知的創造サイクルラボ
若き「知財の星」と変える、日本の知財マネタイズ
タフな国際訴訟もお任せ
休眠特許を掘り起こす!
日本中に埋もれる休眠特許。これを掘り起こして収益に変える知財マネタイズへの関心が高まっている。しかしマネタイズの過程では、海外企業とのタフな交渉や訴訟が時に避けられない。多くの日本企業が二の足を踏む中で、2024年創業の新会社、知的創造サイクルラボが課題解決に名乗りを上げた。
■図1 「知的創造サイクル」概要図特許を活用することで、研究開発などに投資した初期費用を回収し、次の投資につなげるサイクルを回す
2021年のコーポレートガバナンス・コード改訂を機に、知財活用に関する情報開示が求められ、企業の意識も変わってきた。しかし係争を好まない日本企業は、タフな交渉や訴訟が付き物の知財マネタイズに、積極的に取り組む動きは少ない。結果、保有費用がかかるばかりの休眠特許を、多くの企業が抱える。知的創造サイクルラボ(ICCL)が目指すのは、ここの課題解決だ。
■図1 「知的創造サイクル」概要図特許を活用することで、研究開発などに投資した初期費用を回収し、次の投資につなげるサイクルを回す
ICCL代表取締役の小川一氏は「休眠特許をマネタイズし次の開発に向けた原資に変え、イノベーションを生み出す。日本の企業や大学がこのサイクル(図1)を回せるようにと、知的創造サイクルラボという社名にしました」と語る。
ICCLは特許活用会社IP StreamとPEファンド運営会社ユニゾン・キャピタル経営メンバーとの協業で、24年に設立。ICCLとIP Stream両社のトップを務める小川氏は違いを説明する。
「IP Streamの主業務は知財コンサルティング。あくまでお客様の後方支援です。一方ICCLはお客様が持つ特許の権利を移転し、リスク込みで引き受ける。その上で収益はお客様と分配します」
小川氏はICCLの立ち上げ以前から、ユニゾン・キャピタルのマネジメント・アドバイザーとして知財の評価に協力してきた。同社でパートナー/CFOを務める山口仁氏は振り返る。
「オルタナティブ資産の中でも知財は新種。企業のバランスシートの中でも正当に評価されておらず、コストとして見られがちです。金融機関も知財の評価はできません。そんな知財にこそ手つかずで残された企業価値の領域があると考え、知財の専門家である小川さんに協力を仰いだのが始まりです」
(写真左から)Trailblaze Asset Management CEO & Managing Partner 米田尚輝 氏、知的創造サイクルラボ 代表取締役 小川一 氏、ユニゾン・キャピタル パートナー/CFO 山口仁 氏
リスクも手間も最小に
収益を得られる仕組みあり
このような特許活用会社は日本では少ない一方、欧米には多く市場も活発だ。しかし係争を好まない日本との文化の違いは大きく、欧米の特許活用会社との連携には困難もあった。日本の特性を深く知り、大手以外の案件も積極的に手掛けるところに、ICCLの強みと誇りがある。
同社のビジネスモデルを見ていこう。まずは顧客が保有する特許に対しデューデリジェンス(資産査定)を行う。この時点では費用は一切発生しない。特許を引き受けると権利を移転するが、その時点では価値を評価できないため、移転自体はほぼ無償だ。活用可能性はあるが未使用の「ポテンシャル特許」の場合、例えば市場が未成熟ならライセンス料を下げ、企業の活用を促して市場を育成。「アクティブ特許」に進展するよう動く。既にアクティブ特許だが、他社にフリーライドされている状況では、自社の権利を主張しマネタイズを進め、収益の発生時点で顧客に還元。顧客は基本、リスクも手間も最小にして収益を得られる仕組みだ(図2)。
■図2 知財ガバナンスと資本効率のビフォー・アフター知的創造サイクルラボとの共創により、自社の休眠特許を「稼ぐ資産」に変換できる
ただし海外企業にライセンス料の支払いを主張しても、「訴訟にならないと相手にしてくれません」と小川氏は言う。国際訴訟の際には、該当する特許の技術分野に強く訴訟にもたけた“勝てる”法律事務所の選定が必須だ。訴訟費用も莫大で、時には億単位に上る。これらのリスクを背負って自社だけで挑むのはやはり、ハードルが高い。
ICCLが選んだのは、日本で初の「訴訟ファンド」運用会社、Trailblaze Asset Management(以下、Trailblaze)とタッグを組むことだった。
同社は一般的な商事紛争から国際仲裁、知財、集団訴訟まで、企業が訴訟・仲裁を行う際の費用をノンリコースファイナンス(非遡及型融資)で提供し、勝訴もしくは和解すれば得られた金額からリターンを受け取る。同社CEO & Managing Partnerの米田尚輝氏は24年、当時21歳で同社を立ち上げた。「日本の知財マネタイズ人材も次世代が不足しています。この若さで訴訟ファンドを立ち上げた米田氏は、知財の星です」。小川氏は米田氏をこう評価する。
日本の知財活用に変革を
「知財の星」と共に歩む
Trailblazeのビジネスモデルや意義について米田氏は語る。
「日本では過去にも訴訟ファンドへの挑戦がありましたが、不調に終わりました。国内では訴訟自体が少なく、勝訴や和解に至っても回収額があまり高額でないためです。そこで当社が着目したのが、海外案件への投資。海外での訴訟は費用やリソースの負担が大きく、リスクも伴うため、外部からの資金提供に対するニーズが高いからです。当社は海外で訴訟を行う日本企業と、純粋な海外企業という2つのマーケットへ唯一無二のポジションで参入し、その中で知財案件への投資は積極的に検討しています」
ICCLはTrailblazeとの協業で、訴訟に発展しても低リスクでマネタイズが可能となる仕組みを構築した。Trailblazeとの例ではないが、以前小川氏がサポートした案件では、米国大手企業を相手に提訴までこぎ着けている。
「支援先は200件ほど特許を保有され、毎年1千~2千万円の維持費用が大きな負担でした。その中に優れた米国特許があったので、米国の弁護士事務所及び訴訟ファンドと契約を結んでもらい、一切費用をかけずに提訴。結果、収益化できました」(小川氏)
ICCLは現在、特許を集めている段階だ。Trailblazeとの協業も端緒に就いたばかり。「まずは小さなところから実績を積み上げ、より大きな投資につながるプラットフォームに育てていきたいと思います」と山口氏は展望を語った。






