ケニアで見た、アフリカでの自動車販売事情を写真とともにレポートします。

ケニアはいま、猛烈な勢いで自動車の販売が伸びています。ケニアでは、公共交通機関がバス以外に発達していません。自動車での移動が頼り。よって、国民の所得が伸びると必然的に自家用車での移動が増えるのです。

■

首都ナイロビでは、朝晩、猛烈な交通渋滞が起こります。私は、これまで数多くの発展途上国を訪れました。そこで共通するのは、経済発展のまっただ中にある国においては、道路や交通網の能力を超えて自動車の台数が増えるため、必ず、こうした交通渋滞が起こるのです。

かつてのタイのバンコクや、インドネシアのジャカルタの交通渋滞はひどいものです。わずか10キロを移動するのに1時間や2時間はかかってしまう。ケニアのナイロビもその例外ではありません。

では、どんな自動車が今、ケニアでは売れているのでしょうか?

日本の自動車は、ケニアの国内においても、大きなブランドイメージを確立しています。中でも、トヨタの最高級4WD車ランドクルーザーは、世界の並みいる高級車をおしのけて、ダントツのブランドとなっているそうです。どんな悪路も走破でき、故障知らずで、しかも内装が高級セダン並み。

日本のような先進国と異なり、ケニアをはじめアフリカの場合、まだまだ地方に行くと未舗装の悪路が少なくありません。

■

たとえば、今回ケニアとともに訪れたモザンビークでの出来事。 100キロほどを自動車で移動するのに7時間以上もかかりました。

理由は見ての通り、道程の大半が未舗装路だったからです。途中では、ぬかるみにはまって動きがとれなくなっている4WD車にもでくわしました。

なんと、旧型のランドクルーザーです。「ランクルでも、動けなくなるほどの悪路なのか」と思っていたら、今度は我々のクルーのいすゞビッグホーンもはまってしてしまいました。地元の人たちの手を借りてなんとか脱出しましたが、かくのごとくアフリカの道路事情はまだまだ近代化したとはいえません。だからこそ、悪路走破性が高く、壊れにくい車が求められるというわけです。

では、アフリカでの実際の自動車販売事情はどうなっているのでしょうか。トヨタ自動車の販売をケニアで請け負っている豊田通商の伊藤さんにお訊きしました。

■
伊藤

いま、ケニアのナイロビに全長140メートルのトヨタ自動車のショールームをオープンしました

池上

すごい規模ですね

伊藤

はい。アフリカで最大規模のショールームの一つです。それだけ、ケニアの自動車販売には力を入れようとしているのです

池上

どのくらいの販売台数なんですか?

伊藤

2012年時点では、約3千台の新車を販売しました。もちろん世界的に見ると、とても小さな数字です。それだけに、市場の余力がきわめて大きいとも言えます。巨大ショールームは先行投資であると同時に、ブランド確立のためのショールームともいえます

ケニアはまだまだ経済成長のスタート時点に立ったばかりの国です。このため、新車の販売台数の規模は大きいとはいえません。にもかかわらず、道路は自動車でいっぱい。そのからくりは、単純。大量の中古車が海外から流れ込んでいるのです。

主なルートとしては、インド洋に面した中東諸国からの中古車がケニアにはたくさん輸入されているそうです。

また、日本からの中古車の輸入もさかんに行われています。これはケニアのみならず、モザンビークやかつて訪れたスーダンやウガンダなど、アフリカ諸国に共通しています。

■

興味深いのは、日本語がペイントされた営業車両の中古車をそのまま日本から輸入した場合、塗装し直さずにそのまま使っているケースが多いことです。ウガンダでは、幼稚園の名前がペイントされたミニバンがそのまま、公共バスとして利用されていました。モザンビークでも「自動扉」と書かれたミニバンが、ローカルバスとして使われていました。

理由は、「日本語がペイントされている=日本車=性能がいい」というイメージがアフリカで確立しているからだそうです。

ところが、その一方で、日本車の高いイメージを利用して、粗悪な事故車両を輸入して、暴利をむさぼる業者もある、と聞きました。

たとえば、とある日本車メーカーの中古車を購入したケニアの大臣が、ある日、そのメーカーのケニア支社に怒鳴り込んできました。

「せっかく買ったのに、あっという間に壊れてしまった。どうしてくれるんだ!」というのです。新車ではないので、日本メーカーのケニア支社の担当者も困り果てましたが、とにかく壊れてしまったその中古車を見せてもらうことにしました。

ボンネットを開けて、エンジンルームを見たとき、担当者は仰天しました。なんと、載せられたエンジンは、オリジナルのそのブランドのものではなく、ワンランク下の別ブランドのエンジンが載せ替えられていたのです。さらに、もっと驚いたのは、車の後ろに回ってみたら、リアのテールランプ回りは、なんと、他社のブランドのものでした。つまり、エンジンとテールランプ回りをつぎはぎで付け替えた事故車両をこの大臣は売りつけられていたのです。

トヨタ・ケニアCOOの外輪さんによれば、こうした事故車両を修繕した粗悪な中古車の輸入も少なくないとのことです。

外輪

事故車両を修繕したものや、盗難車などが中東ルートから流れてくるケースは少なくありません。でも、当然のことながら、粗悪な車ですからすぐに壊れてしまう恐れがあります。結果、ブランドイメージを毀損する恐れが十分にあります。そこで、我々も対策を講じました

池上

どんな策ですか?

