
ESG経営を支えるSX(サステナビリティ変革)やGX(グリーン変革)をどう実現していったらよいか。日経BP 総合研究所でESGをテーマに研究する酒井耕一に、日経BP BtoBユニット長の戸川尚樹が切り込む対談が行われた。テーマは、「反ESG時代にSX・GXは成り立つか」と、刺激的なものだった。


セッションの冒頭で日経BP BtoBユニット長の戸川尚樹は、「米国で反ESG運動による投資への影響が顕在化しているニュースが話題になっています」と、ESG推進の動きに暗雲が広がっていることについて問いかけた。日経BP総合研究所 ESGフェローの酒井耕一は、「環境団体の中には不満を有名な美術品の破壊ではらしたりするところもあります。ESGを掲げても運用成績が低い投資信託も多くあります。こうしたことから反ESGの動きは起こるべくして起きていると感じます」と現状を分析する。
こうした中で、日本企業はESG経営にどこから手を付けたらよいのか。酒井は、「ESGという言葉がなくても、ESGのGであるガバナンスは株式会社にとっての一丁目一番地です」と指摘する。これに対して戸川は「ESG対応のためではなく、健全な企業活動のために必要なことを実行していくことがESG経営につながります」とまとめた。
次に、ESG経営の先進事例を示すSX(サステナビリティ変革)銘柄について話題が移った。企業の持続可能性とESGの両立を実現する先進企業を選定したもので、経済産業省と東京証券取引所が選定している。酒井は、SX銘柄選定企業について、「2024年の選定企業は大企業ばかりでした。しかし、SX銘柄の意味を『企業の持続可能性に取り組むDX(デジタル変革)と、ESG経営を推進するSXの双方の立場の人が対話をすることで、価値ある成長の促進をすること』と解釈すれば、どんな企業でも実践できます」と語る。
サプライチェーンにおける温室効果ガスの排出量であるスコープ3の削減についても議論が進んだ。戸川が「スコープ3対応のためにシステム連携を急ぐべし、とのトレンドがあります」と現状を指摘する。これに対して酒井は、「スコープ3も大事だが、企業そのものが成長することがより重要。まずは自社の状況を知り、できる範囲で取り組むべきでしょう」と語る。その上で「すぐ取り組まなくても、ツールなどについてウオッチしておくことは必要です」と初動を促した。
話題に上ることが多い生成AI(人工知能)。戸川が生成AIとESGとの関係について尋ねると、酒井は、「今後の企業活動には生成AIが欠かせません。究極的には、AIで需要と供給のバランスを見極めるサービスや製品を作った企業が勝つことになるでしょう」と予測した。
最後に、「GXやSXの成功の条件は」と戸川が質問した。酒井は、「社内のいい空気やモラル、一人ひとりが能力を発揮できる風土など、デジタル化と逆の視点が必要でしょう」と答えた。戸川が「当たり前のことをきちんと実行し、その事実を開示する。さらに異なる部門と活発に議論する組織風土づくりが大切だと感じました」と、対談を締めくくった。