RYUKA国際特許事務所
発明者とのディスカッションで特許の価値を最大化
グローバル特許競争時代を
勝ち抜く知財戦略へシフト
特許の出願はリスクを伴う。競合相手に手の内を明かすからだ。ポイントは、権利の迂回方法を洗い出して対策を施すこと。コア技術を隠す戦術も、時に必要となる。グローバル特許競争に勝つために、日本企業が取るべき知財戦略を検討する。
革新的だから出願すべきとは限らない。RYUKA国際特許事務所所長の龍華明裕氏は、大手メーカーの元開発者。自身の経験から技術を守るプロの必要性を痛感したのが起業のきっかけという。
龍華氏はエピソードを紹介する。ある大学教授からバイオに関する特許出願の依頼があった。微生物を使って廃棄物からメタンガスを作る発明である。ポイントは、微生物A・Bの共存により、メタンの生産効率が高まるということ。特許の観点では、微生物の亜種の組み合わせA*・Bでも同じ効果を得られるかが問題となる。
「教授の回答は『同じ効果を得られるA*・Bもあるでしょう』でした。このままでは権利が回避されるだけでなく、似た発明へのヒントを競合相手に与えることになります」(龍華氏)
RYUKA国際特許事務所 所長 龍華明裕 氏
権利の迂回が容易な特許を出願しても技術は守れない。だから、発明者と権利の迂回方法を幅広くディスカッションした上で、迂回方法も含めた権利化を狙う。時には発明のコア部分を隠して部分的な特許を取得するなどの対策も必要になる。発明者とのディスカッションが鍵を握る。
特許の迂回を防ぐための
ディスカッションを行う
RYUKA国際特許事務所はディスカッションを通じて、事業を守る特許戦略を立案する。
「当所は、発明者と他社の出願を調査し、発明の原理を深く理解してから権利の迂回パターンを発明者と議論します」(龍華氏)
特許事務所としては珍しくR&D予算を設け、技術や業界に関する知識の習得をバックアップする。何をどの程度改良をすれば特許化できるか、技術ごとに事前調査して発明者との面談に臨み、スピーディーに事業保護の方向性を導き出していく。
これは加熱する特許競争を勝ち抜く有効なアプローチとなる。企業にとって特許は手段に過ぎない。特許を軸に事業を起こし、市場を拡大する知財戦略こそが、企業の命運を左右する。
「昔の日本企業の知財戦略の一つが包括的クロスライセンスです。日本企業間で相互にライセンスすることで紛争を避けたので、特許の迂回は重要でありませんでした。ところが今の競争相手は海外企業。彼らは積極的な攻め方をします。かつてDVD市場では日本がほとんどの特許を持っていました。しかし成長したDVD市場を制覇したのは韓国や中国です。日本は特許で先んじたにもかかわらず事業で勝てなかったのです。日本の特許は出願前に迂回方法がディスカッションされていないので、迂回が容易だからです。迂回方法を検討していない発明を、安易に出願すべきではありません」(龍華氏)
将来のマーケットへ
特許で先攻する
しかし成長期のマーケットでは、既に多くの特許が出願されているため、迂回方法を含む広い権利を取りにくい。広い権利を得るには、黎明 期の積極的な出願活動が求められる。ここでのポイントは、将来の課題を見つけ出すことだ。
■図 「特許ビジュアライゼーション」概要図未来を先取りした知財戦略へのシフトをサポート。特許のビジネス価値を高める
「当所の独自サービス『特許ビジュアライゼーション』のもとに、未来を先取りした知財戦略プロジェクトが複数動いています。アプローチを理解いただくために、20年前の事例を紹介します」と龍華氏は説明を続ける。
このプロジェクトは、デジタルカメラの要素技術を使って新規事業を起こすというもの。顧客企業の強みは、小型レンズと画像センサー。特許調査をもとに、要素技術を生かせる、監視カメラなどの新たな用途を選出した。
「しかし、デジタルカメラの技術をもとに監視カメラを作っても、それだけでは特許を得られません。お客様とディスカッションを重ね、重要と確信できる課題にたどり着きました。画像センサーの解像度が上がるほどデータ量も増大しメモリーが逼迫する。将来に必ず起こるこの課題を解決するために、顔以外は解像度を落とすという発明が生まれ、迂回方法も含めて幅広く特許を取得。事業売却によってイグジットに至りました」
グローバルな勝算を持って
特許を出願する
龍華氏はまた、日本企業はグローバルで勝つ知財戦略にシフトすべきと言う。「価値の高いテーマでは、世界で同時に同じ研究が行われます。日本だけで特許を取得すると、海外では自由にその技術を利用できるので競合会社が成長し、やがて日本市場にも攻め入ります。これを抑止するため、グローバルで特許を取得することが必要です」。
特許の外国出願で問題となるのが手続きの煩雑さとコストだ。「発明の説明が現地の審査官へ誤って伝わることがあります。発明者→日本事務所→現地事務所→現地審査官の“伝言ゲーム”を解消するため、RYUKA米国法律事務所を設立し、米国特許商標庁(USPTO)と直接に連絡できる体制を整えました。特許出願の品質とスピードアップ、コスト削減が図れます。審査官との電話面談には、発明者も同席できます。すると審査官が親近感を持ち、発明を理解してもらいやすくなります」(龍華氏)。
■図 米国特許商標庁(USPTO)に直接出願間に別の事務所を挟まず、USPTOに直接出願することで、“伝言ゲーム”によって生じる弊害を解消。特許取得のスピード向上、コスト削減が図れる
ベンチャー企業にとって、特許は資金調達でも重要だ。「金融系コンサルティング会社とも協力し、特許上の課題と、具体的な戦略を数字で説明するスキームをつくり、ベンチャー企業を応援していきます」(龍華氏)。大手企業でも特許主導でマーケットの道筋を描くことが、今後ますます重要となる。「当社の強みであるディスカッション力を、未来のマーケット創造に生かしていきたい」と龍華氏は力強く語る。






