日立エナジーは、電力がエネルギーシステム全体のバックボーンになると考えています。私たちはネットゼロの達成に向けた変革の緊急性とそのスピードを強く認識し、世界のエネルギーシステムをより持続可能で柔軟でありなおかつ安全なものにするために必要な技術を開発・展開しています。エネルギー転換の緊急性から、現在とは異なるエネルギーシステムの構築が求められており、その実現にはさまざまな業界や関係者との協力が必要です。
ご存じの通り、電力需要はすべてのセクターにおける電化の進展や、電気自動車と交通機関の普及、建物の冷暖房の需要増、データセンターや産業プロセスの増加により急速に増加しています。2050年の世界の電力システムでは、2020年と比較して約4倍の発電能力が必要で、電力の輸送量は最大で3倍にも達する見込みです。2050年までにカーボンニュートラルなエネルギーシステムを実現するためには、電力システムの拡充を急速に推進することが不可欠です。そのための技術は既に存在しており、さらに必要となる技術は拡充の過程での開発が可能です。
電力システムの進化とエネルギー転換を促進する3つの基本技術分野があります。それは、持続可能な製品とソリューション、パワーエレクトロニクス、デジタル化です。
持続可能な製品とソリューション: 現在の機能性のみではなく、総合的なソリューションとライフサイクルに目を向ける必要があります。また、気候変動などの環境条件の変化も考慮し、従来よりも丈夫な技術を開発しなければなりません。例えば、かつて経験したことのない異常気象に直面している国もあります。
パワーエレクトロニクス: 電力システムの進化には、パワーエレクトロニクスが不可欠であり、インバーター電源は至る所に存在します。とはいえ、それら何百万台のインバーターの制御は標準化されておらず、プラグアンドプレイの状態には至っていません。そのため、ネットワークの安定性のみならず電力品質(電圧品質、周波数、システムイナーシャ等)にも配慮する必要があります。また、埋め込み型DCグリッドやメッシュ型アプローチを進めており、ベンダー間の相互運用性を実現するために協力が必要です。
デジタル化: 電力網には多種多様な資産が数多く存在するため、より複雑な電力システムを信頼性と安全性を保ちながら管理するための新たなアプローチが必要です。機械学習やAI技術などのデジタル技術は、概念を創出する一助となります。概念の例としては、時間ベースのメンテナンスから、状態または信頼性ベースのメンテナンスへの移行などが挙げられます。また、既存の資産の状態を評価し、新しいタイプの資産を、信頼性が高く回復力のある方法で統合できるようにする必要があります。将来的に、脱炭素化によってエネルギーシステムが変容し、統合と管理が求められる「システム・オブ・システムズ」となります。それを管理する唯一の方法は、今日のオペレーションを管理・最適化しつつ、デジタル化を進めることなのです。
世界中の組織が、RD20国際会議のようなイニシアチィブ(枠組み)によって支えられ、カーボンニュートラルなエネルギーの未来を実現するための新しく革新的な技術の開発に注力している中で、電力システムは新たな再生可能エネルギーを取り入れるためにより柔軟に進化し、増大する需要に応えなければなりません。電力システムには、効率的で制御可能な送電と配電、グリッドの慣性と回復力を支えるための柔軟なエネルギー貯蔵機能が必要です。電力システムは、国境を越えた一つのグリッドとしてどの地域でも機能し、緊急時にはサブグリッドをオンオフできる機能を持たなければなりません。
RD20から生まれるコンセプトや技術は、産業界が製品やシステムに応用することでさらに発展します。しかし、各国(G20)におけるエネルギーミックスやフットプリント(発電から需要まで)はそれぞれに異なるので、RD20は技術を適用し、カーボンニュートラルな未来のエネルギーシステムを共同創造する上で国、政策立案者、産業界間で協力するためのプラットホームとなり得るでしょう。
エネルギー転換の緊急性は地球規模での課題であり、われわれは共にその変化をもたらすことができます。今こそ行動し、テクノロジーを大規模かつ迅速に展開し続け、持続可能なエネルギーの未来をすべての人々のため前進させ続けなければなりません。

ゲルハルト・セルゲ氏は、日立エナジーの取締役副社長兼最高技術責任者である。1999年に日立エナジーの前身に入社し、コーポレートリサーチに従事。2005年から2014まで中電圧製品事業部で複数の役職を歴任。2015年には電力製品部門のグローバルテクノロジーヘッドに、2016年には電力グリッドの事業CTOに就任。セルゲ氏は、ドイツのアーヘン工科大学で電気工学の修士号と博士号を取得している。