

日本企業のDXの現状を分析すると、興味深い傾向が見て取れる。総務省のある調査※1によれば、DXの目的・効果に「業務効率化・コスト削減」を挙げた企業は売上高が減少している割合が高かった。一方、「新製品・サービスの創出」や「新規事業の創出」を挙げた企業の多くは売上高が増えていたという。合理化目線のDXでは、事業が先細りしかねないことが分かる。
この結果を製造業に当てはめてみよう。経済産業省などによる調査※2では、DXの取り組み領域に「個別工程のカイゼン」を挙げた国内の製造業は全体の4割を超えた。「つまり、全体の4割の企業は売上減少の可能性が高いのです。DXで先行する企業との目線の違いは、国内外の企業との厳しい市場競争を乗り越える上で大きな障壁となるのではないでしょうか」とNECソリューションイノベータの勝見 浩之氏は話す。
従来のカイゼン活動は「作れば売れる」時代背景を前提としていることが多いため、需要変動が予測しづらい状況下では企業全体にとっての大きな無駄を生んでしまう可能性が高い。目まぐるしく環境が変化するVUCAの時代においては、カイゼン活動が裏目に出ないように注意が必要だ。
「これまで製造業では、経営層からトップダウンで降りてくる前年比何%アップといった『どんぶり勘定』の目標数値に対し、各部門が実績ベースで努力目標を積み上げて計画を策定することが一般的でした。全社の高い目標と各部門の計画をすり合わせる際には『気合いで達成する』といった要素がどうしても含まれます。この『きしみ』を、カイゼンをはじめとする努力によって現場は何とか解決しようとしてきたのです」(勝見氏)
ただ、これにより問題が発生している。長年にわたり運用されてきた個別最適を前提とした業務プロセスや慣行がVUCA時代にそぐわないと分かっていても、修正できないまま問題が拡大するケースが多いのである。このような状況を打破するためには、経営層から現場まで一貫して全体最適で考えることが肝要だ。高品質な「データ」によって企業の現状や目標を正しく把握し、データに基づく経営指標を共通言語として全社レベルで意思疎通を行い、足並みのそろった取り組みを推進できる「データドリブン経営」を実現することが不可欠になっている。
※1 デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負 報告書/総務省
※2 2024年版ものづくり白書(ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告)/経済産業省、厚生労働省、文部科学省
では具体的に、データドリブン経営を実現するために必要な取り組みとはどのようなものなのか。
まず重要なのは、DXやデータドリブン経営に取り組む意義・目的を明確にすることだ。次に、その背景にある課題感や思い、ビジョン、ゴールを関係者間で共有する。このとき、DXとデータドリブン経営を分かりやすい言葉で意味付けしておくことも大切だ。例えば、「DXはデジタル技術を駆使して競争力のあるビジネスをつくり出すこと」「データドリブン経営は企業の稼ぐ力を維持し続けるために高品質なデータを駆使してマネジメントを行うこと」といった言葉をキーパーソン自らが発信し、ステークホルダー全員の“共通認識”と“腹落ち感”を醸成しながら、ビジネス戦略を起点とした全社の取り組みを進めていくのである。
さらに、全社整合のとれた中長期の計画を策定することや、現場から経営までの各層・各部門で発生する様々なデータから環境変化や計画変動をタイムリーに捉えて計画を調整できるようにすることも欠かせない。状況に合わせて速やかに事業施策や業務内容を軌道修正したり、問題が表面化する前に財務面の影響を踏まえたリスク対策を講じておく必要があるからだ。
「デジタル技術を駆使して、組織横断的にデータを活用しやすい仕組みを構築することで、データ主導の意思決定を実現できます。ただし、理想の仕組みを一気に完成させることは様々な制約があり難しいケースがほとんどでしょう。自社の状況を把握して目的を明確化し、中長期の目線で優先付けを行い、小さな成果を重ねながら、段階的につくり上げていくことが重要です。それによって、経営と現場のひずみを生まない、真のデータドリブン経営を実現できるでしょう」と勝見氏は強調する(図1)。
収益に影響するビジネス環境の変化や様々なリスクの可視化が可能になる。変化を予測したり、リスクへの対応策をシミュレートしたりすることも可能だ。生産・物流・在庫の最適化を実現できる
ビジネスのあらゆる局面で、データに基づく経営判断やリスクマネジメントが可能になれば、外部環境の変化による収益へのマイナスインパクトを減らせる。健全な事業活動を維持・継続することが容易になるだろう。そのための仕組みを整えることが、製造業各社のミッションになっている。
NECソリューションイノベータは、このようなミッションを抱える製造業を、トータルに支援するサービスを提供している。
例えば、サービスメニューの1つである「データドリブン経営推進ワークショップ」は、ワークショップ形式でデータ活用の目的や効果を学んだり、ビジネス目標の設定や経営戦略に基づく管理指標づくりを行ったりする実践的な内容だ。これにより、データドリブン経営に対する共通理解や前向きな意思を組織内に育み、データドリブン経営の成功に向けた着実な一歩を踏み出せるようにする。
また、データドリブン経営の仕組みづくりやシステム化で悩む企業には「データドリブン経営支援サービス」がお勧めだ。このサービスは、NECソリューションイノベータ独自のメソッドを駆使して、データドリブン経営に必要なシステムづくりの企画・検討段階からサポートするものである(図2)。「組織内に散在するデータを統合管理する仕組みや、データに基づくマネジメントプロセスを定常的に回す仕組みなど、必要なシステムの構想を支援することで、お客様が目指す“ありたい姿”の実現をサポートします」(勝見氏)。もちろん、その後のシステム構築から運用までを一貫して支援できる点も同社の強みだ。
基幹業務システムの整備、データドリブン経営に必要な仕組みの整備、そしてデータ活用の高度化という大きく3つのステップで顧客企業の取り組みを支援する
既に多くの支援実績がある。ある機械メーカーでは、散在していたデータを集約し、適切な“意味付け”を行うデータ活用基盤を構築した。製造工程の原価に加え、案件に関わる付帯コストまでを可視化できるようになり、案件全体の採算性の確認スピードが大幅に向上したという。また、ある部品メーカーは、生産管理システムのデータを収集・分類・分析する統合基盤を構築。環境変化に応じた原価の変動を即座に計算し、取引先とのタイムリーな価格交渉を実現している。
「さらに、変革を推進する人材の育成も支援可能です。人と企業、両方の成長をサポートするトータルなソリューションによって、お客様のDXを後押しできればと思います」と勝見氏は付け加える。
山積する課題を解決し、製造DXを加速する。取り組みを進める製造業各社にとって、NECソリューションイノベータは心強いパートナーになるだろう。
