IP Bridge
日本企業のトップが、知財戦略を語る時代に
知財は、金融と合流せよ
サービス業、大学にもチャンス
事業に資する特許取得だけでなく、知財を収益につなぐ。日本でも知財戦略を語れる経営者が増えている。スペシャリスト集団IP Bridgeは、実質国内初の「知財ファンド」運営会社として成果を上げてきた。ライセンス、コンサルティング、イノベーションの3つの事業で、日本企業、社会の発展に貢献している。
日本企業には無形資産として多くの知財が眠る。2013年創業、知財活用分野をリードするIP Bridge。実質国内初の知財ファンド運営会社だ。
日本企業が持つ未利用の知財権を買い取り、無断で使う企業に権利行使する。交渉相手は歴戦のグローバル企業。ポイントは「日本型」という点だ。
「1号ファンド(300億円規模)において、ライセンスによる収益化は2024年までの活動で当初計画を上回る成果を収めました。収益の一部を特許権者に還元し、次の開発資金へ還流を行っています。日本経済発展への寄与も当ファンドの重要テーマ。投資家の期待にも応えられたと思います」と、同社CEOの藤木実氏は話す。
新たなライセンス事業にも注力。特許は従来、ハードウエアに関するライセンスが中心だった。近年はビデオストリーミング市場拡大に伴い、「提供するサービスもビデオ関連特許の実施として捉えるべき」という議論が起きている。
「コネクテッドカーなど通信系も含め、サービス業のライセンスは当社が社会貢献できる領域と考えています」(藤木氏)
(写真左から)IP Bridge イノベーション事業部長 マネージングディレクター 吉村岳雄 氏、取締役会長 鳥居真太郎 氏、代表取締役 CEO 藤木実 氏、事業開発部 バイスプレジデント 久保純恵 氏、同部 ディレクター コンサルティンググループ グループ長 渡辺理 氏
投資家が知りたい情報は?
知財と金融の橋渡しに
企業の認識も変わってきた。「2021年のコーポレートガバナンス・コード(CGC)改訂後、上場企業には知財に関する情報開示の充実が求められます。かつては事業に資する特許取得が主眼でした。ここ数年、特許マネタイズ重視の意識が強まっています。知財は活用することで、企業価値の向上に寄与します。当社は特許権者、金融機関を積極的に巻き込んでいます。今は知財ファンドの成功を受け、多くの相談を受けています」(藤木氏)。
2025年、知財を生かし価値を高めた上場企業を、ロールモデルとして表彰する「知財・無形資産ガバナンス表彰」が実施された。「企業の強みを知財の切り口で可視化するために、知財開示や新規事業探索の領域でコンサルティングのニーズが高まっています」と、同社事業開発部ディレクターコンサルティンググループグループ長の渡辺理氏は言う。
同表彰では、カプコンのような非製造業も表彰されている。また、IP Bridgeにも中国電力のような電力インフラ企業に加え、広告代理店やゲーム業界からも依頼があるという。
こうした動きは、知財がもはや製造業や一部のハイテク企業だけのものではないことを物語っている。「新規事業探索や特許ライセンスだけでなく、企業の強みを知財の切り口で可視化するためのコンサルティングのニーズが高まっています」(渡辺氏)。
知財は投資家の判断材料となる。しかし知財と金融の間にある壁は高いと、同部バイスプレジデントの久保純恵氏は指摘する。
「投資家が知りたいのは、特許の数や内容そのものよりも、例えば5年、10年先もシェアを維持できるか。重視するのは投資対象のリスクと価値を調査する視点です。当社コンサルティングの特長は、知財と金融の橋渡しを行えること。2020年より業務提携している大和証券を始めとする金融機関とのネットワークは、当社の強みです」
知財に目を向ける投資家も増えている。「PL(損益計算書)/BS(貸借対照表)内の要素だけでは、真の価値は見えてきません。知財は企業の競争力や成長を判断する、大事な要素です」と、取締役会長の鳥居真太郎氏は付け加える。
●IP Bridgeの事業3本柱特許を活用して収益につなげるライセンス事業。大企業向けに知財戦略をサポートするコンサルティング事業。ベンチャー企業の育成を行うイノベーション事業。この3本柱で総合的に、日本企業の知財経営を支援する
大学にも権利行使を
知財紛争の解決も可能に
日本経済のブレークスルーとなるのが、ベンチャーやスタートアップによるイノベーション。しかし社内に知財部門が存在しないケースは多い。
「特許の重要性を理解しても、何をすべきか分からないのが現状です。それを解決するのが、当社スタッフを知財部長として月10万円で活用できるサービスです。特許出願の是非やグローバル対応、金融機関との関係構築などを経営者に提言。実績を重ね、常時30社を支援しています」と、同社イノベーション事業部長マネージングディレクターの吉村岳雄氏は話す。
大学の知財は、研究して論文を書いて世の中に出す。従来は企業に研究成果を利用してもらうことが主流だった。昨今は大学発ベンチャーも定着。課題は大学自体の知財に対する向き合い方だ。
「大学では、知財に関して会話するのは研究者です。当社はシーズとニーズのマッチング、具体的なユースケースへの落とし込みなどを支援します」(吉村氏)
産学連携の特許活用も変化が起きている。「産学連携の成果である特許は、企業と大学の連名出願となることがあります。これまで大学は権利行使に後ろ向きでした。2023年、政府は『大学知財ガバナンスガイドライン』を公表。大学の知財を最大限に活用し社会貢献するとともに、資金調達能力向上を目的としています。大学に対して訴訟を含む権利行使も定めています。当社は、連名特許はもとより大学における知財のマネタイズをサポートします」(吉村氏)。
今後について藤木氏は話す。「当社は企業や大学、ベンチャーの知財戦略策定・実行支援、金融機関への橋渡しを通じて、日本企業、社会の発展に寄与していきます。また知財紛争に関して、弁護士でなくてもADR(裁判外紛争解決手続)が行える認定を法務省から受けました。当事者として特許裁判の経験豊かな当社にとって、活躍の場が広がります」。






