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データセンターの空調技術革新が国の成長を左右する
「資源小国」ニッポンが
AIで社会変革を起こすには?

AIの急成長は、社会変革と同時にエネルギー消費の拡大を内包する。このトレードオフを解消するには、データセンター(DC)の高効率化が必須だ。経済産業省資源エネルギー庁は新設DCのエネルギー効率水準「PUE1.3以下」を策定して達成を求め、テナント型事業者も規制対象とした。資源の乏しい日本で省エネに優れた社会環境をいかに構築するか。同庁の福永佳史氏に政府方針と施策、空調への期待を聞いた。

※ PUE(Power Usage Effectiveness、電力使用効率):DC全体の消費電力を、サーバーなどIT機器の消費電力で割って算出。1.0に近いほど高効率とされる。

2002年東京大学卒業、同年経済産業省入省。07年ハーバード大学ロースクール修了、08年タフツ大学フレッチャースクール修了(国際関係学修士)。貿易経済協力局貿易振興課長、通商政策局経済連携課長などを経て25年から現職。

日本の電力安定供給を使命とする電力広域的運営推進機関では、DC・半導体工場の新増設により、全国合計で2024年度と比較し、34年度には715万kWの増加を見込む(図1)。715万kWは大型原子力発電所(約100万kW)7基分に相当する。

2002年東京大学卒業、同年経済産業省入省。07年ハーバード大学ロースクール修了、08年タフツ大学フレッチャースクール修了(国際関係学修士)。貿易経済協力局貿易振興課長、通商政策局経済連携課長などを経て25年から現職。

DCの新増設はAIの急成長を支える。今やAIは社会変革や産業競争力の基盤を担う存在だが、「資源小国」の日本ではAIにエネルギーを無尽蔵に使えるわけではない。

AIの進化と消費電力抑制のトレードオフをいかに解消するか。福永氏は政府の方向性を話す。「脱炭素電源の確保をベースに、DCが一定のエネルギー効率を満たすための規制と、省エネを実現する技術開発支援の両方に取り組んでいきます」

●図1 DC・半導体工場新増設に伴う最大需要電力(全国合計)新増設に伴い全国合計で、2024年度と比較して2034年度には715万kWの最大需要電力増を見込む(出所:電力広域的運営推進機関「全国及び供給区域ごとの需要想定(2025年度)」の資料を基に作成)

資源エネルギー庁は26年度から、規制の追加措置を講じる。変更点の一つが、PUEに関する新たなエネルギー効率水準の策定だ。

「現在、ベンチマーク制度では30年度を目標に、事業者平均でPUE1.4以下の達成を求めています。今回は同制度とは別に、事業者平均ではなく29年度以降新設のDCごとに満たすべきエネルギー効率水準として、稼働して2年経過以降のPUE1.3以下の達成を求めます。また、DC事業の目標、方針、実績を可視化し、その一部公表を求めます。DCにおける脱炭素の取り組みは、法的責任を果たすと共に、企業姿勢の表明、コスト削減につながるものです」(福永氏)

テナント型DCも規制対象に
「小数点以下」を小さくせよ

DC事業は、建物・付帯設備(サーバースペース等)を保有して貸し出すハウジング型と、サーバーを保有するテナント型、建物・付帯設備とサーバーを共に保有するオーナー型に分かれる。従来、テナント型は建物・付帯設備のエネルギー管理権原がないことから、ベンチマーク制度の報告対象外としてきた。今回、ベンチマーク制度及び追加措置ではテナント型DCも対象となる(図2)。方針転換の理由を福永氏は説明する。

「保有IT機器の稼働率や利用方法などはテナント側に決定権があり、それらはPUEに影響を及ぼします。また温度設定など、付帯設備の利用権限もテナント側。さらにテナント側が冷却設備を保有するケースも想定されます。DC全体の省エネでは、ハウジングとテナントの協力が欠かせません」

