クラリベイト
売上高「5兆円」規模に到達、稼ぐ力の中枢
クリエイティブな知財部門へ
ダイキン工業の選択に迫る
2026年3月期連結決算の売上高が5兆円超と、過去最高を記録したダイキン工業。同社の稼ぐ力を支えているのが技術力であり、知財だ。本誌の「特許価値成長力ランキング2025」でも2位につけた同社の、事業に貢献する知財戦略とは。課題と解決策、新たな仕組みとその活用について、知的財産部長の安部剛夫氏に聞いた。
■図1 ダイキン工業と知財戦略ダイキン工業は自社の成長戦略テーマの実現に向けて、積極的な知財活動を推進することを掲げる
ダイキン工業の知財部門は近年、知財を成長戦略テーマの実現(図1)に生かすべく、従来の知財業務の枠を飛び越える「クリエイティブな知財部門」を掲げて活動してきた。部門の基本機能である発明の権利化だけでなく、自社の事業に貢献するための取り組みを重ねる(図2)。高い目標を果たすためには、全社的な知財情報の集約や管理、分析が可能な仕組みが欠かせない。
■図1 ダイキン工業と知財戦略ダイキン工業は自社の成長戦略テーマの実現に向けて、積極的な知財活動を推進することを掲げる
同社は170カ国以上で事業を展開し、海外売上比率は84%。多くの日本発グローバル企業と比べても高い海外事業比率を誇る。主力の空調事業は地域の気候条件と関連が深く、生産拠点は130拠点以上に上る。研究開発拠点も世界中に広がり、その結果、研究や特許の情報が各国に散在していた。安部氏は「世界各地で新たな技術が生まれてきます。そうした情報を適切につかめなければ、知財活動を戦略的に進められません」と語る。
■図2 事業に貢献する知財ポートフォリオの構築・強化ダイキン工業の知財部門は「能動的な知財活動」により、研究開発部門・営業部門と一体となってグローバルな知財ポートフォリオの拡充・強化を進め、目覚ましい成果を上げてきた
特に工数を要したのが、特許出願後の情報管理である。権利保持には莫大な費用がかかり、取捨選択が求められた。加えてグローバルに事業を展開する故に、どこの国に何の特許を出願すべきかの判断は的確に行いたい。そこで特許の付随情報や履歴などを含めた情報管理が重要となる。
ダイキン工業 知的財産部長 安部剛夫 氏
「長年利用してきた国産ベンダーの知財管理システムは、日本発の技術に関する特許情報管理に問題はなかったものの、グローバル展開ができないという課題がありました。システムをかなり自社向けにカスタマイズしていたために柔軟性が低く、多言語対応もなく、スピード感も不足していた。クリエイティブな知財を目指すために新たな視点で情報を活用しようにも、限界がありました」(安部氏)
課題を感じていた頃、その国産ベンダーから急転直下、事業の撤退を告げられる。そこでグローバル展開が可能な新たなシステムを検討することとなった。
「IPランドスケープ」は、弁理士法人正林国際特許商標事務所の登録商標です。
優れた操作性・柔軟性と
強固なセキュリティーを評価
選定に当たっては5社の製品・サービスを検討。最終的にクラリベイトの知財管理システム「IPfolio」を含む2社が残り、両製品をトライアルで実際に利用するメンバーに使ってもらい意見を聞いた。その結果、「当初のグローバル展開が容易なのはもちろん、IPfolioはパッと見て分かりやすく、案件の場所もすぐに探し出せる。優れたUI(ユーザーインターフェース)や柔軟なワークフロー設計は、メンバーからも支持されました。導入前の業務が違和感なく引き継げる点も評価し、IPfolioに決定しました」(安部氏)
同社はセキュリティーにもこだわった。知財という企業にとって最重要ともいえる情報を管理する以上、防御が脆弱では話にならない。その点IPfolioは、極めて堅牢なセキュリティーを誇るSalesforce上に構築されていることも決め手の一つだった。
2024年に導入を決定し、データ移行を開始。クラリベイトからの入念なサポートを受けながら、必要な機能を実装していった。移行はスムーズに進み、2026年5月18日から利用を開始している。
導入に当たっては、本社知財部門のメンバーや各開発部門の知財担当者、さらには連携する特許事務所など利用が見込まれる人々へ、役割別に説明会を実施。移行後の円滑な利用促進に向けた取り組みを早くから進めてきた。今後は日本国内での機能強化を推進するとともに、順次IPfolioの海外展開も行っていく。
AIエージェントを利用し
さらなるデータ活用を推進
ダイキン工業はIPfolioの導入によって、さらにデータ活用が進むことを期待している。IPfolioは、Salesforceが提供する生成AIエージェント「Agentforce」が利用可能だ。安部氏は「今後は様々なデータにアクセスしての整理や、グローバルに散在する各種情報の集約・分析などが、もっと容易にできるのではないかと期待しています。AIエージェントを利用することで、より多くの関係者がデータを活用して自分のアイデアをブラッシュアップできる。IPfolioが広く使われるサービスになる、一つのステップだと捉えています」と期待を語る。
さらに安部氏は、生成AIによる翻訳機能にも期待していると続ける。同社の開発拠点はタイなど英語以外を主要言語とする国にも広がる。「英語があまり得意でないような方々との間でも、グローバルなコミュニケーションを円滑に行える。そうした点でもIPfolioには大いに期待しています」(安部氏)。今後同社で海外展開が進めば、言語の壁を越えたグローバル規模でのスピーディーな連携も容易になるはずだ。
これまで不十分だったという、特許事務所とのデータ連携にも期待をかける。障壁の一つがセキュリティーリスクだった。「セキュリティーが堅固なSalesforce上のIPfolioなら安心です」と安部氏。
最後に安部氏は、「まずはデータを蓄積する仕組みを構築できました。今後の取り組みは、これをいかに活用するか。知財部門のメンバーには技術情報が集まるIPfolioを活用した技術部門へのフィードバックや、より効果的な権利の取得方法にもこだわり、さらにグローバルな視野を持ってほしい。技術情報の集積地である知財を基に、新たな価値をクリエイトしていきたいと思います」と抱負を述べた。
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