

現在もSAP ECC6.0を運用している企業は、移行に向けてどのような考えを持っているのだろうか。こうした考えのもと、電通総研では2023年9月から2024年1月にかけ、日本国内のSAPユーザーを対象に行った意識調査を行った。
有効回答数は282社で、内訳はSAP ECC6.0ユーザーが206社(73%)、SAP S/4HANAユーザーが76社(27%)となっている。前回2022年度の調査(有効回答数233社)でSAP S/4HANAユーザーの割合は約16%だったことから、1年間で10ポイント以上の伸びを示したことになる。さらに電通総研では現在、2024年度の調査結果を集計している過程にあり、これによればSAP S/4HANAユーザーの割合は約40%に達する見込みだ。
しかし裏を返せば、まだ半数を大きく超える企業がSAP ECC6.0にとどまっているわけだ。電通総研の豊崎 達也氏は、「すべてのSAPユーザーのSAP S/4HANA移行にはまだまだ長い道のりとなりそうです」と語る。
一方、既にSAP S/4HANAの移行を終えた企業は、どのような方法をとったのだろうか。SAP ECC6.0から移行済みのユーザーは36社で、その約80%を占める27社が採用したのがコンバージョン方式だったという。
「アドオンプログラムおよび過年度データをすべて引き継ぐことができるメリットを重視する中で、コンバージョン方式が主流となっていることがわかります」(豊崎氏)
ただしコンバージョン方式を採用した場合でも課題はある。同調査の過去2年間の推移からは、「現場業務への影響」と「アドオン改修/構築の品質」に対する懸念が急伸している(図1)。
SAP S/4HANA移行に際して、アドオンおよび過年度データを引き継ぐことができることを重視し、コンバージョン方式を採用する企業が大半を占める。しかし一方では、「現場業務への影響」と「アドオン改修/構築の品質」に対する懸念が急伸している
「これらの課題解決に向けたポイントは2点あります。1つは、『SAP S/4HANAでSAP ECC6.0と同じオペレーションが継承できるかを効率的に確認すること』。もう1つは『影響の大きいSAP ECC6.0のアドオンを迅速に見極めて改修すること』です。また、近年では移行先プラットフォームとしてRISE with SAPを選択する企業も増えていますが、この場合も、頻度が増えるSAP S/4HANAのバージョンアップ時に同じ課題が発生することも忘れてはなりません」(豊崎氏)
このポイント2つを踏まえ、電通総研が推奨するのがSAPアップグレード/コンバージョン分析&テストソリューション「Panaya(パナヤ)」の活用である。

Panayaは、SAPのアップグレード/コンバージョンプロジェクトに最適化されたSaaS型デリバリープラットフォーム。世界65ヶ国でFortune 500の1/3を含む4,000社以上が利用しており、日本国内でも400社以上へと導入実績を伸ばしている。
「SAP R/3からSAP ECCへのアップグレードが盛んに行われた時代からの実績があります。当初からAIとクラウドのパワーを最大限に活用する設計思想のもとバージョンアップを重ねてきました」とPanaya Japan カントリーマネージャーの山岡 英明氏は語る。
Panayaの特長は、ワンプラットフォームに強力な3つのソリューションが用意されている点だ。1つ目が「影響分析エンジン」である。これはSAPのバージョンアップや移行に伴うシステムや業務への影響を分かりやすく分析・明示するもの。2つ目が「スマートテストプラットフォーム」。こちらはExcelを用いて手動で記録していたテスト証跡に関わる作業を自動化する機能や、自動テストレポート機能などを備えている。そして3つ目が、ノーコードテストスクリプト生成や高度なスクリプト編集、自律的スクリプト修正などを可能とする「次世代テスト自動化エンジン」だ。
「この3つのソリューションを複合的にご活用いただくことで、SAP S/4HANA移行プロジェクトの生産性を高め、期間短縮とコスト削減を実現し、SAPユーザーのDX推進を後押しします」と山岡氏は語る。
実際、その効果は折り紙つきだ。熟練のコンサルタントでも1ヵ月以上かかるような精緻な影響分析の結果をわずか48時間で提示。また、アドオンにも対応する自動コード修正機能は90%以上のコードに対応している。さらに、スマートテストプラットフォームは、従来のExcelを用いたテスト証跡管理と比べ、実績ベースで40%の工数削減を実現しているという(図2)。
Panayaは生成AIを含む最新AI技術を最大限に活用することで、SAP S/4HANA移行プロジェクトの生産性を高め、期間短縮とコスト削減を実現し、SAPユーザーのDX推進を後押ししていく
どうしてこうした効果を生み出すことができるのか。それは先に触れたようにPanayaには髄所に最新AI技術が活用されているからだ。
まず影響分析では、人手に依存していたアセスメントをAIで省力化・自動化する。これまでは各所に点在する数万点にも及ぶ公式文書(不具合ノート)の情報を収集し、SAPエキスパートが分析する必要があった。この作業をAIが代替するわけだ。
「点在する不具合ノートを生成AIが収集・分析し、その要点をまとめたサマリー文書を作成。さらにユーザー企業が実際に使用しているトランザクションを踏まえたフィルタリングを行うことで、行うべき作業内容を絞り込んで提示します」(山岡氏)
次に自動コード修正機能については、コード修正の前にAIを活用してアドオンそのもののクレンジングを行う。
「使われていない不要アドオンを仕分けするほか、SAP側での対応状況も踏まえたSAP S/4HANAの上位互換チェックを行い、ユーザー企業に修正提案を示します。その上で生成AIがコードレビューから一括修正まで一連の作業を自動化し、品質の高い修正コードをSAP開発機に送ります」と山岡氏は話す。
もちろんテスト工程においてもAIが効果的に活用されている。これまでのテスト工程でボトルネックになっていたのは、テスト実行時間もさることながら、テストの計画・準備から担当者のアサイン、テスト実行、バグ管理、進捗管理に至るプロセスで発生していた付帯作業だ。メールや電話、Excel管理、ドキュメント作成など手作業に依存していたこれらの付帯作業を、Panayaのテスト管理機能が劇的に効率化するわけだ。
そして最終的に、AIを活用して変数化やテスト合否チェック、スクリプト編集、自動修正などの特徴を生かしたテスト自動化へとつなげていく。
「こうした効率化・自動化によって、2年以上を要していたSAPのアップグレードプロジェクトを仮に1年以下に短縮できたなら、ユーザー企業はそこから生み出された時間とリソースを新規ビジネスの戦略立案や計画に投入することが可能となります」と山岡氏は強調する。
経営の高度化を支える変化に強いIT基盤であり続けるために、今、SAP S/4HANAへの移行が求められる。このプロジェクトを乗り越えなくてはならない、義務的なハードルやリスクとしてとらえるだけでなく、IT管理高度化を実現するデジタル変革の絶好の機会と位置付けて取り組むことが肝要だといえるだろう。
※掲載の情報、肩書などは2024年11月の講演時点のものです。