レクシスネクシス・ジャパン
生成AI時代、IPランドスケープ®の新境地
技術と事業をつなぐ“橋渡し”とは?
クボタと語る知財戦略とAI活用
知財の価値創造を阻む技術と事業の“分断”が、生成AI時代にあらわとなった。技術・事業・知財をつなぐ「新しい地図」とは。今、求められる人材像は――。グローバルで知財経営に取り組むクボタ 知的財産戦略部 部長の富岡俊輔氏と、レクシスネクシス・ジャパン エグゼクティブ顧問の中村栄氏が大いに語り合った。
──現状の知財経営における課題をどのように捉えていますか。
中村 日本企業には技術力があるのに、事業化が進んでいません。研究開発部門が最新技術をアピールしても、経営側は顧客や市場の動向を見て、市場投入を渋ってしまう。技術と事業の時間軸にずれが生じています。この“分断”によって経営の意思決定が滞り、グローバルとの競争に負けてしまう。本来は知財を含む自社・他社の技術力や中長期的な市場動向を勘案し、技術と事業が共有できる「新しい地図」を見ながら検討すべきですが、できている企業は多くありません。
そこに生成AIが登場し、技術・市場・競合といった情報が一気に統合された結果、見えにくかった技術と事業の“分断”が明確に可視化されました。今はこの分断を放置できない時代で、経営戦略における知財の重要性はさらに高まっています。
富岡 多くの企業に共通するテーマだと感じます。研究成果を積み上げ、知財権利化を進めることに加え、それらを事業の視点で整理し、将来の価値創造と結び付けて提示することが重要です。当社は創業から136年の歴史の中で事業ポートフォリオを発展させてきました。今後の100年を見据える上でも、現行事業に加えて中長期的な視点での研究開発は欠かせません。今は研究開発をグローバル6拠点で進めており、国や地域をまたいだ投資判断の中で、研究の意義や将来性を共通言語で示す重要性がますます高まっています。
(左)クボタ 知的財産戦略部 部長 富岡俊輔 氏2015年にクボタ入社。2023年より現職。グローバルな知財係争や標準必須特許(SEP)対応などの実務経験を背景に、TRL(技術成熟度)とBRL(事業成熟度)の接続を軸とした知財戦略を推進し、事業意思決定の高度化を担う。
(右)レクシスネクシス・ジャパン IPソリューションズ部門 エグゼクティブ顧問 中村栄 氏元旭化成 知財インテリジェンス室 シニアフェロー。2026年より現職。知財情報の戦略的活用に取り組み、IPランドスケープ®の先駆的実践者として知られる。知的財産研究教育財団 知的財産教育協会 客員研究員などを兼務。
技術と事業が同じ地図を
見て議論するには?
──クボタの課題解決に向けた取り組みを教えてください。
富岡 TRL(技術成熟度)とBRL(事業成熟度)の接続に取り組んでいます。TRLについてはNASAの定義を基に、当社に合わせた独自の基準を用いています。一方、BRLは顧客課題や価値提案、ビジネスモデルの妥当性などを段階的に整理する指標です。これらを用いることで、開発側は事業側に対して研究が実用化できる可能性を、事業側は開発側に対して研究がビジネスへ活用できる可能性を、相手の言葉に翻訳して説明しやすくなりました。
中村 TRL・BRLを本格的に運用している日本企業は多くありません。さらに、この2つの指標が連動していなければ、技術と事業の時間軸のずれは解消されず、事業化は進みにくいまま。そこで自社・他社の特許情報や市場動向を俯瞰し、技術と事業が同じ地図を共有できるようにするIPランドスケープ®(IPL)が有効です。
富岡 当社でもグローバルの競合特許を含めた相対評価が可能な、レクシスネクシスの「PatentSight+」※を活用してIPLに取り組んでいます。特許の件数だけでなく、その価値を示す「PatentSight+」の指標を、研究開発成果の価値を多面的に捉える指標の一つとして用いています。
TRLが高くても市場が未成熟、つまりはBRLが追い付かず事業化に踏み切れない場面でIPLを活用すれば、市場や競合とのバランスを客観的に捉えて次の一手を見極めやすくなります。TRLとBRLをIPLが“橋渡し”することで、技術と事業が同じ地図を見ながら議論でき、意思決定にもつなげやすくなります。
──IPLの活用に課題はありましたか。
富岡 IPLには様々な知見が必要です。そもそも知財部員には関連法の理解に加え、技術を読み解く力やデータサイエンスの知識など、幅広いスキルが求められます。当社でもIPLの分析にたけた知財人材の育成には苦心してきました。生成AIでそのハードルを下げられるのではと期待しています。
中村 私はこれを「IPLの民主化」と呼んでいます。従来は専門知識と多くの作業時間を要した情報収集やデータ解析が、生成AIによって誰でも扱えるようになるからです。研究者自身がIPLを使いこなせば、知財部門は作業負荷から解放され、戦略策定といった本来のコア業務に集中できます。
その実現に向け、レクシスネクシスは「PatentSight+」の情報を手軽に活用できる生成AIアシスタント「Protégé(プロテジェ)」をリリースしました。
富岡 先日デモを拝見し、早速活用を進めています。知財に関わる様々な立場の人が自らIPL分析を行い、同じ地図を見ながら議論できると期待しています。一方で、知財部門のメンバーは自らのクラフトマンシップに誇りを持っています。大量かつ複雑な情報の収集や分析、整理といった作業は生成AIに任せ、その分、より高度な専門スキルへ注力することで、存在感を発揮し続けたいと考えています。
中村 生成AIの活用が進むほど、知財部門には“橋渡し”の役割が求められます。仕組みやAIだけでは、技術と事業のギャップを埋めることはできません。その役割を担う“橋渡し”人材には、知財リテラシー、事業・経営リテラシー、データ・AIリテラシー、グローバル折衝力、判断力、そして技術と市場の時間軸を同期させ組織を動かすBRL同期推進力という6つのリテラシーが必要だと考えています。クボタさんの知財部門では、どのような人材育成をされていますか。
※レクシスネクシスの特許情報分析ソリューション「LexisNexis® PatentSight+™」
生成AI時代に求める
知財人材とは?
富岡 知財部門には様々なスキルが求められ、全部にたけたスーパーマンはいません。従来は個別に独立した専門役割を担う集団でした。それを今は、複数の役割を持つ個人を組み合わせ、チームで機能する組織に変えようとしています。複数ポジションを高度にこなせる選手を表すサッカー用語から、「ポリバレント人材」と私は呼んでいます。
中村 高度な専門性を複数備えた、多様な人材をマネジメントするために最もベースとなる能力がEQ(感情知性)です。自己を客観視して衝動を制御し、モチベーションを保ちながら傾聴力を持ってコミュニケーションする力を指します。まさに“橋渡し”人材に必要な能力です。
富岡 私自身も日々学びながら、人材育成に取り組んでいます。ノウハウなどの無形資産も含めた広義の知財は、企業の本質的な価値だと考えています。知財部門のメンバーにはそこに誇りを持ってもらいたい。事業を支える上で有形資産は当然重要ですが、人的資産を含む無形資産こそが宝です。100年先を見据えて無形資産を豊かにし、それが次の事業を生むような仕組みづくりに、知財部門として貢献したいと思います。
中村 技術は社会実装されてこそ価値を生みます。そこに向けて生成AIの活用は避けて通れません。積極的に取り入れ知見を蓄積することで、日本の知財はさらに強く、元気になっていくはずです。
「IPランドスケープ」は、弁理士法人正林国際特許商標事務所の登録商標です。
▶ 「Protégé」デモはこちら






