
IFRSを中心としてグローバルの包括的なベースラインとなるサステナビリティ開示基準の策定が進められている。しかし、そこで大きな課題となっているのが、サステナビリティ報告を支える概念フレームワーク整備の遅れだ。国や業界、企業ごとの差異も明確に捉えた制度や枠組みづくりが急がれている。

IFRS財団配下の国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)は2023年6月、IFRS S1号として「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」を公表した。
しかしながら、サステナビリティ報告に関する概念フレームワークは、いまだに十分な整備が進んでいないのが実情である。ちなみに概念フレームワークとはIFRSの“憲法”とも呼ばれるもので、会計基準や解釈指針に一貫性をもたらす重要な役割を担っている。
神戸学院大学経営学部 教授の島永和幸氏は、「今後、サステナビリティでも開示基準が整備されていくと考えられますが、概念フレームワークが未整備のまま進むと、『すべての関係者が基準を理解し、解釈することを支援する』という目的を達成できなくなる恐れがあります」と指摘する。
概念フレームワークは、財務情報の国際的な比較可能性と質を高めることで透明性の確保に寄与し、説明責任を強化する。また、投資者が世界中の機会とリスクを識別することの一助となり、ひいては資本配分を改善することで経済効率性の向上に寄与する。
したがってサステナビリティ開示基準に関しても、これと同様の役割を求めるのであれば、概念フレームワーク整備の検討は必然となる。
「例えばIOSCO(証券監督者国際機構)などの間でも、概念フレームワークの見直しを求める意見が出されています。また、財務報告と非財務報告を同格とする企業報告フレームワークを提示するものとしてFRC(2020)の討議資料があり、企業報告全体を対象とした概念フレームワーク構築のたたき台となる可能性があります」と、島永氏は最近の動向を紹介する。
さらに、ISSBとは異なる視点からの取り組みとして、Capitals Coalition(資本連合)においても、サステナビリティ報告に関する概念フレームワークの議論が行われているという。資本へのインパクトを自然資本、社会資本および人的資本について独自の文書を用いて報告するよう検討するものだ。
ただし、企業を取り巻くサステナビリティ課題は非常に広範囲に及ぶ。グローバル化が進展しているとはいえ、世界はまだ「セミ・グローバリゼーション」にとどまった状況にあるのが現実だ。
そうした中で島永氏が、「グローバル・ベースラインとサステナビリティ開示基準のグローバル化に向けて参考となるもの」として示すのが、パンカジュ・ゲマワット教授が提唱した「CAGEフレームワーク」である。国や地域ごとに一般に思われているよりも大きい文化的、政治的・制度的、地理的、経済的な隔たりが存在するというものだ。
これを捉えて島永氏は、「サステナビリティ開示基準および開示のあり方は、画一的なフレームではなく、国や業界、企業ごとの差異を明確に表示する制度や枠組みづくりが必要になると考えられます」と説き、サステナビリティ報告を支える概念フレームワーク構築に向けて世界がどう取り組むべきか、今後の展開を見据えている。