モダナイゼーションの本質を理解し、
リスクを回避する
レガシーシステムは新技術への対応が難しいため、ビジネスのデジタル化やデータ活用がなかなか進まない。人件費を含む維持コストが増大し、負担も大きくなりがちだ。このままでは、業務改革やデータドリンブン経営、サステナビリティ経営が立ち遅れ、競争力の低下を招く可能性が高い。もはやモダナイゼーションは避けて通れない課題の1つだといえるだろう。
しかし、その取り組みには“落とし穴”が潜んでいるため、注意が必要となる。プロジェクト推進において、「企画・要件定義フェーズを軽視する」「動いているから、現行システムの調査が表面的になり、品質や業務継続性の確保が疎かになる」といったことはその一例だ。「再構築ゆえの油断と軽視が、品質・納期・コスト面でリスクを招くことがあるのです」と富士通の伊井 哲也氏は指摘する。
モダナイゼーションとは、現行システム構造を変革した上で、蓄積された情報資産を活用すること。ここが現行システム構造を変えずに、新たな環境へ移行するマイグレーションとの大きな違いだ。「これを誤ると、実装すべき技術や機能、ロジックが不完全なものになり、品質を担保できません。納期が長引き、コストも肥大化してしまいます」と伊井氏は投げかける。
攻めのモダナイゼーションは
4つのステップで推進する
“落とし穴”に陥らず、モダナイゼーションを成功させるにはどうすべきなのだろうか。多くの実績を通して、富士通が導き出したアプローチが、「攻めのモダナイゼーション」だ(図1)。「レガシーシステムを近代化するだけでなく、モダナイゼーションをDXや事業変革を後押しする、攻めの経営手法と位置付けるのです」と伊井氏は述べる。
図1 攻めのモダナイゼーションのポイント
先端パートナーとのエコシステムにより、安全・確実なモダナイゼーションを実現。さらにモダナイゼーションを攻めの経営手法と位置付け、DXや事業変革に向けたマテリアリティ提案を実践し、持続可能な成長基盤をつくる
具体的には、既存資産は棚卸しし、不要資産は廃棄する。ナレッジやノウハウを集積した有用な資産は新しいアーキテクチャーで再構築し、柔軟性・保守性を高める。新基盤はクラウドを軸に整備し、先端のデジタル技術を活用しやすくする。既存資産に足りない機能は新システムで付加価値を高めるといった具合だ。「さらにお客様の重点課題を優先順位付したうえで解決の提案を行うことで、モダナイズしたシステムによるDXとビジネス変革までサポートします」と伊井氏は話す。
この作業は「業務・資産可視化」「グランドデザイン」「スリム化」「モダナイズ」という4つのステップで進めていく(図2)。ここからはステップごとにその概要を見ていきたい。
図2 富士通のモダナイゼーションの考え方
ブラックボックス化した既存資産を可視化し、グランドデザインを描く。既存資産の要否を判断し、スリム化・最適化。その上で新基盤へとモダナイズする。既に富士通ではその実現に向けた多彩なサービスポートフォリオや人材を用意。今後もさらに拡充させていくという
まずプロセスマイニング技術による動的資産分析で、実際のオペレーションの動作状況を加味してボトルネックを可視化。プログラムやデータの関係性をひも解く静的資産分析を行い、コンポーネント間の依存度やシステム連携状況も可視化していく。
2つ目のグランドデザインのステップでは、FADM(Fujitsu Architecture Design Method)と呼ばれる富士通の手法を使い、ビジネス/IT戦略に基づく全体最適観点で企業情報システムの全体像を描く。さらにその実現に向けたロードマップも作成していくという。
3つ目の既存資産はスリム化では、不足資産・重複資産の解消、不要資産の削除が軸となる。これにより、保守性・拡張性の向上、運用コスト低減・障害予防、開発生産性の向上を目指す。
最後にベストプラクティスを蓄積した体系的なサービスを活用し、リホストやリライトなどのモダナイズを実施していく。こうすることで変換作業を効率化するとともに、標準化によって品質を確保し、コストもミニマム化できるという。
ポートフォリオの拡充に向け、
エコシステムを強化