外輪

ひとつは、認定中古車制度のような仕組みを設け、輸入の水際で、検査が通った中古車のみを取り扱う会社を豊田通商がつくったのです。トヨタブランドの自動車の年間総販売台数は、ケニアにおいては2012年約6万台。そのうち新車は3千台にすぎません。まずは中古車を買ってもらい、トヨタ車の魅力を知ってもらい、ブランドイメージを浸透させて、将来、より経済が発展した時、改めて新車を購入していただこうと考えています

池上

程度のいい中古車を豊田通商自らが販売することで、ブランド単位でのシェアを伸ばし、かつイメージを事前に上げておき、将来の市場開拓に結びつけようというわけですね

外輪

そのとおりです。さらにもうひとつ設けた策が、ファイナンスの会社を立ち上げたことです。具体的には月賦販売の会社です。新車にしても中古車にしても現金一括払いで購入できる裕福な人は、まだケニアにおいては限られています。けれども、月賦ならば購入できるクラスはどんどん拡大しています。こうした新興消費者にトヨタの車を気軽に購入してもらえるたけの施策として、月賦販売の会社をつくったわけです

まずは、程度のいい中古車を売る。さらに、月賦販売の仕組みを導入して、なるべく多様な層が自動車を購入できるようにする。トヨタグループは、いまケニアでこうした新興消費層を取り込む施策を行い、市場を拡大しようとしているとのことです。

■

さて、ここでひとつ、ケニアにおいて、どうやって新車が輸入されているのか、説明をしておく必要があります。実は、多くの途上国と同様、ケニアにおいてすべての新車がそのまま輸入されるわけではありません。

一部の新車については、いったんばらばらに分解され、部品の状態で荷揚げされ、その後、ケニア国内の工場で再び組み立てられる、いわばノックダウン生産の方式をとっているのです。自国に少しでも多くの雇用とお金が落ちるために東南アジア各国でも行われた方法です。

そのノックダウンを請け負っている工場を、ケニア最大の港湾都市であるモンパサに訪れました。

こちらの工場は、多くの日本車のノックダウンを請け負っています。

工場のAssociated Vehicle Assemblers Ltd社長であるDaveさんにお訊きしました。英国出身の渋い方です。

Dave

この工場は、もともと英国フォードがケニアに自動車を輸出する際、使っていたものです。私も英国フォードから転籍し、以来30年以上、この仕事をやっています

池上

では、どんな車をこちらでは取り扱っているのでしょうか?

■

案内してくださったのは碓井さん。なんと日本人です。もともと日本の自動車メーカーで修理工として技術を研鑽した後、青年海外協力隊として海外で自動車の修理や組み立ての指導にあたったのち、この工場にやってきました。

「70年代後半からですから、もう30年以上、こちらで仕事をしています。社長のDaveとおんなじですよ」と笑う碓井さんが語ります。

碓井

いま、ここで組み立てているのは、ひとつはトヨタのランドクルーザーですね。もうひとつは、三菱ふそうのトラックです

池上

え、別々の会社の車を一緒に扱っているんですか?

碓井

その通りです。ケニアの自動車販売台数は伸びてはいますが、日本の最大手のトヨタにして新車の販売台数はわずか約3千台程度。これでは、自社でノックダウン用の組み立て工場をつくっても採算があいません。そこで、うちの会社の出番となるわけです。もともとフォードの組み立てをやっていましたから、時には日本車の隣でアメリカの車を組み立てていることもありますよ

■

なるほど、たしかにおっしゃるとおりです。

今度は、工場の戸外に回りました。なんとものものしい軍用車両が立ち並んでいます。

「おや、これはなんですか?」

碓井さんに尋ねると、

「こちらは、南アフリカからソマリアに派遣された国連のPKOの車両です。途中、こちらの工場に寄って、我々がメンテナンスを行っているわけです」

びっくりしました。あんまりびっくりしたので、ちょっと乗せてもらったりしました。

■

一般車両から特殊車両からなんと軍事車両にいたるまで。国を問わずに、ブランドを問わずに、どんなブランドでも組み立ててしまう。

この工場の英国人社長Daveさんと日本人技術者の碓井さんのコンビは、なんだか映画に出てくるベテランカウボーイのようでなんとも格好のよい方たちでした。こうした腕っこきのベテラン国際人が、ケニアの近代化を支えている一面もあるんですね。

■
SUPPORTED by JICA
日経ビジネスオンライン 会員登録・メール配信このサイトについてお問い合わせ
日経BP社 会社案内個人情報保護方針/ネットにおける情報収集/個人情報の共同利用 著作権について広告ガイド

日経ビジネスオンライン SPECIALは、日経BP社経営情報広告部が
企画・編集しているコンテンツです。

©2006-2013 Nikkei Business Publications, Inc. All Rights Reserved.