
竹田 幸子氏
独立行政法人 国際協力機構
広報部
部長 兼 JICA地球ひろば所長

緒方 枝里奈氏
独立行政法人 国際協力機構
広報部 広報課
主任調査役
安原 ウクライナ危機に端を発した世界的な課題について、日本は国際協力でどう貢献できるかをWebで4回連載した「池上彰と知る ウクライナと世界の未来と私たち」がグランプリを受賞しました。改めて企画の意図・目的をお聞かせください。
竹田 ロシアによるウクライナ侵攻からちょうど1年が経過した2023年の春から企画の検討を始めました。日本でもエネルギーや食料の価格高騰が見られて、ウクライナ戦争の影響を感じられるようになった頃で、遠い国での戦争が自分たちの生活にも影響を及ぼすことを理解できるようになってきたタイミングでした。
世界の課題と私たちの生活はつながっています。日本の政府開発援助(ODA)によるウクライナの復旧・復興の取り組みを発信することで、国際協力の重要性をメッセージとして伝え、世界の課題の解決に自分たちも取り組もうと考えていただきたいと思いました。
企画を考える上で重視した点はいくつかあります。1つ目は、日本には戦後復興の経験と自然災害からの復旧・復興の経験があり、そういった日本ならではの経験を生かしていることを示すこと。2つ目は、世界に96拠点をもつ国際協力機構(JICA)だから得られる、現地の詳しい情報と分析に基づいたJICAならではの情報を発信すること。3つ目はジャーナリストの池上彰先生にわかりやすく解説していただくこと。最後に、第一線のビジネス現場で活躍される日経ビジネスの読者に国際協力に参加する機会があることをお伝えすることでした。
安原 ウクライナだけでなく、戦争の影響が及ぶアフリカや東南アジアも取材した立体的な構成になっています。制作にあたり、どんなご苦労がありましたか。
緒方 全体の構成を考えるのに一番苦労しました。ストーリー展開をどうするか。4章構成となりましたが、各章で取り上げるテーマや事例をどうするか。日経BPと何度も打ち合わせを行い、構成を固めるのに3カ月ほどかかりました。
池上先生や日経BPの担当者にどんなポイントでインタビューや取材をしていただくか。それを整理する作業が重要だと思っていましたので、毎回事前ブリーフィングを実施して本番に臨みました。ブリーフィングと取材はあわせて30回近く行い、取材・事前ブリーフィングに対応いただいたJICA内外の関係者は80人ほどになったと思います。良いコンテンツをつくるため、皆様の知見をいただき、最後まで伴走していただきました。海外のカウンターパートや専門家の方々に快く取材を受けていただき、現場のリアルな声をタイムリーにお届けできたのは、長年の国際協力による信頼関係が築かれていたからこそだと感じました。
安原 第1章から第3章ではウクライナへの支援を中心に日本の国際協力のさまざまな事例を紹介されていますが、第4章「共創が開く持続可能な未来」では池上先生、ボーダレス・ジャパンの田口一成氏、SDGインパクトジャパンの小木曽麻理氏による鼎談が行われました。第4章の狙いをお話しいただけますか。
竹田 国際協力はもはや公的機関だけで成り立つ状況にはありません。途上国の課題は多岐にわたり、日本のビジネス界の新しい知見や技術、それに資金面でのご協力をいただかなければ課題は解決できません。2023年9月にODAの基本方針を定めた「開発協力大綱」が8年ぶりに改定されましたが、基本方針の一つとして「途上国との共創」が盛り込まれました。途上国を中核に置きつつさまざまなパートナーと知恵や資金を出し合い、新たな解決策や社会的価値を生み出していきましょうということなのですが、第4章の鼎談では「共創」について話し合われ、社会課題をビジネスの手法で解決することが語られています。充実した内容になりました。
安原 読みごたえのある文字情報のほかに、「3分でわかる池上彰の視点」という動画も掲載されました。
緒方 しっかりとした読み物をつくりたいという思いのほかに、忙しいビジネスパーソンにいかにお伝えするかもポイントだと考えました。そこで、難しいことをわかりやすく伝えることの第一人者ともいうべき池上先生にご協力いただきました。

安原 ゆかり
日経BP 総合研究所
上席研究員
シニアコンサルタント
安原 読者をはじめ組織内外からの反応をどのように感じていらっしゃいますか。
緒方 1人当たりのサイトの平均滞在時間が9分近いと聞き、そんなに長く読者に滞在していただけたことに驚きました。時間をかけてコンテンツを読んでもらえるのは本当にありがたいことだと思っています。
竹田 「ウクライナは大規模農業をイメージしていたけれども、小規模な農家や家庭菜園も多いことを知り意外だった」という声もいただきました。その意味では、新しい情報も詳しく提供できたのではないかと思っています。
安原 今後の広報活動の方向性についてお聞かせください。
竹田 最近国内で課題が多い中、「なぜ国際協力をやるの?」といった声も聞かれます。 JICAとしては国際協力の意義を丁寧にご説明し、ビジネス界の皆様に共創のパートナーとしてご参画いただけるようにコンテンツの発信を続けていきたいと思います。
私たちは途上国の方々を「パートナー」と呼んでいます。もはや「支援し、支援される」関係ではありません。例えばアフリカでは、携帯型超音波診断装置による妊婦の在宅診断サービスなど、デジタル技術を活用し日本より先進的な取り組みをしている例もあり、日本が学ぶことも少なくありません。国際協力に参画いただき、そこで会社として社会課題を解決する機会を捉えていただければと思います。
※所属・肩書はインタビュー時点