●図2 ベンチマーク制度の対象範囲拡大今回の追加措置ではテナント型DC事業者(赤枠)をベンチマーク制度の対象に追加。DC全体の省エネ促進を加速させる狙いだ(出所:経済産業省「総合資源エネルギー調査会 省エネルギー・新エネルギー分科会省エネルギー小委員会 工場等判断基準ワーキンググループ 中間取りまとめ(2022年3月24日)」の資料を基に作成)

PUEは1.0に近づくほどに、電力がIT機器のために効率的に使われていることを示す。PUE1以下の小数点が表す数字で大きな割合を占めるのが、空調など付帯設備に要する消費電力だ。ベンチマーク制度対象事業者の平均PUEは1.7。現状の課題は、この「0.7」をいかに小さくするか。

「冷却設備を所有するハウジング事業者には、消費電力削減に向けて空調機の配置など運用の工夫が求められます。一方、テナント側でもサーバールーム内の温度最適化、空気循環を図ることで過剰な冷却を抑制し省エネを徹底できます。この相乗効果でPUE1.3以下を目指すというのが狙いの1つです」(福永氏)

DCの消費電力を抑制
注目のAIスマート空調

NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)では、省エネ技術の研究開発・社会実装促進プログラムを実施。その中で、DC施設内における空調機器などの高効率化に関する技術開発を重要技術と位置付ける。冷却液の入った液槽にサーバーを丸ごと浸して冷却する液浸冷却など空調の技術革新が進む。

空調のマネジメント領域ではAIによる革新が起きている。AIを活用したスマート空調は消費電力を抑制できる。室内の温度分布をリアルタイムに解析し最適化を図る。さらに各種機器の負荷状況や外気温、人流、温度、CO₂濃度、着衣量などに応じて空調を自動制御し、高い省エネ効果と快適性を両立する。

福永氏は、国際エネルギー機関(IEA)による25年版報告書「Energy and AI」について言及する。「同報告書の中で『Energy for AI』と『AI for Energy』というキーワードが出てきます。前者はAIによるエネルギー需要増大、後者はAIを活用したエネルギー消費最適化を表しています。エネルギーがなければ、AIは存在できません。また生産設備の稼働最適化、オフィスやご家庭におけるエアコンの自動制御など、省エネに向けた変革もAIなしでは進みません。AIの2つの側面は相互に関わり、表裏一体である点が重要です(図3)」

●図3 DCからのCO₂間接排出と、2035年までのAIによるCO₂排出にかかる影響分析AI活用による省エネにより、DC由来のCO₂排出増を相殺できる可能性がある。一方、例えばAIの進展で自動運転が普及すると、公共交通機関の利用減によりCO₂排出増となり、相殺できない恐れも指摘される(リバウンド効果)。今後の展開は制度設計と技術導入の選択によって大きく左右される。行政の果たす役割も大きい(出所:IEA「Energy and AI」の資料を基に作成)

AI社会の発展は空調の出番を多くする。その活用拡大と電力消費抑制を両立するために、スマート空調の普及は待ったなしだ。空調は「社会のためのAI」を支えていく。

Contents

総論

データセンターの空調技術革新が国の成長を左右する「資源小国」ニッポンが
AIで社会変革を起こすには?

高砂熱学工業

ASHRAE主催アワードで高評価、IIJの白井データセンターに見る施工から運用まで伴走続ける
「空調ファースト」の真髄

新菱冷熱工業

「イノベーションハブ」で実際に試せる、研究できる!ドライルーム需要は活況
温度と可視化の2軸で省エネ

新日本空調

6つの運転モードから熱源設備を自在に制御建物の省エネ・運転コスト削減
「最適解」をAIで導き出せ!

日立プラントサービス

分野を越えて知見を生かす、それが「真のOne Hitachi」「Lumada 3.0」に「HMAX by Hitachi」
AIなど技術進化で事業をさらに加速

三機工業

5時間の作業を30分に圧縮、フロントローディングに前進BIM活用で設計施工に
「前倒し」革命起こす

朝日工業社

100年の技術を礎に、新研究所をつくばに開設「農業」も「におい」対策も
空調と情熱で進化する!

テラル

作業環境改善で人材確保を! 省エネ、省コストで実現“暑い工場”は経営リスク
気流改革がもたらす三つの価値