
企業が市場競争力を高める上では、業務効率化などの「守りのDX」、新たな価値創出などの「攻めのDX」の両方を実践することが肝心だ。キヤノンITソリューションズは、この両方を支える2種類のローコードプラットフォームを提供している。これらを活用することで開発リードタイムを大幅に短縮し、さらにその成果を通じて業務現場に次々に改善をもたらし、DXへのモチベーションを高める企業もあらわれている。

DXは大きく「守りのDX」と「攻めのDX」の2つのアプローチに分けることができる。前者は社内業務の効率化やコスト削減など内向きの変革を目的としたもの。後者は顧客やステークホルダーを対象とする外向けの変革を目的としたものだ。
「2つのDXは互いに関連しています。守りのDXで組織の安定性と信頼性を高めることが、顧客体験を通じた価値向上や新たなビジネスモデル展開などの攻めのDXの基盤になるからです」とキヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)の宮﨑 陽子氏は話す。
守りのDXから攻めのDXへ、取り組みを着実にステップアップさせていくことで、企業は競争力を高めることが可能になる。そこで同社は、そのための取り組みを支援すべく、それぞれのDXの局面に適したローコードプラットフォームを提供している。守りのDXに向けたものがオンプレミス型の「WebPerformer」、攻めのDXに向けたものがクラウド型の「WebPerformer-NX」である(図1)。
業務効率化やコスト削減を目的とした「守りのDX」を経て、アナログ・物理データのデジタルデータ化を推進。そして真のDXを見据えた「攻めのDX」へとつなげていく
まずWebPerformerは、システムの基本設計情報に基づいて「スキーマ情報」「画面」「業務ロジック」の3つを定義することで、JavaベースのWebアプリケーションを自動で生成するものだ。「開発スピード向上のほか、システムの保守性向上にも貢献します。表現力も高いので、使いやすいWebアプリを開発可能です。老朽化した基幹系システムや大規模システムのリプレースのほか、紙やExcelによる煩雑な業務の効率化などで多く用いられています」と宮﨑氏は紹介する。
もう1つ、WebPerformerの特徴といえるのがシステム開発の柔軟性である。企業内のアプリケーションをどんな環境で稼働させたいか、については、企業ごとに方針やポリシーが異なるが、その都合に応じてオンプレミス/クラウドなど自由に選択が可能である。
また、オンプレミス型のためライセンスは開発環境のみでよい。大量のシステム構築やスケーラブルな展開に際し、ユーザーが増えても、複数台のサーバーに配備しても実行環境にランタイムは不要。「コストメリットを実感いただくことができるでしょう」と宮﨑氏は言う。
2005年の提供開始以来、無数の企業がWebPerformerを活用して守りのDXを加速している。一例が、倉庫、トラック輸送、鉄道輸送、港運のすべてを網羅した国際複合一貫輸送サービスを提供する濃飛倉庫運輸である。
同社は従来、事業を支える基幹系システムや関連システムにおける開発サイクルの向上、リードタイム短縮を課題としていた。それまで基本としていたスクラッチ開発ではそれらの要望に応えきれていなかったのだ。
そこで濃飛倉庫運輸はWebPerformerを導入。アジャイル開発の手法を実践することで、開発効率を大幅に改善した。「プロトタイプ画面をつくり、ユーザーに見せて、意見や要望を即時反映するというサイクルをシステム開発の早い段階から簡単に回せるようになりました。また、『以前に比べて画面をつくるのが非常に楽になった』というお声もいただいています」(宮﨑氏)。開発リードタイムは従来の3分の1程度まで短縮できているという。
加えて、この守りのDXの成功体験が、顧客価値向上を目指した攻めのDXにもつながっている。煩雑な業務が次々改善されていく様子を目の当たりにしたことで、現場のモチベーションが上がり、様々なアイデアや意見が寄せられるようになったのだ。「お客様は現在、さらなる価値創出に向けた“倉庫DX”の取り組みを進めています」と宮﨑氏は語る。
そして攻めのDXに向けて、キヤノンITSが2023年1月から提供開始したのがWebPerformer-NXだ(図2)。クラウド型で、開発環境や運用環境の設計・導入作業が不要なため、より短期間での運用開始が可能。自ら手をかけることなくセキュアな実行環境を利用できることも、大きなメリットといえるだろう。
クラウド型のローコードプラットフォーム。インフラ構築が不要で速やかに運用開始できるほか、複雑な業務プロセスのデジタル化にも対応する
「この攻めのDXのフェーズでより重要になるのは『新しい価値の創出』です。アジャイル的にアイデアを膨らませていくプロセスが必要になるため、内製化を行うことで、自社にマッチした価値を創出できると考えます」と宮﨑氏。複雑な業務ロジックの実装にも対応できるため、高度なシステムの構築にも適しているという。
WebPerformer-NXを使うことで、様々な目的の新規サービスを容易に構築することができる。1つのアイデアとして宮﨑氏は、「工事現場における点呼と安全確認のデジタル化」を挙げた。
多くの工事現場ではホワイトボードにメンバー名を手書きするといったアナログな手法で点呼と安全確認が行われている。しかし、実際に誰がどの持ち場で、どのような作業を行っているのかの情報がうまくひも付いていないケースは多いという。
そこで、WebPerformer-NXを用いて作業員の情報を管理するスマートフォンアプリを構築する。このアプリで、ヘルメットに貼り付けたQRコードを読み取ることで、点呼と安全確認をデジタル化する試みだ。この仕組みがあれば、どの現場で誰が働いたのか、各自の作業実績を正確かつ迅速に把握し、データ化して蓄積できるだろう。
「このように、WebPerformer-NXを活用することで、これまでにない様々な価値をビジネス現場に容易にもたらすことができます」と宮﨑氏は言う。守りと攻め、両方のDXをスムーズに推進していく上で、WebPerformerおよびWebPerformer-NX は強力な武器になるはずだ。
