

目覚ましい進化を遂げるAI。既に先進企業は「お試し導入」のフェーズから「成果創出」のフェーズへと移行している。実際、あるCxOへの調査によれば、約8割の企業がAI投資を強化し、AIを活用している企業の6割以上が10%を超える生産性向上を実感しているが、全社で活用しているのは3割弱と、業務成長の大きな余地がある。
一方でAI活用の課題も顕在化している。その課題は大きく4つある。1つ目は「導入や運用コストの高さ」だ。GPUなどの計算リソース、モデル学習やファインチューニングのコストが高額で負担が大きい。
2つ目は「セキュリティーリスクへの不安」だ。機密情報や個人情報の漏えいに加え、データ汚染によって誤ったアウトプットを生成する可能性もある。
3つ目は「アウトプットの品質確保」だ。一般的な生成AIサービスは業務固有の専門用語や商流に対応していない。個別に学習させる必要があるが、日本語の理解能力が低いため実用レベルとは言い難い。
そして4つ目が「環境構築や運用の不安」だ。生成AIは新しい技術であるため、環境の構築や導入、運用のノウハウを持つ人材が少ない。これらの課題に加えて、利用する生成AIサービスを検討する上で、問題の複雑度やデータの参照範囲を含めて考慮する必要がある。
「こうしたことからAIの全社活用に踏み切れず、既存業務の部分的な改善に留まっているケースが少なくありません」と富士通の江口 広隆氏は指摘する。
AI活用を阻む課題を解消するため、富士通が生成AI分野で先進的なカナダのスタートアップ企業であるCohere社と共同開発したのが、エンタープライズ向けの大規模言語モデル(以下、LLM)「Takane」だ。
際立っているのが日本語能力の高さだ。「富士通が日本語特化LLMの開発で培った豊富な技術と知見が生かされています」と江口氏は強みを述べる。第三者機関による日本語言語理解ベンチマークでは、自然言語推論、機械読解タスク、意味理解、構文解析などにおいて他社を上回る性能を達成した。
セキュアなプライベート環境で利用できる点も大きな特長だ。「金融、医療、製造業、安全保障分野などデータ漏えいの懸念からパブリックなクラウドで提供される生成AIサービスの利用が難しい業務でも安心して活用できます。企業独自のデータを用いてファインチューニングやカスタマイズを行い、お客様の業務に特化したLLMに高度化できます」(江口氏)。
製造業の企業は設備機器メンテナンス業務にTakaneを活用。問題解決までの時間と設備稼働停止時間を大幅に短縮したという。
また、オンプレミスの生成AIが社内の機密情報や市場調査データなどを加味して、適切な回答を提示することも可能で、経営資料の作成にかかる手間と時間を削減し、経営判断の精度とスピードも向上できる。
このようにAIの進化は凄まじく、将来的には人が思いつかないようなアイデアを生み出すことも可能になるだろう。その時、人はAIとどう向き合うべきなのだろうか。
「重要なことは『人をすべての中心に置く』というヒューマンセントリックな考え方です。AIは人の仕事を代替するだけの存在ではありません。人とAIのコラボレーションこそが、次の時代を切り拓く、新たな価値創造の源泉になる。これが富士通のAI戦略です」と江口氏は力を込める(図1)。
図1 富士通のAIプラットフォーム戦略
ミッションクリティカルな業種はセキュアなプライベート環境が不可欠だ。高い堅牢性・情報保全性を確保しつつ柔軟なAI利用を促進するため、エンタープライズに特化した最新AI技術を提供している
こうした独自のAI戦略のもと、富士通はTakaneの価値を最大限に高めるソリューション提供にも力を入れている。LLMを提供するだけでなく、そのLLMを組み込んだ生成AI基盤をシステム形態に応じて大きく3つ提供している(図2)。
図2 富士通の生成AI基盤ラインアップ
オンプレミス向けの自社構築・運用型とマネージドサービス型、アセットレスで利用できるクラウド型がある。いずれも安全・安心に使える生成AI基盤だ。情報の機密性や利便性のバランスを考え、最適なモデルを選択できる
