Data Scientist Japan 2026 Review データサイエンティスト・ジャパン 2026

Minitab株式会社

「AIを使えたら使う」では組織は変わらない生成AI組み込みを“半強制”する仕組みとは

製造業において生成AIの個人利用は7割に達する一方、組織としての活用はわずか2割にとどまっているというデータがあります。この「活用の溝」をどう埋めるべきか。データ分析の世界的先駆者である米Minitabは、現場への導入支援を通じて見えてきた「組織活用の3原則」を提唱する。ポイントは、AIを「便利な道具」として扱うのではなく、業務フローの中に「半強制的」に組み込むべきだという。製造現場、品質管理、研究開発の最前線で何が起きているのか。具体的な成功への道筋を紐解く。

企業でのAI導入は2割と低迷

伊藤 侑也氏

Minitab株式会社

North Asia Region

Partner Account Manager

伊藤 侑也

米Minitabは50数年前に設立されたデータ分析ソフトウエアの開発ベンダーである。世界中の製造業の品質管理や設計開発、生産技術などの部門で圧倒的なシェアを誇る。近年は業務を拡大し、製造業向けのプロジェクト管理やデータ収集、そしてAI導入支援にも注力している。「企業内においても個人での生成AI活用は進んでいますが、組織全体としての利用は遅れており、それがAIの導入効果が出ない最大の原因です」と、Minitabの伊藤侑也氏は話を切り出した。

ITmediaの製造業向け媒体「MONOist」が製造業従事者を主な対象として2025年に実施した調査では、7割が業務で利用していることが分かった。一方、企業内の組織を対象としたMMD研究所の調査(2025年)によると、AIを導入している企業は2割という結果だった。伊藤氏は、「企業における組織としてのAI利用は、個人利用と比べてはるかに低いことが読み取れます」という。

なぜ、組織での活用が進まないのか。伊藤氏は製造業特有の「2つの壁」を指摘する。
 1つ目は「組織で使われない」という壁だ。AIを導入しても、特定のスキルの高い個人だけが使い、組織全体に波及しない。使いたい人が使えばよいというスタンスでは、業務効率の底上げには繋がらない。
 2つ目は「成果が見えない」という壁だ。AIを使って何が良くなったのか、コスト削減や品質向上にどう寄与したのかが可視化されないため、投資継続の判断が難しくなる。

業務に組み込み “逃げ道”をなくす

組織活用の成功を導く「3つの原則」
組織活用の成功を導く「3つの原則」

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AI活用を阻む壁を取り除いて、組織活用を進めるには3つの原則があるという。
 第1は、AIを使う目的を定義することだ。例えば、製造業のシーンでは、生成AIを活用して、更に新製品の開発力を高めたいのか、品質管理で不良率を下げたいのかによって、使い方が大きく異なります」(伊藤氏)。

2点目は、手順書をテンプレート化すること。例えばMinitab製品では、データ取込、分析、ダッシュボードの作成時にAIボタンが存在し、手順をテンプレート化しやすくなっている。これにより、誰がAIを使っても一定水準以上の回答が得られる「標準化」が可能になる。

3点目は、AIを業務に組み込むこと。これが最も重要なポイントだと伊藤氏は強調する。「例えば、品質報告書の作成プロセスにおいて、AIによる一次分析を必須工程として組み込んでしまいます。 “使わざるを得ない仕組み”こそが、組織活用の最大の成功要因となります」(伊藤氏)。

この3原則を実践し、成果を出している製造業は実際どのように活用しているのだろうか。ある企業では「データの加工・整形」にAIを用いている。異常値を取り除き、欠損値を指摘する役割をAIに委ねた。「加工・整形のデータ分析を行う際、異常値除去と欠損値指摘に総時間の半分以上とられるほど負担が高かったので、AIを導入して半自動化することで、利用が活発になりました」(伊藤氏)。

2つ目は、「理解・判断の支援」におけるAIの伴走だ。実験結果の解釈をすべてをAIに丸投げするのは現状ではまだ厳しい。そこでAIに「どの条件で分析すれば性能向上につながるか」といったアドバイスを提供させる。それによりデータ解釈を省力化し、分析の最終判断は人間が行う。「業務フローにAIを補助的に組み込むことで導入効果が出たという話はよく聞きます」(伊藤氏)。

3つ目は、「ブレインストーミング」の自動化だ。製造業では、結果と原因の関係を図示する「特性要因図」を見ながら議論することが多い。この特性要因図の作成ツールにAIを組み込み、例えばある懸念点に関連する項目を5個洗い出して不要なものを消すといった処理を委ねると、ゼロから考えるストレスを削減でき、AIが出した案をベースに議論を深めることができる。実際に導入したある企業では、会議の質とスピードが劇的に改善したという。

AI活用は社内浸透を目指す時代に

これらの「業務への組み込み」を強力にバックアップするのが、Minitabが提供するクラウドベースのプラットフォーム「Minitab Solution Center」だ。データのAI分析結果を社内で共有するためのダッシュボード機能を備え、組織の業務フローにAI活用を組み込む仕組みを作ることができる。「例えば、データを取得する機械や、データを見える化する画面構成を設定して、必要な時はアラートを鳴らすといったAI活用の仕組みを簡単に作ることができる点を評価いただいています」(伊藤氏)。

製造業向けデータ・プロジェクト管理プラットフォーム「Minitab Solution Center」
製造業向けデータ・プロジェクト管理プラットフォーム「Minitab Solution Center」

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「AI活用は、個人のスキルから組織の資産へと移行するフェーズにあります」と伊藤氏は結んだ。 製造業の現場において、AIは選択肢ではなく、生き残るための必須装備だ。リーダーがなすべきことは、現場に自由を与えることではなく、「AIを使わざるを得ない、かつ誰でも使える仕組み」を提供することなのだ。

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