
FEATURE2025.06.27
"黄金律"を軸に、独自の美意識を宿す―
ボーム&メルシエ リージョナル ブランド CEO オードリー 真利子 ロペオ氏
スイス・ジュラ地方の自然に育まれ、感性という設計思想を磨いてきたボーム&メルシエ。“バランス”の哲学は、今も穏やかな美しさと知性として姿を現している。
黄金比を象徴するギリシア文字「Φ(ファイ)」を掲げるボーム&メルシエは、今年「アート・オブ・バランス」をテーマに据えた。創業195年の歩みに軸を置きつつ、デザイン・ヘリテージ・ファンクションという3つの柱を通して、未来を見据える時計づくりを提示している。
それを体現するのが、「リビエラ」コレクションの新作だ。「1973年に登場した12角形ベゼルのアイコンウォッチ『リビエラ』は、“バランス”というテーマを象徴する存在。4型のクロノグラフウォッチはいずれもビンテージとモダニティの絶妙な融合を実現しています」。そう語るのは、リージョナル ブランド CEOのロペオ氏だ。
今年はギルトカラーのテレメーター&タキメーター付きフライバッククロノグラフ、1950年代ふうの横目パンダダイヤル、波型模様が美しい縦目クロノグラフなど、個性豊かなモデルが並ぶ。そこには、ラグジュアリースポーツやビンテージ志向といった現代的な時代の空気が映し出され、ヘリテージを軸にしながらも、洗練されたデザイン性が際立っている。
ボーム&メルシエの技術革新を語る上で欠かせないのが、自社製ムーブメント「ボーマティック」である。ブランドの姿勢が凝縮された、長年にわたり、信頼を積み重ねてきた中核の技術である。「ユーザーの声やカスタマーサービス部門からのフィードバックを受けて開発されたこのムーブメントは、120時間のパワーリザーブや1500ガウス耐磁など、デイリーユースに必須の性能を幅広く備えている」と、ロペオ氏も胸を張る。人気のラウンドウォッチコレクション「クリフトン」は、全モデルにこの「ボーマティック」を搭載しており、ブランドの顔としての存在感を確立している。その技術と信頼性は、着実にブランドの中枢を支えている。
「革新性というと、複雑機構のような華やかな技術に目が向きがちです。しかし、『ボーマティック』のように日常に根ざした技術の積み重ねから価値を生み出すことも、また革新であると考えています」。
価格面でも独自の“中庸”を貫くのが、ボーム&メルシエの美意識だ。適正価格と最高品質を両立させた、揺るぎないポジショニングがその哲学を支えている。その軸を基に、ライフスタイル全体を視野に入れた展開をさらに強化していく。「人生に寄り添い、次の世代にも受け継がれるようなタイムレスな一本を、感性に響く形で届けたい」とロペオ氏。ギフト需要の高まりを受け、日本市場では“共感”を軸にしたプロモーションにも力を注ぐ。
「日常より少し上質な時間や心地よい品格を求める方にこそ、私たちの時計はふさわしい存在であると考えています」。
最近では、“お受験”の面接に臨む保護者が安心感を求めて選ぶ時計としても注目されている。その静けさと洗練、そして価格との均衡が、“信頼される一本”としての条件を満たしているからだ。
「クラフツマンシップが息づくスイス製のラグジュアリーウォッチを、適正価格で届けることに誇りを感じています。私たちの時計が、お客さまの人生に寄り添い、豊かさをもたらす存在ならばと願っています」
卓越したものづくりと、感性に触れる対話。その両立が、ボーム&メルシエの“バランス”という哲学を支えている。その姿勢は、目立たず語らずとも、人々の記憶に確かな印象を刻んでいく。
撮影=箱島崇史 デザイン=Phantom G. 文=髙村将司 編集=安部 毅