

業務ごとに様々なシステムを導入した結果、データがバラバラに保存されてしまい、そのデータをほかのシステムで利用する際には人の手による再入力が必要になる――。このような問題に悩んでいる企業は多いはずだ。
営業部門が作成した見積書や、法務部門が作成した契約書、顧客から受け取った注文書、財務部門が発行する請求書が、それぞれ個別に管理されているケースはその一例だ。そのままでは重複した情報が誤った場所に複製される危険性があり、情報が一貫性を持った形でデータ化されていないため、データ集計・分析などの後続業務への利活用が難しくなる。
人材や資金力のある大企業であれば、この問題を各アプリケーションのモダナイズ(近代化)で解決する、というアプローチも考えられる。しかし、人やコストといったリソースが限られる中小企業にとっては、ハードルが高い。
「この問題を解決できる可能性があるのが、生成AIの活用です」と語るのは、オリックスの長澤 拓馬氏だ。生成AIには様々な特徴があるが、業務プロセスの効率化で特に注目すべきなのが、テキストファイルや画像といった「非構造化データ」の扱いに秀でていることだと指摘する。「企業が保有する情報のうち、従来のITシステムが扱える構造化データは2割程度に過ぎず、残りの8割が非構造化データと言われております。これを生成AIで構造化データに変換できれば、これまで人間が目視や手作業で行ってきたデータ転記業務等が不要になります」。
これが可能になれば、システム化が難しかったイレギュラーな業務も、システム化への道が拓けることになる。これまでは「大量・定型業務」を中心にシステム化が行われてきたが、そこから外れる「少量多品種・非定型」の業務も自動化・効率化できるのだ。「つまり生成AIをうまく活用することで人の手で補ってきた『ロングテール』業務から開放される可能性があるのです」(長澤氏)。
ただし、生成AIを活用しようといってもこれも簡単ではない。日経BP総合研究所イノベーションICTラボの調査(【出典】 『DXサーベイ 2025-2027』日経クロステック/ 日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ)によれば、全社的に生成AIを活用している企業の割合は全体で5.6%、大企業で19%であるのに対し、従業員300人未満の中小企業ではわずか1.3%しかない。
こうした課題の解決に向け、オリックスではビジネス文書管理サービス「PATPOST」を提供。生成AIを活用した文書管理の実現を支援している。
「PATPOSTという名前は、パッとポストすればいい、というコンセプトから命名しています。手書き文書を含む様々な文書をアップロードするだけで、生成AIをフル活用した高精度なAI-OCRがデータ化を行い、検索や後業務での活用が行いやすくなります」と長澤氏は語る。
PATPOSTは2023年5月にリリースされたクラウドサービス。クラウド上のストレージに文書をアップロードするだけで、取引先や取引金額、取引日などの項目を自動でデータ化できる。また社内のみならず、PATPOSTを使用している社外の税理士とも、シームレスかつ効率的な情報共有が可能※3だ。さらに、2024年1月から全ての事業者において義務化された改正電帳簿保存法(電帳法)にも対応済み※4で、電帳法が求める検索要件や改ざん防止要件もクリアしているという。
「2023年12月には生成AIによって、手書きや画像からテキストを抽出するAI-OCRをさらに強化。東京大学・松尾研究室から生まれた生成AIなどのAIソリューションの提供に特化したスタートアップ、株式会社neoAIと共同研究を行うことで、98%※5というデータ抽出精度を実現しています」と長澤氏は話す。
このPATPOSTを活用することで可能になる業務フローを示したのが図1だ。各部門が作成した文書をPATPOSTにアップロードすることで、文書内の各項目が「意味」によって抽出・整理され、次の業務に生かしやすくなる。つまりDXの基盤となる文書の電子化・データ化を一気に進めることができ、業務プロセス変革の推進が容易になるわけだ。
各部門が作成した文書をPATPOSTにアップロードすることで、文書内の各項目が「意味」によって抽出・整理され、次の業務に生かしやすくなる
