業務用米は日本の米づくりに地殻変動を起こすのか?

良食味多収米「つきあかり」シフトを急ピッチで進める JAえちご上越・石山忠雄常務理事に聞く

4品種の米で作期分散

石山:平成29年には「つきあかり」の生産拡大に向けたプロジェクトを作り、その結果、平場から標高の高いところまで幅広く約75ヘクタールになりました。予定は60ヘクタールの予定だったのですけど、農家のご協力をいただいた結果です。そこで多収性や、地域への適性についても実証し、ある程度の結果が得られましたので、じゃあもっと作ろうじゃないかということで推進大会などを開催して、さらに量を多くしていったということです。

結果として、JAえちご上越でのコシヒカリや他の品種の構成はどうなっているのですか?

石山:うちでは「コシヒカリ」は主食用米の中で今5割を切っています。そのほかについては、餅米・酒米もあります。主食用のうるち米としてはコシヒカリを中心とした「こしいぶき」「みずほの輝き」「つきあかり」の4本柱になっています。

 非主食用米も、飼料用米から始まって、米粉用米や、一部、備蓄米や加工用米も取り組んでいます。簡単に言えば、JAえちご上越へ来ていただくとすべてのお米が揃う。特徴あるお米をお客様にお届けできます。2018年のデータでは加工用米や飼料用米なども含めた総合計67万4789俵(約4万500トン)に対してコシヒカリは25万8903俵(約1万5500トン)です。

JAえちご上越の平成30年産米の集荷・検査実績(令和元年5月末、単位60㎏=俵)
主食用米 うるち米 コシヒカリ 258,903
こしいぶき 96,161
みずほの輝き 74,714
つきあかり 54,083
その他 うるち米 15,909
もち米 14,697
酒造米 31,721
水田活用米穀 加工用米・備蓄米・輸出用米 57,937
飼料用米 51,520
米粉用米 19,144
JAえちご上越の平成30年に生産したコメの内訳。(「JAえちご上越事業紹介」のデータをもとに作成)

単価×単収が12万円を目指す

新潟にとってコシヒカリは一番大切な銘柄で、値段も高く売れます。生産者にとっては収益の柱のはずですが、他の品種を作った時、収入はどうなるのでしょうか?

石山:大体この地域ではコシヒカリは10アール当たり8俵半の収穫です。1俵60キログラムですので、10アール当たりの収穫量(単収)は510キロ。「つきあかり」「みずほの輝き」などの多収品種では600キロが目標です。収量×単価でコシヒカリ並みの収入を確保することになります。

 「つきあかり」の単収は平均で600キロ。上限は660キロです。上越というところは残念ながら新潟県で一番単収が低いところなのです。私どもとしては、どういうお米を作っても10アールあたりの収入を12万円と見ていまして、少なくとも12万円になれば、何を作ってもいいという考え方です。単価が高いコシヒカリは単収が低くても一定の収入が確保されますし、多収米は単価が安くても単収が600~660キロ穫ることができて、一定の単価を掛け合わせたときにそれ以上になればいいわけです。

 もちろん、収入が上がっても費用が余分にかかってしまえば、利益が少なくなります。コシヒカリは確かに収入は上がりますけど、もし倒伏した場合、非常にロスが出るし、コンバインの修繕費用もかなりかかります。したがって、収入だけの議論ではなくて、費用をどこまでかけられるか。利益がいくらかが重要です。品種特性を考えた上でトータルで考える必要があります。

 それと、きっちり買っていただく戦略も合わせて考えていかないといけません。いくらいいのものだと言っても、美味しくなければダメですし、価格的に合わなければダメです。私どもでは近年、複数年契約に取り組んでいます。契約した価格に対して5%のアローアンスはつけますが、3年間固定でお願いしますということです。生産者側もリスクを負いますが、一定の目標に対してどれだけお金をかけられるか長期的に見られる。買う側も一定の価格と量が決まっていれば、安定調達ができます。

米の取引先との関係はどのように構築されていますか?

石山:当JAでは全国の取引先をお招きをして1年に1回、JA独自で求評懇談会という会を開催しています。そこへ全国よりお招きしたお取引先から直接いろいろなご要望やご意見を賜り、それを今度は営農計画に反映しています。3年に1回は、その場所に販売農家の約1割、500人ほどに参加していただき、メディアから伝わる情報だけではなく、直接お客様の声を聞いていただく場も作っています。

圃場で行われている求評懇談会の様子(写真提供:JAえちご上越)
圃場で行われている求評懇談会の様子(写真提供:JAえちご上越)