キヤノンITソリューションズ株式会社
サイバーセキュリティラボ
セキュリティリサーチャー
市原 創氏
2024年1月にIPA(情報処理推進機構)が公開した「情報セキュリティ10大脅威」によれば、「ランサムウェアによる被害」が4年連続1位、「サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃」が2年連続2位となった。ファイルを暗号化するなどの障害を意図的に発生させ、その解決のための身代金を要求するランサムウエアは今も全世界で被害が続いている。
「マルウエア、そしてランサムウエアは大手のみならず中堅・中小企業もターゲットとしており、被害に遭えば得意先との取引停止や損害賠償が発生するリスクもあります。あらゆる企業・団体にとって無視できない脅威となってきています」とキヤノンITソリューションズの市原 創氏は警鐘を鳴らす。
造業、卸売・小売業、サービス業など様々な業種が被害に遭っているが、企業規模を問わずに攻撃されているのが最近の傾向だ。攻撃難易度の高い大企業を直接狙うのではなく、取引関係のある下請け企業など、脆弱性のある企業を踏み台にするサプライチェーン攻撃のリスクが高まっている。警察庁の調査によれば、被害組織の37%が調査・復旧費用に1000万円以上かかったと回答しており、従業員数十人規模の、ある物流会社はランサムウエア被害に遭ったことで、業務停止のみならず、取引先からの契約解除などで倒産に追い込まれた。セキュリティーインシデントでは想定外の規模で損害を被る可能性がある(図1)。
それでは、このような脅威に対して企業はどのような対応を行うべきなのか。市原氏は大きく4つのポイントを挙げる。
1つ目は「脆弱性への対応」だ。セキュリティーパッチの適用に加え、侵入経路として悪用されることの多いVPN機器の見直し、エンドポイントの脆弱性対策などが必須要件となる。リスクはマイクロソフト製品にとどまらないため、サードパーティ製品の脆弱性管理も必要だ。「脆弱性の対応を確認するのが難しい場合は、外部の脆弱性診断サービスを活用するのも有効です。対策漏れの機器やサービスを早期に発見して対処できれば、セキュアな状態を維持することができます」と市原氏は言う。
2つ目は「製品の適切な利用」だ。公開範囲や権限は正しく設定できているか、十分な強度のパスワードを使用しているか、パスワードの使い回しや共有はないか、などが基本的なチェックポイントとなる。高度化するセキュリティーの脅威に対抗するため、複数のセキュリティー対策を組み合わせることも推奨される。
3つ目は「情報収集とセキュリティー教育」だ。様々な脅威情報の収集に加え、従業員一人ひとりに脅威を知ってもらう教育・研修は予想以上に大きな効果がある。「知らないことに対して備えるのは難しいですが、知っていることに対しては多くの人が“危険だ”と気付くことができます。例えば、ウイルスが添付された“ばらまきメール”が流行っていることを従業員に周知するだけで、うかつにURLをクリックしない、添付ファイルを開かないという対策につなげることができます」と市原氏はアドバイスする。
4つ目は「被害を受けた場合を想定した対策」だ。被害を受けた際の影響を最小限にするため、どこに何が保存されているのか、何を優先的に守るのかを明確化し、アクセス管理の徹底やデータの暗号化、定期的なバックアップなど適切な管理を心がける。「ログモニタリングも重要です。ログを確認することで、攻撃の痕跡や不自然な挙動に早く気付くことができれば、被害を最小限にできます」と市原氏は話す。