

AIによるイノベーションの波が、ソフトウエア開発の現場にも押し寄せている。AIでコードを生成し、開発期間の短縮、エンジニアの工数削減を図ることはその代表例といえるだろう。
ただ一方で、この状況は新たな問題の要因にもなっている。テストソリューションのリーディングカンパニー、Tricentisが2025年に実施した国内調査※で、その状況が明らかになった。「例えば、60%の企業が、AI生成コードによって『ソフトウエア障害リスクが増えている』と回答しました。またAI活用の拡大によって『品質保証の重要性・ニーズが高まっている』と回答した企業は、実に70%以上に上ったのです」とTricentis Japanの小倉 和則氏は紹介する。
※ 2025年 Tricentis 国内調査レポート「品質保証体制とAIテスト自動化に関する実態調査」
AI生成コードの増加によってコードの可視性が低下し、QA(Quality Assurance:品質保証)チームが全体像やリスクを一元的に把握できなくなっている。不確実性や見えない依存関係が増大し、不具合パターンや障害ポイントも増加。その結果、ソフトウエアの品質を担保しにくくなっているのである。
「品質を担保する上で不可欠なのがテストですが、手動でテストを作成・実行する方法では、AIによって高まる開発スピードに追い付けません。ソフトウエア品質の低下はビジネスに大きな影響を及ぼします。ソフトウエアの品質保証が重要な経営アジェンダになっているのです」と小倉氏は強調する。
この課題を解決するためには、テスト工程でもAIを活用することが必要だ。そこでTricentisは、品質領域で培った知見を生かし、革新的なAIエージェント基盤を提供している。「多様なエージェントを実装したクラウド型のプラットフォームで、テストを中心とした開発ライフサイクル全体をサポートします」と小倉氏は語る。
テストの計画・管理、スコープ特定から整合性チェックまで、テストフェーズ全体を支える製品群を有しているが、中でも大きな価値をもたらすのが、エンド・ツー・エンドのテスト自動化を担う「Tosca」だ。
「完全ノーコードでテスト自動化を実現できるほか、自然言語でテストケースを作成したり、テストケースを自動修復したりすることも可能です。誰でもテスト自動化を進めることができ、QA業務の属人化を防ぎます」と小倉氏は説明する。
SAP、Sales force、Oracle、ServiceNow、Workdayなど多様なシステムやデータベース、APIなど、190以上のテクノロジーをテスト自動化の対象にすることも可能。さらに、多様なCI/CDツールや、Claude、Cursor、Microsoft Copilot、ChatGPTなどのローカル環境にあるAIクライアントとの連携も行える。既存のローカルAIを活用しつつ、DevOpsプロセスにテスト自動化を組み込み、エージェント型でテスト自動化を実現できる(図1)。
図1 ToscaとローカルAIの連携イメージ
MCP(Model Context Protocol)サーバーを介することで、現在利用しているローカルAIとシームレスに連携可能。使い慣れたAIをインタフェースとして、Tricentisの価値を引き出すことができる
「AI機能も活用しながらテストを自動化し、高頻度に実行できるようにすれば、AIで増加する負荷に対して、人の工数を最小限にしつつ、ソフトウエア品質を高められます。リリースの頻度も上げられるようになるでしょう」と小倉氏は述べる。
その効果は大きい。例えば、本番環境でのエラーを93%削減した例や、ソフトウエアのリリース頻度を5倍に高めた例などが登場しているという。「非常に大きなROI(投資収益率)を実現した例もあります。テスト自動化が、ビジネスに大きなインパクトをもたらすことの証しだと思います」と小倉氏は言う。
なぜTricentisはこのような価値を提供できるのか。同社は2007年の設立当時からテスト自動化を軸にしたビジネスを展開しており、2019年にはAIを活用したテスト自動化ソリューションを提供開始。その後も自動修復AI、テストケースの自動生成AI、エージェント型テスト自動化などソリューションを市場に提供し続けている。
「高度な技術力とお客様支援の中で培ったノウハウが大きな強みです。AIの進化に追随し、最新テクノロジーを取り入れながら、テストソリューションの高度化に継続的に取り組んでいます」と小倉氏は説明する。
AI自体を公平・正確・安全に利用するための取り組みにも注力している。つまり「AI活用による品質保証」と「AI自体の品質保証」の両輪のアプローチを推進しているのだ。これにより人的ミスの削減、手作業からの解放、戦略的テストや高付加価値業務へのシフトといった価値を創出する。
「2026年3月には、この考え方を具現化した『AI Workspace』もリリースしました。管制塔のように、AIエージェントを統合管理・拡張するためのプラットフォームです」と小倉氏。TricentisのAIおよび外部のAIなど、複数のAIエージェントに対して組織のポリシーを一括適用することで、セキュリティーとガバナンスを強化できるという。
人がテストケースを作成し、手動でテストを実行して結果を確認する従来型の手法では、どうしても人がボトルネックになってしまう。そうではなく、AI生成コードはAIで品質保証し、人はそれを監督しながら意思決定に集中することが肝心だ。「開発ライフサイクル全体をカバーするTricentisのプラットフォームを活用することで、AI中心のQAチーム運営モデルを実現できます」と小倉氏は強調する(図2)。
図2 AI時代のQAチーム運営モデル
TricentisのAI Workspaceを中心に据え、多様なAIエージェントを統合管理することで、AIが内包するリスクを抑えつつ、その価値を引き出すことが可能になる
AIの活用シーンはどんどん広がり続けている。テストプロセスにおけるAI活用も、積極的に検討していくことが求められている。
