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認知症に挑む 革新と社会の絆

あなたの疑問に専門家が回答!

母が「もしかして認知症?」攻撃的な変化に気づいたら

思い込みや怒りの背景にあるもの

「物がなくなったのは誰かが盗ったに違いない」「みんなが私をばかにしている」——高齢の親がこうした発言をするようになったとき、家族としては戸惑いと不安を覚えるものです。思い込みが強くなり、怒りっぽくなる背景には、認知症の初期症状が隠れていることもあります。認知症専門医の遠藤英俊医師に、見極め方と早期対応のポイントについて聞きました。

本記事は日経Gooday「あなたの疑問に専門家が回答! 健康Q&A」に掲載された内容を転載・編集したものです

思い込みや攻撃的な言動は、認知症のはじまりかもしれない

 高齢の親が急に怒りっぽくなったり、被害的な言動を繰り返したりすると、家族としては「何かおかしい」と感じるはずです。

 「なかにはすでに認知症が始まっているケースもあります。たとえば怒りっぽさが目立ってきた場合は、嗜銀(しぎん)顆粒性認知症が疑われます」と遠藤医師は解説します。

 嗜銀顆粒性認知症とは、「嗜銀顆粒」という物質が脳の神経細胞に蓄積して発症するもので、物忘れだけでなく怒りっぽくなるのが特徴です。高齢者に比較的よく見られるタイプの認知症のひとつです。
 また、認知症の前段階として知られているものにMCI(Mild Cognitive Impairment=軽度認知障害)があります。これは、記憶力や注意力といった“認知機能”が少しずつ低下していく状態です。

 「一方で、近年注目されているのがMBI(Mild Behavioral Impairment=軽度行動障害)です。これは、被害妄想や怒りっぽさ、不安感の強まりといった“行動面や感情面”の変化が現れる状態を指します。このような言動は、認知症が進行した際に見られるBPSD(Behavioral andPsychological Symptoms of Dementia=行動・心理症状)の一部とされていますが、実は認知症の発症前から現れることもあります。そうした初期段階の行動変化をMBIと呼び、MCIとは別の“前段階”として考えられています」(遠藤医師)

 つまり、認知症の前段階には、MCIのような“認知機能の変化”だけでなく、MBIのような“感情や行動の変化”といった2つの側面があることが、徐々に明らかになってきているのです。

認知症の兆候に気づいたら、対応は一日でも早く

 高齢の親の様子に「いつもと違う」と感じたら、できるだけ早く専門医に相談することが大切です。
「認知症の診断には長谷川式テスト(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)がよく使われており、30点満点中20点以下だと認知症の可能性が高いとされます。放置していると、そこから急速に進行してしまうケースもあります」と遠藤医師は警鐘を鳴らします。

 認知症の疑いがある場合は、専門医の診察を受けることが大切です。日本認知症学会のホームページでは、地域ごとの専門医を探すことができます。

 「以前は経過観察とされていたMCIも、現在では治療対象とされ、レカネマブ(レケンビ)という薬も登場しています。北海道大学病院を始め、多くの病院でMCI外来も始まっています」(遠藤医師)

否定せず、受け入れる姿勢が大切

 認知機能を回復させることは難しくても、被害妄想や思い込みといったBPSD(行動・心理症状)は、家族の接し方によって落ち着くことがあります。

 「ポイントは、相手が怒っているときに一緒になって怒らないこと。否定せずに受け止めることで、気持ちが和らぎ、暴言などが減ることもあります」(遠藤医師)

 それでも改善が難しい場合は、薬を使う選択肢もあります。

 「メマンチン(メマリー)は感情を安定させ、ブレクスピプラゾール(レキサルティ)は被害妄想に効果があります。漢方薬の抑肝散も気持ちを穏やかにする作用があります。ただし、薬によっては逆効果になることもあるため、必ず専門医の判断を仰いでください」(遠藤医師)

まとめ

 家族が気づく「いつもと違う」言動は、認知症のサインかもしれません。治療やケアの選択肢も増えてきた今、認知症は“気づいたときから対応できる”時代です。否定せず受け止め、専門医のサポートを得ながら、穏やかな日常を支えていきましょう。

Profile

遠藤英俊(えんどう ひでとし)医師
認知症専門医 聖路加国際大学臨床教授 名城大学特任教授

遠藤英俊(えんどう ひでとし)さん

1982年滋賀医科大学卒業、87年名古屋大学大学院医学研究科修了。総合病院中津川市民病院内科部長、国立療養所中部病院(現・国立長寿医療研究センター)内科医長などを経て、国立長寿医療研究センター長寿医療研修センター長および老年内科部長を務め、2020年3月に退職。現在は聖路加国際大学臨床教授、名城大学特任教授。著書は『最新 ボケない! “元気脳”のつくり方』(世界文化社)、『よくわかる認知症Q&A ―知っておきたい最新医療とやさしい介護のコツ―』(中央法規出版)など多数。認知症、高齢者虐待問題、介護保険関連を専門とする。

本記事は日経Gooday「あなたの疑問に専門家が回答! 健康Q&A」に掲載された内容を転載・編集したものです

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