4つのステップで行う作業は、いずれもサービスとしてテンプレート化されている。実績のあるメソッドやサービスで構成されているため、安全・確実なモダナイズが可能になるという。「自動化できるところはツールを使って自動化し、それが難しい部分や新たな作り込みはエンジニアがシステムインテグレートします。ツールによる自動化と、人的なSIを必要に応じて使い分け、お客様の要件を形にしていくのです」と伊井氏は説明する。
さらに富士通では、サービスポートフォリオを拡充するため、先端パートナーとのエコシステムも強化している。富士通のアセットやメソッドに加え、パートナーのツールやソリューションを組み合わせることで、自動化の領域が大きく広がりつつある。「エンジニアが手作業で行ってきたマイニングや資産分析、ソース変換をツールが行うことで、工数削減と品質向上を両立し、期間とコストも大幅に削減できます」と伊井氏はメリットを述べる。
モダナイゼーションを支援する人材もパートナーエコシステムによって厚みを増した。グローバルなエコシステムなので、海外拠点のモダナイゼーションニーズにも対応可能だ。上流から支援するコンサルタントは1万人、顧客に伴走するデリバリー人材は4万人の陣容を誇る。専門的知見を持つモダナイゼーションマイスターと、エンジニアバンクも拡充を進めており、それぞれ2026年までに500人、2000人の確保を目指すという。
そうしたエコシステムの有力なパートナーの1社が、クラウドベンダー大手のアマゾンウェブ サービス(AWS)だ。クラウド活用によるモダナイゼーション加速に向けたグローバルパートナーシップを拡大し、2024年4月から「Modernization Acceleration Joint Initiative」を開始した。具体的には富士通が様々な業種で培ったシステムインテグレーションの技術や知見、クラウドテクノロジーのビジネス活用を支援するAWS社のプロフェッショナルサービスを融合させる。「両社の専任部隊が共同でお客様の課題解決や、アセスメントによる最適なクラウド活用を提案します」(伊井氏)。
その一環として、リライトツール「AWS Blu Age」と富士通のSI力を融合させたサービスの提供を開始した。「AWS Blu AgeによるCOBOLからJavaへのコンバージョンに加え、最終テストや基盤移行、移行後のクラウド運用まで幅広くサポートします」と伊井氏は語る。
2023年より、富士通社内で稼働するメインフレームのモダナイゼーションで検証を実施。メインフレームからのクラウド移行を安全・確実・低コストに実現できることを確認したことから、サービス提供を開始した。現在、実際にある顧客企業のモダナイゼーションプロジェクトを推進しているという。
リライトソリューション「PROGRESSION」もサービスポートフォリオの1つになる。プラットフォームフリーで利用でき、COBOLからJava、C#などへの自動変換が可能だ。変換後ソースコードも開示する。これは富士通の北米子会社Fujitsu North Americaが開発したもので、20年にわたり50社超の実績がある。富士通メインフレームでの日本語対応に向けたツールエンハンスと実機検証が完了し、2024年度前期に提供を開始する予定だ。
攻めのモダナイゼーションにより、既に多くの企業が高い成果を上げている。製造業A社はレガシーシステムをオープン化し、AI需要予測に基づく需給計画を実現。業務フローの見える化により、業務も平準化できた。製造業B社は個別最適化した経理・購買・販売システムをSAP S/4HANAで統合。データのコード体系も統一化したため、データの活用が加速。外貨対応や法令対応もスムーズに行えるようになった。
また、ある金融機関は自行銀行システムの80%をクラウド化し、システムの内製化を推進。データドリブンな組織への変革を進めている。富士通自身もモダナイゼーションを推進中だ。この取り組みは経営とIT部門主導で進めている。最終的には約4000の業務システムを1000程度にスリム化し、DX推進基盤を強化する。
モダナイゼーションはもはや“待ったなし”の状況に近づきつつある。もはやその実現は重要な経営課題の1つだと言っても過言ではないだろう。富士通はモダナイゼーションとその先のDXや持続可能なビジネスの土台づくりまで伴走支援し、顧客の成長戦略を力強くサポートしていきたい考えだ。



