あなたの疑問に専門家が回答!
認知症の両親が二人で暮らす——支える側が考えておきたいこと
認知症の初期と診断された高齢の両親が二人きりで暮らしている——そんな状況に直面し、「今のままで大丈夫なのだろうか」「将来どうなってしまうのだろうか」と不安を感じている人も多いはずです。生活がまだ成り立っているうちにこそ、備えておくべきことがあります。今回は、認知症専門医の遠藤英俊医師に、家族が遠くからできるサポートや将来への備えについて伺いました。
本記事は日経Gooday「あなたの疑問に専門家が回答! 健康Q&A」に掲載された内容を転載・編集したものです
認知症の初期であれば、本人たちがある程度自立して生活することは可能です。ただし、「すべてを二人で抱え込まない」ことが重要だと、遠藤医師は指摘します。
「運動や栄養の管理などを工夫して取り組むことで、認知症の進行を遅らせることはできるでしょう。ただ、ここで見落とされがちなのが『介護サービス』の利用です。たとえば、介護保険を使って要介護認定を受け、デイサービスやヘルパーを入れる。週2回でもヘルパーが入ることで、買い物や調理の手伝い、安全確認などが可能になります」(遠藤医師)
たとえ初期であっても、認知症は少しずつ進行していきます。そのため、「今のうちに」備えておけることからやっておくことが肝心です。
「将来的に火の扱いが難しくなることを見越して、電磁調理器に切り替えておく。ゴミ出しが負担になる前に、デイサービスで代行してもらえる体制を作っておく。浴室が危険になってくる前に、訪問入浴や入浴介助のあるサービスに切り替える。こうした“準備”が後の安心につながります」(遠藤医師)
そのうえで、どちらかが倒れて一人になったときの備えも考えておく必要があります。
「認知症の診断に用いられる長谷川式テストで12〜13点を下回ると、自立した生活は難しくなります。要介護3の認定を受けて、特別養護老人ホーム(特養)に入る、あるいは早めに有料老人ホームに入ることも検討すべきでしょう」と遠藤医師は言います。
もちろん、がんばれるうちは自宅での暮らしを続けて構いません。ただし、外部のサービスを上手に取り入れながら、将来に備えることが大切です。
「アルツハイマー型認知症で亡くなった」という報道を目にして、「認知症が死因になることはあるのか」と疑問を抱く人もいるかもしれません。
「日本では、死亡診断書に肺炎や心不全といった“直接の死因”を記載するのが一般的ですが、認知症が死因として書かれてはいけないという決まりはありません。たとえば米国では、“アルツハイマー病で亡くなった”と記載されることも多くあります」と遠藤医師は解説します。
実際、アルツハイマー型認知症を発症すると、自分で身の回りのことができなくなり、少しずつ栄養が不足し、筋力も落ちていきます。10年から20年かけて体力が衰え、最終的には寝たきりとなり、誤嚥性肺炎などを起こして亡くなるケースは少なくありません。
そういう意味では、認知症は“ゆっくりと時間をかけて死に向かっていく病気”とも言えるかもしれません。本人の命を直接奪う病気ではないものの、生活機能を少しずつ奪っていく過程の中で、死につながるリスクが高まっていくのです。
認知症の初期であっても、二人暮らしにはさまざまなリスクが潜んでいます。「今のままで大丈夫」と思える時期にこそ、外部のサービスをうまく取り入れ、今後の変化に備えることが大切です。無理なく、穏やかに、暮らしを続けていくために。家族と専門職が協力しながら、「支え合う暮らし」の土台を整えていきましょう。
Profile
遠藤英俊(えんどう ひでとし)医師
認知症専門医 聖路加国際大学臨床教授 名城大学特任教授

1982年滋賀医科大学卒業、87年名古屋大学大学院医学研究科修了。総合病院中津川市民病院内科部長、国立療養所中部病院(現・国立長寿医療研究センター)内科医長などを経て、国立長寿医療研究センター長寿医療研修センター長および老年内科部長を務め、2020年3月に退職。現在は聖路加国際大学臨床教授、名城大学特任教授。著書は『最新 ボケない! “元気脳”のつくり方』(世界文化社)、『よくわかる認知症Q&A ―知っておきたい最新医療とやさしい介護のコツ―』(中央法規出版)など多数。認知症、高齢者虐待問題、介護保険関連を専門とする。
本記事は日経Gooday「あなたの疑問に専門家が回答! 健康Q&A」に掲載された内容を転載・編集したものです
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