1つ目が、オンプレミス向けの「Private AI Platform on PRIMERGY」だ。堅牢かつ信頼性の高いインフラと検証済みAIプラットフォームを実装したReadyモデルである。これは高性能GPUを搭載したエフサステクノロジーズのサーバー「PRIMERGY」に、すぐに使える対話型生成AIサービスが動作する基盤を構築済みで提供するもの。「導入後すぐに生成AIサービスをセキュアに利用できます。業務に合わせたAIアプリも簡単に作成可能です」と江口氏はメリットを述べる。
一般的な生成AIサービスはクラウドで利用する形態が多く、インターネット接続が必須だ。ただし、多くの企業では社内ポリシー上、重要な機密情報を外部で取り扱うことが難しいケースもあるだろう。また一般的な生成AIサービスは汎用的な情報しか学習していないため、業界・業務特有の文書やデータなどに応じた質問には適切に回答できないことがある。
その点Private AI Platform on PRIMERGYならインターネット接続不要のオンプレミス環境で、高い日本語精度を誇る生成AIを利用可能だ。セキュアなオンプレミス環境に設置するため、情報漏えいのリスクも低い。独自データはRAG(独自データを検索・参照して根拠とともに回答する方式)で安全に取り込み・活用できるため、自社業務への適合度を高め、適切な回答や価値あるインサイトを入手しやすくなる。データセキュリティーやガバナンス、生成AIの日本語能力に不安を抱えている企業の解決策になる。
一方、構築・運用を担う専門人材がいないという企業もある。そうした企業向けに提供するのが2つ目の「Fujitsu Managed Service for New On-Premises」だ。利用する顧客企業専用の機密性の高い生成AI環境を富士通データセンター内にセットアップし、運用後のサポートまで対応する。Private AI Platform on PRIMERGYのインフラ運用保守をアウトソースできるわけだ。
月額固定料金で利用でき、想定外の費用は発生しない。基盤監視や運用状況などの稼働情報は定期的にレポートする。常に見守り、トラブルがあれば即座に対応してくれる安心感は大きい。機密情報を扱うため、クラウドを利用できないが、手軽に生成AIを利用したいという企業にとって、理想的な選択肢となる。
生成AI環境をクラウドで提供するサービスもある。それが3つ目の「Fujitsu クラウドサービス Generative AI Platform」だ。完全に独立した生成AI環境をオンプレミスで構築・運用するには、コストと人材確保などが大きな負担になる。かといって機密性の高いデータはパブリック生成AIサービスでは活用しにくい。こうした悩みに応えるソリューションだ。
「データの機密性とクラウドの使いやすさを併せ持つセキュアなクラウド型生成AIサービスです。クラウド上の専用プライベート領域で機密データを安全に管理し、生成AIをオンデマンドで活用できます」と江口氏は語る。
ベースとなるクラウド環境は、脆弱性対応や第三者監査を通して安全性を担保したJDCC(日本データセンター協会)ティア4相当の富士通データセンターから提供する。堅牢性・信頼性は非常に高い。
RAG用データはお客様ごとのプライベート領域に保管する。「機密情報を扱う業務においても、安心して生成AIに自社データを活用できます」(江口氏)。推論用のGPUサーバーは共有領域で提供することで、初期導入コストを抑制した。
高度な生成AIセキュリティー強化技術により、高い安全性も実現している。LLMの脆弱性を網羅的な評価で判定し、最適な防御技術を自動的に適用することで、常にLLMを悪意ある攻撃から守ることができる。
生成AIの真の価値は業務効率化やコスト削減ではない。適切な生成AIソリューションを活用することで、経営アジリティを飛躍的に高め、ビジネスが新たな成長フェーズへステップアップするための強力な推進力となる。
富士通は顧客企業と共に生成AIの可能性を最大限に引き出し、企業価値のさらなる向上に貢献していく構えだ。
