

「どの企業も当たり前のように使っているPCが、この数年間で大きく変化しています」。そう話すのはレノボ・ジャパンの元嶋 亮太氏だ。そもそも、これまでPCは5~10年おきに変化を迎えてきた。物理的な形状やサイズは大きく変わっていないが、「使われ方」が大きく変わってきたのである。
例えば、1990年代はパーソナルコンピューティングの勃興期であり、ユーザーはまだ限定的だった。その後、2000年代にはADSLによるインターネット常時接続が一般化し、Wi-Fiも普及。ここでユーザーは一気に増加した。
2010年代には業務データがクラウドへ移り始め、2020年代にはオンライン会議の活用が一気に拡大。その過程で、PCは単に業務ファイルを作るためのツールから、コラボレーションのためのツール、人と人の心をリアルタイムにつなぎ合わせるためのツールへと変化していったという。
「そして現在、大きな変化の触媒になっているのがAIです。特に生成AIの浸透はビッグウェーブとなっており、2024年頃までのPoCフェーズを経て、現在は『どうやってROIを上げていくのか』を具体的に議論するフェーズに入りつつあります。既にビジネスの様々な領域に、AIが溶け込みつつあるといっていいでしょう」と元嶋氏は言う。
AIモデルを動かす場所も多様化している。これまではパブリッククラウド上で動かす「パブリックAI」が主流だったが、本格的な業務活用を検討する企業を中心に、オンプレミスやプライベートクラウド環境で動かす「エンタープライズAI」が拡大。さらに最近は、PCなどのクライアントデバイス上でも生成AIの根幹である基盤モデルの活用が始まっている。
そんなAI時代を先取りしたPCが「Copilot+ PC」である。
Copilot+ PCとは、マイクロソフトが定める処理性能やセキュリティー要件を満たしたAI PCのこと。いわば、PCのスペックを数年先まで見据えたときの「当たり前」を具現化した製品といえるだろう。SLM(小規模言語モデル)をオンデバイスで動かせる高い処理性能はもちろんのこと、生体認証の必須化など、安全・安心なAI活用を支えるためのセキュリティーも強化されている。「レノボは昨年からCopilot+ PCを提供しています。ThinkPadシリーズやデスクトップPC、ワークステーションに至るまで、多様な働き方にフィットする製品を網羅的に揃えています」と元嶋氏は紹介する(図1)。
図1 レノボのCopilot+ PCのラインアップ
オフィスや自宅を使い分けるハイブリッドテレワーカー、ホーム/オフィスワーカー、特定の場所で作業するインターナルワーカーなど、多様な働き方にフィットする製品群を多数揃える
Copilot+ PC上でAI由来の機能を活用すれば、働き手は作業効率を高めることが可能になる。これを実現する特徴的な機能の一例が、ローカル完結型の操作履歴検索「Recall」だ。
業務中、過去に作成したファイルを探したいが、どこに保存したのか、漠然とした記憶しかない場合があるだろう。そんなとき、操作履歴を基に簡単に検索できる。
「PCが5秒に1回スクリーンショットを取得し、テキストを抽出、画像はコンテキストを認識してローカル環境に保存します。その情報から自然言語で情報を検索することで、過去をさかのぼって操作履歴を確認できるようにします」と元嶋氏は説明する。なお、Recallを利用するには、「Copilot+ PCであること」「暗号化していること」「生体認証が有効化されていること」の3点を満たす必要がある。また、デフォルトではオフになっているため、管理者がポリシーを有効化し、ユーザーの許可も得る必要がある。これはユーザーにとっては、「履歴を勝手に取得されることはない」ということであり、不安なく使える設計になっているといえるだろう。
Copilot+ PCではほかにも様々なAI機能を実行できる。しかし、そのポテンシャルを引き出す上で忘れてはならないことがある。それは、アップデートをタイムリーに行うことだ。
「セキュリティーパッチのほか、生産性向上に効く新機能やAIコンポーネントも、Quality Updateの一環として月次で追加されています。Copilot+ PCの真価は、それらのアップデートをいち早く反映してこそ、引き出すことができるのです」と元嶋氏は話す。
具体的には、Windows Autopatchを含むパッチ管理基盤の構築も併せて進めることが肝心になる。その上で、アップデート反映の実際のオペレーションとしては、リリース後速やかにテストグループで検証し、問題なければ比較的小規模なグループ1に限定適用する。そこでも問題が生じなければ全体に最終リリースする、といった方法をとることが安全だ。
さらに、タイムリーにアップデートすべきなのはBIOSをはじめとするファームウエアも同様だ。これについて、ThinkPadシリーズの場合、ビジネス仕様のユーティリティ「Commercial Vantage」で自動更新を設定できる。また、定期アップデートのサイクルも「隔月第二火曜日」と分かりやすい。管理しやすい環境を整えることができるだろう(図2)。
図2 ビジネス仕様のユーティリティと分かりやすいアップデートサイクル
ThinkPadユーザーではアップデートの自動化を行えるユーティリティが提供される。またアップデートサイクルも分かりやすいためタイムリーな更新も容易になるだろう
さらに最近は、Microsoft Foundry on Windowsに含まれるWindows AI APIを活用して、独自のAIアプリを構築・利用することも可能になっている。これらの機能を活用すれば、一層の生産性向上につなげることもできるだろう。
「LLM(大規模言語モデル)に関しては、引き続きクラウドデータセンターで動かすのが得策といえるでしょう。一方、限られたデータソースを元にしたAIによる特定タスクの処理は、PCの性能向上によってローカル環境で実行できるようになっています。いち早くCopilot+ PCを導入することで、AIを企業の価値に変えてほしいと思います」と元嶋氏は強調する。
変化は一晩で起こるものではない。だが、数年後にはパーソナルAIが当たり前のものになっている可能性があるだろう。その時になって慌てないため、ぜひ今、検討を開始することをお勧めする。
