野村マイクロ・サイエンス
「水」の利用が絶えることはない
卓越した超純水技術で
半導体の洗浄工程を革新
半導体の洗浄工程で、超純水の使用量が急増している。半導体需要の拡大と3D化による工程数増加の相互作用が背景にある。超純水に特化したエンジニアリング会社である野村マイクロ・サイエンスは、2024年3月期の連結経常利益が前期比68.6%増となった。水資源有効活用、環境保護へ、同社の視線は未来を見据える。
半導体の製造工程において、リソグラフィ工程やイオン注入工程等に入る前に微粒子、金属、有機物といった汚染物質の除去が必須となる。驚くことに半導体製造の約3割が洗浄工程だ。洗浄に用いる超純水は半導体の性能と品質(歩留まり)に影響するため、不純物を一切含まない高純度なものが求められる。半導体の進化に伴い洗浄工程の規模が変わってきたと、野村マイクロ・サイエンス代表取締役社長執行役員の内田誠氏は説明する。
「微細化に加え、チップを垂直方向に積み上げる3D化が急速に進んでいます。数100工程が1000工程以上に増加するといった、桁の違う変化が起きているのです。また生成AI(人工知能)、自動運転などの進展で半導体需要が拡大し、3D化との相乗効果で洗浄時に使用される超純水量が増えています」
超純水とは、水中に混在する不純物を除去した水(純水)を、さらに精製して純度を高めたものだ。不純物濃度は、水道水100ppm(1万分の1)に比べ、超純水は0.1ppt(10兆分の1)。例えるなら、純度100%の理論純水で満たした東京ドームの中にしょうゆが1滴、という世界である。
(左)野村マイクロ・サイエンス 取締役会長 千田豊作氏
(右)野村マイクロ・サイエンス 代表取締役社長執行役員 内田誠氏
独自技術で水資源活用
「専業」ゆえのこだわり
超純水とは何か水中に混在する不純物を除去した「純水」を、さらに精製して純度を限りなく100%に近づけた水を「超純水」と呼ぶ
野村マイクロ・サイエンスは半世紀以上、超純水に特化し装置の開発・製造を行ってきた。現在も全体売上に占める水処理装置事業の割合は96%に及ぶ。「専業」としての強みについて、同社取締役会長の千田豊作氏は言及する。「当社は経営の思いや社員の情熱、経営資源のすべてを超純水に集中しています。お客様の声に真摯に耳を傾け、現在だけでなく未来の課題を見据えているのが当社の強みであり、存在意義です」。
同社は米国、成長市場である東アジアを中心に海外展開する。直面する重要課題が、世界中で起きている水不足だ。飲料や農業用途以外の水資源をいかに有効活用するか。様々な原水に含まれる不純物の種類に合わせた除去方法を組み合わせ、超純水を製造する技術を蓄積してきた。
「半導体工場の立地において、洗浄工程で使用される超純水の原水量確保は必須条件の1つです。台湾では海水を淡水化したもの、米国では地下水を原水に使用したケースもあります。当社では下水を再処理し原水として使用するテストも行っています。地球上のあらゆる場所で、様々な水質の原水から超純水を製造できる技術力も当社の強みです」(内田氏)
水資源を有効活用する上では、半導体製造工程で使用した超純水の再利用も重要なポイントとなる。「結局はコストとの兼ね合いです。最も経済的な再利用率は70%といわれていますが、原水量確保が難しい台湾において、当社は90%の再利用率を達成しています。産学官連携により、各工程で洗浄方法を見直し節水する研究も進行中です」(千田氏)。
超純水にオゾンガスを溶解させてクリーンなオゾン水を製造する「NOMUREXON®O₃」
環境への取り組みは、企業が選ばれる重要指標の1つ。半導体メーカーも例外ではない。様々な薬品が使用されてきた半導体洗浄では、超純水にガスを溶解させ、薬品使用量を劇的に削減した「機能水」の活用が進む。しかし、ウエハー上に回路パターンを描画する工程で塗布するレジストという樹脂の剥離は、機能水による処理が難しい。現在はSPMと呼ばれる、硫酸と過酸化水素水を混合した酸化力の極めて高い洗浄液を用いる。
「SPMで使用される硫酸は危険物質の1つで、安全性の問題や洗浄後の排水処理に要する手間に加え、最終的に埋め立て処分となるなど環境負荷も大きい。そのためSPMの代替として、機能水の一種である高濃度オゾン水を製造する装置の研究開発を進めています」(内田氏)
通常のオゾン水ではレジストを剥離できない。いかにオゾン濃度を上げて酸化力を高めるか。「偶然の産物ではなく、成功の理由を明確に説明でき、かつ再現できることが製品化では必要です。しかし試行錯誤を重ねても、求める結果が得られない。その繰り返しを経て、ある条件のもとでオゾン濃度を上げることに成功し、なおかつ濃度の安定化を実現しました。専業の当社だから、ここまでこだわれたと思います」と千田氏は話し、こう続ける。「最近、特許を取得しました。半導体洗浄における環境負荷低減のブレイクスルーになると確信しています」。
利益は社内にも還元
全社一丸で変革に貢献
超純水分野のエキスパート集団である野村マイクロ・サイエンス。社員一人ひとりが躍進の原動力となる。「利益は株主とともに、社員にも還元するという経営方針です。報酬は業績連動とし、管理職にはストックオプションを与えています。社員が努力し会社の業績が上がれば、自身の給料や賞与も上がります。会社に愛着を持つエンゲージメントの向上は、専業である当社にとって生命線です」(千田氏)。
野村マイクロ・サイエンスの超純水は、ロジック、メモリー、パワー半導体など幅広い用途の洗浄工程で使用されており、経営基盤は強固だ。全社一丸となったエキスパートの力が、半導体製造プロセスの変革に貢献する。
野村マイクロ・サイエンスの業績拡大とさらなる成長見込み半導体需要の加速、それに伴う超純水使用量の増加を受け、2024年3月期の連結経常利益が前期比68.6%増を記録。新中期経営計画「TTT-26」では2031年3月期に1,200億円の売上高を見込む
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