言語変換機能とインフラの
両方をセットで提供する
TmaxSoftは1997年に韓国で創立されたIT企業である。当初はオンラインのトランザクション処理を行うTPモニターの開発・販売からビジネスをスタート。その後、ミドルウエアやデータベースへ軸足を移し、現在は韓国のWebアプリケーションサーバー市場でトップクラスのシェアを持つ企業へと成長した。同社ソリューションのユーザー企業は世界で4,500社を超える。
日本ではミドルウエアやデータベースをセットにした脱メインフレームソリューション「OpenFrame」で知られている。OpenFrameは、メインフレームのミドルウエアやデータベースと同等の機能を、オープン環境でも実現できるようにするものだ。
「また、より安全・確実にレガシーモダナイゼーションを進める上で、私たちは『2ステップ』での段階移行をお勧めしています」と日本ティーマックスソフトの羅 鍾弼氏は語る。まずCOBOL to COBOLでリホストを実施し、その上でCOBOL to Javaを行うリファクタリング(リライト)を進めるのである。
メインフレームのアプリケーションを一気にJavaへ書き換えてしまうと、問題が発生した場合の原因がプラットフォームの違いにあるのか、あるいはアプリケーションの書き換えによるものなのかを判別しにくくなる。そこでまずリホストを行い、アプリケーションの変更を最小限に抑えつつ、コスト削減やアジリティ向上の効果を早期に実現する。その上で、じっくりとアプリケーションをモダナイズしていくべきなのだという(図1)。
図1 2ステップでのモダナイゼーション
上段のように一気にJava化する方法もあるが、問題発生時の原因切り分けが困難になるなどのデメリットもある。そこでTmaxSoftは下段の2ステップの方法を提案している
これを支援するのが「OpenFrame7」と「OpenFrame21」だ。前者はリホスト、後者はリファクタリングを支援する。
「市場には、“脱COBOL”を支援するためのコンパイラやコンバージョンツールといった言語系ソリューションが多く存在しますが、それらはアプリケーションの動作環境までは担保できません。OpenFrameでは、言語ツールと共にTPモニターやWebアプリケーションサーバー、RDBMSなどのインフラソリューションも提供します。そのため、言語変換に加えて、アプリの動作やセキュリティーも確保できる点が大きな強みです」と羅氏は説明する。
COBOLとJavaのコード比較を
1画面で行える
具体的に、2ステップのモダナイゼーションは次のような流れで進める。
まず第1ステップのリホストでは、OpenFrame7を用いてアプリケーションをそのままの状態でオープン環境へ移行するとともに、データベースのRDB化などを行う。
「例えば、国内ではFWD生命保険様がこの方法でCOBOLとJCLをMicrosoft Azureへ移行し、VSAMファイルやネットワーク型DBをRDB化しました。メインフレームの維持・運用費との比較で、コストは1/3に削減。当社のCDCソリューションも活用し、Oracle DBとのリアルタイムデータ同期も実現しています」(羅氏)。このように、リホストだけでも大幅なコスト削減効果が期待できるという。
そして第2ステップでOpenFrame21によるリファクタリングを行う。TmaxSoftの「T-UP」というコンバージョンツールでレガシー言語の資産分類・分析を実施し、MAPはJavaScript、COBOLはJava、JCLはXMLへ移行する。TmaxSoftは、これらの稼働基盤となるミドルウエアとして、Spring Frameworkをベースとした「HyperFrame」も提供している。
「ここでのメリットは、リファクタリング前のCOBOLコードとリファクタリング後のJavaコードの比較を同一プラットフォーム上で行えることです」と羅氏。OpenFrame21では、COBOLコードとJavaコードを1画面に並べて表示できる。選択した任意のCOBOLコードに対応するJavaコードがハイライト表示されるため、構造を直感的に理解できるようになっているという。
加えて、第1ステップでデータベースのRDB化が済んでいるため、リファクタリング後のRDBとのデータコンペアを自動化できることもメリットだ。COBOLアプリケーションは既にオープン環境で稼働しているため、無理に書き換えを急ぐ必要もない。同一プラットフォーム上で、段階的かつ確実に進めていくことが可能になる。
「リホスト/リファクタリング後にRDB化されたデータベースは、Software AGの『Web Methods』というインテグレーションツールを活用してSAPやSalesforce、Snowflakeなどとリアルタイム連携することも可能です」と羅氏は付け加える。
言語コンバージョンツールを不要にする
生成AIを活用した「アセンブラのJava化」
さらにTmaxSoftが、ITモダナイゼーション領域に大きなインパクトをもたらす技術として注目しているのが生成AIだ。
「今後は言語のコンバージョンツールが不要になり、生成AIとインフラソリューションの組み合わせによる言語コンバージョンが主流になる時代がやってくるとみています」と羅氏は話す。この考え方のもと、OpenFrame環境上で生成AIを使用した「アセンブラのJava化」の実証実験を進めているという。
アセンブラの移行は、レガシーモダナイゼーションで課題になりがちなプロセスの1つだ。COBOLが分かる技術者と同様かそれ以上に、アセンブラを正しく理解する技術者も減っている。新たな手法を模索することが喫緊の課題になっている。
これについてOpenFrame7では、ホストアセンブラを処理できる「OFASM」という実行環境を有している。「これを利用し、アセンブラコードを生成AIによってJava化できるかどうかの検証を行いました」と羅氏は紹介する。
具体的には、「JCLからアセンブラコードを呼び出して実行する」処理について、
- アセンブラのロジックを確認してコメントを追加
- コメントにもとづきアセンブラロジックを変更
- 変更されたアセンブラコードをJavaコードへ変換
という3つのステップで生成AIでの変換を試みたのである。
「生成されたJavaコードを実行し、OpenFrame上でのアセンブラコードの実行結果と比較した結果、生成AIによるコンバージョンで十分変換可能だということが分かりました。ただ、毎回異なる変換結果が得られる可能性があることや、検証には専門知識や検証環境が必要になるといった制約があることも確認しています」と羅氏は言う。
そこで同社は、OpenFrameを検証環境として使いながら、段階的に生成AI導入を進めるアプローチを1つの方法として提唱している。その際TmaxSoftからは経験豊富なエンジニアが伴走するほか、モダナイゼーション向けのsLLM(small Large Langage Model)を開発・提供することでサポートする計画だ。これが実現されれば、モダナイゼーションの常識は大きく変わることになるだろう(図2)。
あらゆるITはいつか陳腐化して消滅する。そのためメインフレームに限らず、モダナイゼーションのニーズは常に存在し続けると同社は考えている。「我々はこの分野のリーダー企業になるべく、モダナイゼーションの技術を今後も改善し続けていきます」と羅氏は最後に語った。
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