IP Bridge
大学の知財戦略が変われば、産学連携のあり方が変わる
研究成果を世界へ展開
日本の大学が新たに挑む
積極的な産学連携でユニークな研究を次々と生み出す金沢大学。近年は「未来知実証センター」を設立し、企業や自治体との連携を強化している。同大学は知財戦略および事業化支援のパートナーとして、知財ファンド運営で実績豊富なIP Bridgeと協業。国の施策も追い風に、特許で世界に勝つ新たな挑戦が始まる。
大学の研究はビジネスを目的とせず、公共性が高い。しかし、どんなに優れた技術も、社会で利用されて初めて価値が生まれる。
「大学の知財は初期段階にあるものも多く、基礎研究から事業化までつなげるのは大学単独では難しいのが現状です」と金沢大学 未来知実証センター ステアリング本部 本部長 特任教授の高山卓三氏は話す。
2023年4月に創設された「未来知実証センター」は、産学連携を通じて金沢大学の知財の社会実装を推進する組織だ。
「一般的に大学では、研究成果の事業化経験を持つ人材が十分ではないケースもあります。当センターには、企業で新規事業を担当していたメンバーも参加しています。企業・自治体など幅広いステークホルダーと連携しながら、本学の知財を生かした社会実装を進めています」(高山氏)
(写真左から)IP Bridge コンサルティング事業部 イノベーション事業部 久保純恵 氏、金沢大学 先端科学・社会共創推進機構 法務・知的財産戦略ユニット 特任教授・URA 知的財産マネジメント部門長 齋藤哲 氏、同大学 未来知実証センター ステアリング本部 本部長 特任教授 高山卓三 氏、IP Bridge イノベーション事業部 マネージングディレクター 吉村岳雄 氏、同社 イノベーション事業部 コンサルティング事業部 ディレクター 村松慎吾 氏、同社 コンサルティング事業部 イノベーション事業部 岩武美和 氏
研究開発と実用化をつなぐ
「GAPファンド」で資金調達
その中で、知財戦略や事業化支援の観点から協力している企業がIP Bridgeだ。同社は、国内大手企業の知財を譲り受け、特許を活用し収益につなげるライセンス事業を大きな柱としている。そのノウハウや知見を生かし、大学やスタートアップ向けに、①知財分析②市場分析③ライセンス戦略④競合特許分析⑤事業化支援などを通じて知財戦略の立案・推進を支援している。
IP Bridge イノベーション事業部 マネージングディレクターの吉村岳雄氏は次のように説明する。
「新技術の成果が出るのは3年後か、5年後か、7年後か分かりません。未来の市場を見据え、事業の将来像から逆算して事業戦略と連携した知財戦略を立てることが重要です」
大学における知財の事業化では、研究開発と実用化の間の資金調達も課題となる。それを後押しするのが、科学技術振興機構(JST)による「GAPファンド」だ。IP Bridgeは大学のGAPファンド申請の知財面からの支援も行っている。吉村氏は「IRR(内部収益率)の観点から、事業戦略・知財戦略の実現性を申請書へ落とし込むことが重要です」と支援のポイントを述べる。
金沢大学もIP Bridgeの支援を受け、GAPファンドの採択につなげている。
「大学の教員が研究者として事業計画を考え、社会実装へ挑戦することで、意識改革も進み始めています」と金沢大学 先端科学・社会共創推進機構 法務・知的財産戦略ユニット 特任教授・URA 知的財産マネジメント部門長の齋藤哲氏は答える。
近年、AIや半導体など国家戦略技術分野を中心に、大学発の技術への期待が高まっている。一方で、日本では研究、知財、事業化が分断されてきた側面もある。
「企業側から見ると、これまでは産学連携における大学側の事業化への本気度が見えにくいケースもありました。しかし、大学発ベンチャーの活発化などにより、状況は変わり始めています」と吉村氏は解説する。
■図 IP Bridgeが大学に提供できる価値大学による企業との共同研究や、大学発ベンチャーによる社会実装など、研究、事業化、収益化の「正のスパイラル」を回すための各局面でIP Bridgeはサポートできる
研究とビジネスを結びつけ
「正のスパイラル」へ転換を
また産学連携では、資金だけではなく経営視点も重要になるとIP Bridge イノベーション事業部 コンサルティング事業部 ディレクターの村松慎吾氏は指摘する。
「大学の研究成果を事業として成長させるには、経営人材や成功モデルが重要です。金沢大学の取り組みは、今後の大学側から見た産学連携の、一つのモデルケースになり得ると思います」
高山氏もこう続ける。「海外企業との連携を進めるためにも、大学として知財を守る体制整備は重要です」
大学の研究とビジネスを結びつけ、投資を呼び込み、新たな価値創造へつなげる――。齋藤氏は「シーズとニーズを組み合わせた大学発ベンチャーが活発化すれば、日本の産業構造にも大きな変化をもたらす可能性があります」と期待を寄せる。
知財戦略においては、海外大学との違いもある。「海外大学では特許権を積極的に活用し、時には特許訴訟を起こして収益化する事例もあります。一方で私の知る限り、日本の大学が特許訴訟によって同様に収益化できた事例はありません。しかし、2023年3月に政府が策定した『大学知財ガバナンスガイドライン』では、特許訴訟も選択肢とし得るというメッセージが盛り込まれています。日本でも大学知財を適切に管理・活用する重要性は、さらに高まっています」(吉村氏)
知財をマネタイズし、研究、事業化、収益化、さらに次の研究へ、という「正のスパイラル」への転換が必要と吉村氏は力を込める。「産学連携による事業化に加え、海外の大学のように特許権を行使し収益化することも『正のスパイラル』を上昇志向で回すためには重要な要素です。当社はそのお手伝いをしていきたいと思います」







