止められない
大規模並列処理システムを支える
メインフレームからのモダナイズというと、どのようにリホストを行うのか、COBOLのコンバートをどう進めていくのかといった手法に意識が向きやすい。「しかし、モダナイズの本質はコンバート手法ではなく、その後のデータモデルをどう考えるかにあります。これができていないために、モダナイズ後のロジックが複雑化し、思ったような成果につながらないということが頻繁に起こっています」。そう話すのはアビニシオソフトウェアの早瀬 勝氏だ。
同社は1990年代後半に超並列スパコンの開発者が立ち上げた企業。「データを自在に操り、高速に処理する」ことを主眼に、大規模システムを対象とした統合型のデータ処理ソフトウエアを開発・提供してきた。
中核ソリューションは「Co>Operating System」だ。メインフレームからLinux、クラウド、Dockerに至るまで、多様なプラットフォーム上でシームレスな並列+分散処理を実現する(図1)。積極的に宣伝活動を行っていないため、あまり知られていないが、同社のシステムはグローバルの大企業で広く活用されている。1日100億件以上のデータ処理や、秒間1万件以上のトランザクション処理を支えるエンタープライズ基盤を支えているという。
図1 Co>Operating Systemの全体像
ミッションクリティカルなデータ操作を基礎とした大規模並列+分散処理ソフトウエア。オンプレミスからDockerまでシームレスな処理が可能なほか、データコンバーターも豊富に揃える
「ミッションクリティカルシステムを前提とした仕様であることや、多様なデータ型やインタフェースをサポートしていること、強力なメタデータ駆動開発がもたらす高い生産性を実現していることが特徴です。これにより、データ変換のためのカスタムロジックを不要にし、コスト削減効果を生み出します」(早瀬氏)。例えばZ/OS上のデータをEBCDICのままLinuxで読み込んだり、リアルタイムで連携したりすることが可能だという。
また、システム構築プロジェクトをシンプル化できることもメリットだ(図2)。データ抽出、フォーマット変換、データ分割といった個々のプロセスに人材を配備する必要があった従来型の進め方と異なり、全処理を担う1カ所に人材を集中できる。システム規模を縮小でき、コスト削減が図れるほか、見通しが良くなることで開発品質向上にもつなげることが可能だ。
COBOLコンバートで
早期に基盤コストを削減
Co>Operating Systemはデータのコンバーターを豊富にそろえているため、モダナイズ後のデータモデルまでを意識したモダナイゼーションに活用されるケースも多い。ここでは多くのユースケースの中から3つを紹介する。
1つ目はニューヨーク証券取引所だ。ITが急速に普及してきた2000年ごろ、株取引量の爆発的な増加に伴い“脱メインフレーム”を決断した。多くのベンダーを対象にコンペを行い、最終的にアビニシオソフトウェアをパートナーに選択したという。
「最初はメインフレーム上のCOBOLコードをCo>Operating Systemで動作する独自言語(DML)にコンバートし、AIXに移行しました。100万行以上のコンバートを約8カ月で実施しましたが、うち4カ月は検証作業に充てたため、実質的な変換作業は4カ月で終えています」と早瀬氏は紹介する。全体の90%は自動変換、拡張変更する部分は手作業でリファクタリングと書き換えを行い最適化した。その後、クラスタ化も行うことで高速化を図り、処理量は以前の100倍以上に拡大。現在はクラウド化を進めているという。
この事例から学べるポイントは、モダナイゼーションの第一歩として、COBOLコンバーターは有効だということだ。メインフレームを速やかに止めることで、早期に基盤コスト削減効果を得ることができる。「アビニシオであればEBCDICのままLinux上で処理できるなど、基本的にすべての設計を維持したままコンバートが可能です」と早瀬氏は言う。
また、とはいえコンバートに頼り切らず、変換後の最適化が肝になるという点も重要な学びとなるだろう。現場の業務は常に変化するため、それに合わせてロジックを書き換えることは、処理の高速化および記述の見通しのよさにつながる。「基盤特性に適した処理方式への変更も考えなければなりません。例えばクラウドのような分散環境は、一度に大きなデータが扱えますが、メインフレームに比べてレイテンシーは著しく大きくなります。このような基盤に移行し、かつ処理を高速化したい場合に、当社のパイプラインと並列処理が威力を発揮するでしょう」と早瀬氏は付け加える。
エンジニアが面白い仕事に携われる
世界をつくりたい
2つ目の事例は世界最大級の輸送会社、FedExである。メインフレームが多くの周辺サブシステムと接続されていたため、Co>Operating Systemの3270コネクタやゲートウエイを活用することで、メインフレームシステムの外観は変えずに中身だけを入れ替えた。
「15回もの大規模リリースを経て処理性能の大幅向上を実現しましたが、開発期間の6割はテストでした。また、メタデータ辞書を整備して柔軟性を向上させることも重視しました」(早瀬氏)
FedExの成功のポイントは、まず長期視点のロードマップをしっかり描いたことが挙げられる。段階移行が必須になる大規模システムでは、新旧システムが並列動作する期間が必ず発生する。またテストも一度では終わらず、何度も繰り返すことになるため、テストの自動化も必要になる。さらに、プロジェクト期間が長ければ、その間にテクノロジーも進歩する。大規模プロジェクトでは、これらの要素も考慮して必要な仕組みや体制を整えることが肝心になる。
「また、リバースエンジニアリングの実施を織り込んだこともポイントといえます」と早瀬氏。古い設計文書は当てにならないことが多い。そのため、メタデータリポジトリやチケット管理システムを構築し、メタデータの分析と辞書化に力を入れることが、管理工数の肥大化やプロジェクトの失敗リスクを抑えることにつながっていくという。
そして3つ目が大手信用情報企業のTransUnionだ。この企業では、M&Aを機に新たなテクノロジー戦略をスタート。2年半という短期間でメインフレームを廃止すると同時に、ほぼ完全なクラウド化に踏み切った。
「移行後はバッチ処理の失敗がなくなり、以前よりも可用性が大きく高まっています。お客様からは、『なすべき構想ならアビニシオが実現を助けてくれる。強気で進めよ』といったうれしいコメントもいただいています」と早瀬氏は紹介する。システムが保持するデータの量は移行前の100倍以上に拡大。サービスレベルが向上したことなどが奏功して、同社の株価は従来の3倍以上に上昇したという。
「また、TransUnion様の担当者も語っていましたが、ITシステムと向き合う上で人を育てることはとても大切です。Java、C、COBOLやSQL、何でもよいのですが技術を理解し、使いこなせる人材は宝です。そのような人材が無用の負担から解放され、常に面白い仕事に携われる世界をアビニシオソフトウェアは実現したいと考えています」(早瀬氏)
単なる言語変換で終わらない、未来のデータモデルまでを見据えたモダナイゼーションを推進することが、そのための1つのアプローチになるだろう。
関連リンクRelated Links
CONTACT
アビニシオソフトウェア株式会社
e-Mail:solutions@abinitio.com



