あなたの疑問に専門家が回答!
認知症に進行させないためにできること
「最近、話した内容をすぐに忘れてしまう」「同じことを何度も聞いてしまう」——。そんな変化を自覚して受診したところ、「軽度認知障害(MCI)」と診断される人が増えています。認知症の一歩手前とされるこの状態から、認知症へと進行する人もいれば、元の状態に戻る人もいます。進行をさせないためにはどうしたらいいのでしょうか。認知症専門医の遠藤英俊医師に聞きました。
本記事は日経Gooday「あなたの疑問に専門家が回答! 健康Q&A」に掲載された内容を転載・編集したものです
軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は、物忘れはあるけれど、日常生活はできるという状態。自分の変化に気づいて受診する人もいれば、家族の指摘で検査に至るケースも少なくありません。
「MCIは、認知症の一歩手前の状態です。長谷川式簡易知能評価スケール(長谷川式テスト)では、30点満点で20点以下だと認知症の疑いありとされますが、MCIは21〜27点あたりの人が該当します」と遠藤医師は解説します。
認知症と診断された場合、治療で進行を遅らせることはできても、もとの認知機能に戻すことは困難です。しかし、MCIの段階であれば、状態を維持したり、改善したりできる可能性が残されています。
「実際に、MCIと診断された人のうち、1年後に認知症へと進行する人の割合は5〜15%。一方で、正常な状態に戻る人も16〜41%いるというデータがあります」(遠藤医師)
では、MCIの状態から認知症へと進行させないためには、どのような取り組みが有効なのでしょうか。遠藤医師は、日常生活に取り入れられるものとして、次の4つを挙げます。
「最も効果的なのは、有酸素運動です。1回30分以上、目安として6000歩程度のウォーキングを週に3回行うことが理想です。血流が良くなることで、脳の働きが活性化されます。運動に加えて重要なのが、脳を使う習慣です。囲碁や麻雀といった頭を使う遊びはもちろん、コンピューターゲームでもかまいません」
さらに、社会とのつながりを持つことも大切です。
「高齢者の中には、夫や妻以外とほとんど会話をしないという方も多いでしょう。しかし、それでは脳への刺激が不足します。理想は、1日5人以上と会話すること。5人というとハードルが高いように思われるかもしれませんが、買い物に行った先で話をした店員さんも含めれば、そんなに難しいことはありません。また、栄養バランスのいい食事を摂るよう心がけることも重要です」(遠藤医師)
「運動」「頭を使う」「人との会話」「栄養バランスのいい食事」、この4つをしっかり実践したことで認知機能が改善したというエビデンスもあります。
運動や会話以外にも、楽しみながら脳を使う方法があります。
「たとえば、絵を描く、俳句を詠む、楽器を演奏するなどの活動もいいでしょう」(遠藤医師)
これまで趣味としていたことをやめてしまうのは、脳への刺激を減らすことにもつながりかねません。できる範囲で継続することが大切です。完璧にやろうとせず、『楽しく取り組むこと』を第一に考え、のんびりとしたペースでつづけてみてはいかがでしょうか。
軽度認知障害(MCI)は、認知症へ進行するリスクを持つ一方で、回復の可能性もある状態です。重要なのは、現状を正しく理解し、生活の中でできる対策を少しずつ取り入れていくこと。「運動」「脳の活性化」「人との会話」「栄養バランスのいい食事」といった取り組みを継続することで、認知症の予防や遅延につなげることができます。
Profile
遠藤英俊(えんどう ひでとし)医師
認知症専門医 聖路加国際大学臨床教授 名城大学特任教授

1982年滋賀医科大学卒業、87年名古屋大学大学院医学研究科修了。総合病院中津川市民病院内科部長、国立療養所中部病院(現・国立長寿医療研究センター)内科医長などを経て、国立長寿医療研究センター長寿医療研修センター長および老年内科部長を務め、2020年3月に退職。現在は聖路加国際大学臨床教授、名城大学特任教授。著書は『最新 ボケない! “元気脳”のつくり方』(世界文化社)、『よくわかる認知症Q&A ―知っておきたい最新医療とやさしい介護のコツ―』(中央法規出版)など多数。認知症、高齢者虐待問題、介護保険関連を専門とする。
本記事は日経Gooday「あなたの疑問に専門家が回答! 健康Q&A」に掲載された内容を転載・編集したものです
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