• なぜ、物流インフラがアフリカの 発展にとって最大の必要条件なのか?
  • アフリカの物流インフラづくりに 日本が協力できること
  • モザンビーク・ナカラ回廊をつくる!
  • ケニアのモンバサ港が東アフリカの 「シンガポール」になるとき
  • 日本の知恵と技術と金が、 アフリカの物流を変える!
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今度は、モザンビークの回廊の開発と日本の国際協力について、実情と課題点を、JICAのモザンビーク事務所でプロジェクト全体の進行を管理している宮崎明博さんにお話しいただきましょう。

池上

モザンビークの経済成長にとって最大の課題はなんでしょうか?

宮崎

道路です。未舗装道路が多すぎる。これがすべての成長の阻害要因になっている。一刻も早く道路整備をすること。でなければ、生活も社会も経済も発展できません。

池上

たしかにモザンビークは舗装されていない道路が目立ちますね。今回の取材でも、150キロを移動するのに7時間以上もかかりました。取材先は、別項で紹介する農業開発プロジェクトを行っている農地でしたが、道路があそこまで未舗装だと、せっかくつくった農作物を市場に出したり、輸出したり、というのも一苦労です。

宮崎

本当にそうです。いまJICAでは、農業開発とインフラ開発とを同時に連動して行っているのですが、それというのも、農業単体で開発しても、物流インフラを充実させなければ、結局地域の経済発展に寄与できないからなんですね。このため、ナカラ回廊開発は、物流と農業がセットになっているんです。

池上

そこで「回廊」という概念で地域一帯を、隣国も含めてインフラ開発しようというわけですね。この発想は、JICAが現地に植えつけたものなのですか?

宮崎

はい。ナカラの港を整備し、沿岸国のモザンビークの物流と内陸国であるジンバブエとマラウイ、ザンビアをつなげ、通関業務を簡素化し、経済と農業と物流のネットワークをつくろう、というのが、ナカラ回廊の構想です。横浜で開かれたアフリカ開発会議(TICAD Ⅳ、2008年)で沿岸国と内陸国とを結びつける「回廊」の概念を日本側が打ち出し、その概念に沿って、アフリカ大陸で本格的にスタートしたのが「ナカラ回廊」プロジェクトです。

池上

アフリカの未来を占う上でも非常に重要なプロジェクトなんですね。となると、まずは道路の整備が大切ということになりそうです。今、モザンビークの道路の舗装率は?

宮崎

1級道路と呼ばれる国道は80%程度が舗装されています。それが2級と呼ばれる国道になると14%にがっくり落ち、地方道路ともなると舗装率は10%を切ります。特にナンプラのある北部は舗装が遅れています。ナンプラから西へ500キロ進むとマラウイとの国境にぶつかりますが、なんとそこまで全路未舗装なんです。このため国境からナンプラまでの移動に丸一日はかかります。

池上

たしかに移動中にいくつかの小さな村を通り抜けましたが、2級の国道や地方の公道が、日本でいうと未舗装の山道のよう。自動車はもちろん自転車で移動するのもむずかしそうです。

宮崎

しかも学校や病院の数が少なくて、村によっては10数キロ離れています。すると学校に行くのもひと苦労です。道路が整備されないと、教育や医療も機能しないし、日常の消費生活も発展しないんですね。

池上

道路の舗装については、どんな策が?

宮崎

JICAでは、ナンプラと西部のクアンバまでの国道350キロの舗装に着手し、その後マラウィとの国境の町、そして穀倉地帯の中心地として期待されるリシンガまでの舗装化に向けて努力しています。ただ、なにせ広大な土地が相手なので、整備には少々時間がかかります。

池上

中国の進出はどうでしょう?

宮崎

道路舗装に関しては、中国の力を借りることがこれからとても多くなると思います。というのもコスト面で中国は非常に競争力を持っている。そして、ここ数年、道路舗装の技術力を急速につけている。日本の技術は世界トップクラスですが、コストが高い。そのため、プロジェクト全体を牽引し、技術移転を日本が行い、道路整備そのものは中国が行う、といった国際混成部隊でモザンビークの道路をよくしていく、というケースはこれから出てくるかもしれません。

池上

ナカラに関しては、隣国のマラウィなど内陸国との通関業務の簡素化も、回廊構想実現にとっては重要ですね。どのようなかたちで対応されているのですか?

宮崎

マラウィとの国境にあるマンティンバに「ワン・ストップ・ボーダー」の拠点を設ける計画です。日本が通関業務のデザインを行い、アフリカ開発銀行が資金提供し、こちらでモザンビークとマラウィの通関業務を集約して、物流を滞らせないようにしていくつもりです。

ワン・ストップ・ボーダーの仕組みはすでにアフリカの他地域で実践例があるので、成功事例の経験を生かす、という強みもJICAにはあります。

池上

ナカラ回廊プロジェクトは、いつまでに完成と考えていますか。

宮崎

2018年がひとつの目標です。5年後ですね。今、計画しているインフラの事業が終わり、ブラジルとの農業プロジェクト「プロサバーナ事業」の活動成果が見えるのも2018年なので、農業と連動して物流改革も、5年後にはひとつの完成をみたいものです。

池上

具体的な完成イメージを教えてください。

宮崎

主要道路が舗装され、ナカラの港のコンテナターミナルが十二分のサイズになり、荷揚げされたコンテナがスムーズにナンプラ、そして隣国のマラウィなどにトレーラーで運ばれる。沿線の農業が大規模化して軌道に乗り、収穫された大量の作物が回廊の物流ネットワークに乗り、市場を形成し、国内消費をまかなえるようになる。決して無理な目標ではない、と思います。

池上

懸念はありますか?

宮崎

次の大統領選がうまくいき、引き続き政権が安定するかどうか、ですね。それから天災でいうと、常に雨期の洪水やサイクロンが心配です。

北部ロブマでは世界最大の海底天然ガス田がみつかり、三井物産がその開発に着手しています。天然ガスが事業化すると、国内の電力をまかなえるうえ、LNGにすれば、巨大な輸出産業になり得ます。

また、テテで開発されている石炭も魅力的ですね。こちらも発電用に自国消費されれば、電力の安定供給につながる上、ナカラからも輸出できるようにすれば、これまた外貨獲得手段となります。

池上

リシンガとナカラを結んだ回廊は、モザンビークの経済発展のカギを握りそうだ、ということがよくわかりました。

道路と港の物流インフラを充実させ、農業やエネルギー開発など地域の産業を活性化させ、隣国との通関業務を簡素化させ、という事業を同時に行い、一体開発を行う「回廊」プロジェクトは、ナカラを筆頭にサブサハラのアフリカでいくつも立ち上がっています。

「回廊」というソリューションが、アフリカの弱みであった広大で内陸国が多い、という地理的条件を一気にプラスに転換する。日本の知恵と技術が求められていることを実感しました。

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