「既存の業務システムをモダナイズするというのも重要なアプローチですが、その前にPATPOSTのような共通基盤を活用することで、最小限の時間とコストでDXに向けて踏み出すことが可能になります。各社が導入されているそれぞれのシステムでデータを構造化するのではなく、汎用的な部分を構造化するからです」(長澤氏)。
そしてPATPOSTでもう1つ注目すべきなのがコストである。文書の一元管理に加えて、生成AIや高精度AI-OCRの活用による電子データ化や構造化、さらには電帳法対応も含め、1IDあたり月額980円(税抜)で利用することが可能だ。しかもストレージ容量は無制限※6、AI-OCR機能も付いているという(図2)。
ストレージ容量無制限。AI-OCRも利用でき1IDあたり月額980円(税抜)で利用可能だ。5IDでも年間約6万円(税抜)。中小企業や部署単位でも手軽に導入できる
「5IDで月間1000枚の帳票を格納したケースで試算※7 すると、一般的なストレージサービスでは年間30万円(税抜)程度、一般的な会計ソフトや経費計算/請求SaaSサービスでは年間25万円(税抜)程度かかります。これに対してPATPOSTなら年間約6万円(税抜)。これなら中小企業の皆さまや部署単位で、手軽にご採用いただけるはずです」と長澤氏は話す。
このような機能性と低価格 が評価され、2023年5月のサービス開始から1年足らずで1,000社※8 を超える企業が導入。その中から長澤氏は、2社の事例を紹介する。
1社は京王ストアだ。ペーパーレス化により授受する電子帳票が増加すると見込まれていたが、そのコスト負担がネックになっていた。そこで提案されたのがPATPOSTだった。低コストであることに加え、既にオリックスグループ内でも運用されていることを評価。導入によって電帳法にも円滑に対応でき、シンプルで簡単なUIによって担当者の手間も少なく運用できているという。
もう1社はコンサルティング業務を行っているグランサーズだ。同社のクライアントの中には紙文化の企業が多く、オンラインストレージを使ったことがないクライアントとのやり取りに時間がかかっていた。この問題を解決するためPATPOSTを導入、操作がシンプルで使いやすくストレスもないため、クライアントからも「使いにくい」などといわれることなく、円滑な資料の共有が可能になった。また目的の資料を効率よく検索できることや、セキュリティーが高いことも評価されている。
「PATPOSTは現在も継続的に機能強化が行われています。2024年12月には、PDF画像や手書きの表の中からデータを抽出してコピー&ペースト可能にする『表抽出機能※9』を追加しました。例えば手書きの注文書データから明細を抽出することで、従来人が目視で確認し手打ちで行っていた受発注システムへの転記作業を効率化できます」(長澤氏)。
こうしたサービスをうまく活用すれば、リソースが限られた中小企業でもDXの第1歩目を進めることができるはずだ。
※1 法人プランの場合、個人事業主は、利用料金や条件が異なる。詳しくはこちら。
※2 1IDあたりの税抜価格。契約は3IDから。契約期間は1年。期間中の解約不可。契約終了日の30日前までに解約通知がない場合、自動更新。初年度の1ヵ月は無料で利用および解約が可能で、無料期間経過後は11ヵ月分の請求が発生。
※3 共有先がPATPOSTを利用している必要あり。
※4 電子取引データ保存の場合は、別途、訂正・削除防止に関する事務処理規程の制定・遵守が必要。
※5 精度はオリックス調べ(オリックスグループで取り扱う電子文書の検証結果。手書き文書を含む場合は精度95%程度)。
※6 1IDあたり年間12,000カウント付与。カウント数の上限を超えてアップロードなどをする場合には、契約IDを増やす必があり。処理カウントについては、よくあるご質問「処理カウントは何を基準に加算されますか」(https://patpost.jp/faq/xATC28sw)に記載。複数ファイルを一度にアップロードする場合の上限容量は合計5GBと。1ファイルあたりのファイルの容量は最大50MB程度。 個人事業主は、利用料金や条件が異なる。詳しくは、https://patpost.jp/priceに記載。
※7 金額比較条件は利用ID:5ID、帳票枚数:1,000枚/月。2024年11月7日時点。
※8 2024年4月1日時点の有償契約社数。
※9 対象の拡張子は「.pdf・.jpg・.png」(拡張子が大文字の場合も対応)
