品、および時期ごとに出願目的は変化する。競合会社(A・B・C)に対して製品ごとに5年後、10年後の予測図を作成し、知財戦略に落とし込む
(出所:龍華明裕氏の資料を基に作成)
「例えば10年後は5年後より他社利益が大きくなり、他社排除からライセンスによる金銭化が必要になるといった動きを図式化できます。この場合は出願を分割して新たな権利も得るべきです。時期ごとに出願目的を変えることで、特許価値の最大化を図れます」(龍華氏)
特許マーケティングは経営層、知財部門、事業部門・研究開発部門の間に共通言語をもたらす。特許を生かした経営戦略で持続的に成長できる。
発明者の暗黙知から
強い特許を生み出す
特許マーケティングを、自社の特許といかに融合させるか。発明者の暗黙知から「発明ありき」でない、真に強い権利を取得すべく、RYUKAは「特許ビジュアライゼーション」を提供する。
「発明者が、特許マーケット分析に基づく特許戦略を意識していることはまれです。そこで特許ビジュアライゼーションでは、知財部や事業部と共に、市場動向、競合の出願状況、技術課題などをディスカッションして戦略を共有。特許戦略に精通した第三者の視点が入ることで、利益を生む特許の方向性が見えてきます」と龍華氏は話し、過去に携わったプロジェクトを紹介する。
「デジタルカメラの要素技術で新規事業を起こすというものでした。お客様と議論を重ねる中で、利益の源泉と確信できる課題にたどり着きました。画像の解像度が上がるほどデータ量も増大します。そこでデータ量抑制のために、顏以外の解像度を落とすという発明が生まれました。他社排除のため幅広く特許を取得し、事業売却によりExitに至りました」
特許マーケティングの活用で、ものづくりや技術に優れた日本企業のチャンスが広がる。「特許戦略プロフェッショナルとして、日本企業の躍進に貢献したいと考えています」(龍華氏)。






