高砂熱学工業
クリーンとCO₂削減を両立し、半導体工場に導入拡大
先進空調技術と自然原理を融合
時代が求めた空調システム
微細化・積層化に伴い、半導体製造では消費電力が増えている。生産性を高めながら、いかに省エネを実現していくか。注目されているのが「環境クリエイター®」を標榜する高砂熱学工業が開発した、旋回流誘引型成層空調技術だ。自然原理を利用し、従来比CO₂削減50%を実現。導入企業が急増している。
「半導体工場のお客様は空調技術でどこまで消費電力を抑えられるか、強い関心をお持ちです」と高砂熱学工業エンジニアリング事業部副事業部長の牧本浩明氏は話す。微細化・積層化に伴い半導体製造の消費電力が増えている。装置の高密度化に伴う発熱量増大に対応すべく、空調にもパワーと効率化が求められる。
TCR-SWIT® 累計導入面積2020年からの3年間で、導入面積が急拡大
「需要ニーズに応えながらCO₂を削減する上で、鍵を握るのが空調です」(牧本氏)。半導体工場において、高砂熱学工業の次世代クリーンルーム空調「TCR-SWIT®」の導入が急拡大している。
「環境クリエイター」として空調技術を基軸に地球環境に貢献する高砂熱学工業。2023年に策定したパーパス「環境革新で、地球の未来をきりひらく。」を具現化し、クリーンルームに新たな価値をもたらすのがTCR-SWITだ。
空調方式には、混合型と成層型の大きく2種類ある。混合型は、天井から冷気を吹き出し、室内の空気を混ぜ合わせる。成層型は、冷気は下降し暖気は上昇するという自然原理を利用する。後者は空気の吹き出す速度が課題となる。速いと空気が攪拌され、自然原理が成立しない。遅いと効率が悪く、空調システムも大きくなる。
(左)高砂熱学工業 エンジニアリング事業部 設計部 副部長 松岡慎氏
(中)同社 エンジニアリング事業部 副事業部長 兼 DX推進室長 兼 品質・環境・安全部長 牧本浩明氏
(右)同社 エンジニアリング事業部 産業設備2部長 長江剛志氏
自然原理を利用して
従来比CO₂を50%削減
そこに同社の旋回流誘引型成層空調「SWIT®」が生きる。同社エンジニアリング事業部設計部副部長の松岡慎氏はSWITの独自性を説明する。
「ポイントは空気の渦を生み出す旋回流です。固定された羽根で構成される独自吹き出し面から旋回流の状態で供給される冷気は、周囲の空気を巻き込みながら室内に行き渡ります。自然原理を利用するため、混合型に比べ吹き出し風量の少量化、室温により近い温度での空気供給を可能とし、省エネ・省コストを実現できます」
SWIT®の模式図熱上昇気流と旋回流を利用して省エネ・省コストを実現。このシステムをクリーンルーム用に適用したのがTCR-SWITである
SWITをクリーンルームに適用したのがTCR-SWITだ。作業域の浮遊微粒子は、発熱体(装置)で暖められた空気と一緒に天井面に排出される。同社の試算によると、混合空調型クリーンルームFFU(ファンフィルターユニット)と比較し、TCR-SWITは搬送動力47%、熱源動力32%、熱回収の効果も含めるとCO₂排出量は実に50%の削減を実現する。
当初、TCR-SWITの導入拡大は容易ではなかった。同社エンジニアリング事業部産業設備2部長の長江剛志氏は振り返る。
「クリーンルームの空調方式変更は、お客様にとって品質に関わるため重要な経営判断です。不安を払拭できなければ採用に至りません。当社のイノベーションセンターではTCR-SWITの模擬を実施しています。お客様の経営層や製造部門トップに実際に見ていただくことが、導入決断の後押しになります」
工場全体の清浄度を高めるには巨額投資が必要だ。少しでも投資を抑えるために、完全密閉容器と製造装置内部だけをスーパークリーンの状態に保つ方法がトレンドとなりつつある。必要な清浄度を省エネで維持できるTCR-SWITのポテンシャルは高い。前工程から後工程まで半導体製造の各プロセスで活用できる、時代が求めた空調システムだ。
従来型とTCR-SWIT®の比較図TCR-SWITは天井と床下のスペースを抑えられ、建築コストを最適化できる。従来型では空間全体で温度が均一だが、TCR-SWITでは作業域にあたる保証領域内に絞って温度や清浄度を制御。効率的に運用できる
クリーンと省エネの両立で
前工程から後工程まで幅広く
TCR-SWITはFFUと比べて建築コストも抑制できる。「FFUでは天井と床下にスペースが必要ですが、TCR-SWITでは不要となり、階高を低くすることが可能です。また天井も不要となり、建築コストを最適化できます。装置のある部分だけを清浄化できるため、クリーンルームの早期立ち上げも可能です」(長江氏)。
持続社会の実現に向けたCO₂削減ニーズは今後も高まる。同社は半導体工場向けにグリーン水素の供給も見据える。
TCR-SWITを軸にした事業拡大も重要なテーマだ。「TCR-SWITでは、冷却に使う水の高温化が可能です。そのため、空調で冷却し戻ってきた熱の再利用ができるので、これまでにない新たな熱利用のご要望も多くなっています。全体最適の観点で、熱のトータルコーディネートにより省エネ効果を高めていく。お客様からの期待は大きいと感じます」(牧本氏)。
「環境クリエイター」として、半導体工場の生産性と省エネを両立する空調システムをさらに追求していく。
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