

先行きの予測が難しい「VUCA時代」が続いている。また日本国内では労働人口の減少が進み、2050年の生産年齢人口は、2025年の約75%になる※1と予測されている。慢性的な人手不足と環境変化の中で、重要性が増しているのが「データドリブン経営」だ。現場で日々発生するデータを迅速に収集して分析し、タイムリーに変化をとらえて意思決定につなげる。「勘や経験に頼るのではなく、データを基に経営判断を行うことが、企業の持続的成長においてますます重要になっています」とSCSKの桜井 聡氏は言う。
データ活用の基盤となるのが、会計や販売、人事などの企業活動の中核データを一元管理するERP(統合基幹業務システム)である。だが現実には、多くの企業でERPの活用に課題が生じているという。
例えば、経営層は「データはあるが適切に分析できず、意思決定に役立てられていない」と感じている。また現場は「システムが複雑すぎてデータを正しく入力できない」と不満を抱えている。その結果、意思決定の遅延や、現場の負担増大といった状況が起こっているのである。
「これからのERPは、業務を支えるシステムにとどまらず、企業内の情報をつなぎ、データドリブンな意思決定を支えるプラットフォームになる必要があります」と桜井氏は言う。そして、この理想的なプラットフォームを実現する上でカギを握るのがAIだ。膨大なデータの収集・分析から意思決定への活用までを人間だけで行うのには限界がある。AIの支援によって、ERPが抱えていた様々な課題を解決できるようになるという。
この考え方に基づき提供されているのが、SCSKの純国産ERPパッケージ「PROACTIVE」だ(図1)。30年以上の歴史を持つ製品だが、現在はAIを中核に据えた「経営と現場をつなぐビジネスプラットフォーム」へと進化している。
図1 SCSKのERP「PROACTIVE」
「経営と現場をつなぐAI中心型のビジネスプラットフォーム」として、様々なAI機能で高度な意思決定、業務の自動化や効率化を支援。データドリブン経営を後押しする
「従来のERPは、経営意思決定に資するデータを蓄積するために、現場がデータを入力したりシステムを管理したりする必要がありました。PROACTIVEはこの問題をAIによって解決します」と桜井氏は説明する。入力業務などを自動化して現場の負担を減らすとともに、高度なデータで経営を加速させることが可能だという。
経営判断を支援するAI機能の1つが「PROACTIVEアナリスト」だ。これは、Googleの生成AIモデル「Gemini」とデータプラットフォーム「Looker」を融合したダッシュボード機能。数値を可視化するほか、AIがデータからビジネスの変化を読み解き、「サマリー」「トピックス」「次に取るべきアクション」などのレポートを自動生成する。
「業界のドメイン知識や常識を与えた上で、複数のKPIを組み合わせて分析させることが可能です。隠れた相関関係や将来のトレンドを踏まえて、経営の示唆を導き出すことができます」と桜井氏は述べる。
より詳細な分析・予測を行う際には「PROACTIVEデータサイエンティスト」が役立つ。PROACTIVEアナリストによる分析結果を、自然言語での対話を通じて段階的に深掘りできる。厳格に定義されたセマンティックレイヤー※2をベースにするため、ハルシネーションやブレを抑えた分析結果を導き出すことが可能だ。
「チャットの会話で得た気付きや即興で作成したグラフなどは、その場限りの情報として流れてしまうことが多いと思います。しかし、この機能を使えば、有用なインサイトをその場で既存のダッシュボードにタイルとして追加できます。つまり、価値のある発見を、ボタン1つで組織の共通資産にすることができるのです」(桜井氏)
そして、面倒なデータの入力を肩代わりし、経営判断の土台になる高品質なデータ基盤の実現をサポートするのが「PROACTIVEコンシェルジュ」だ。
例えば出張経費の精算は、ルールが煩雑で入力の手間がかかることが多い。PROACTIVEコンシェルジュを使えば、Microsoft Teamsなどのチャットツールをインターフェースとして、自然言語で入力を完結できる。領収書の画像と出張目的を送信すれば、AIが社内規則と照らし合わせて、わずか1分ほどで伝票を生成してくれるという。
承認者にはTeams上で承認依頼の通知が届き、チャット上からそのまま承認処理を行える。手続きの負荷を大きく軽減できる上、ヒューマンエラーの抑止、データ品質の高度化などを実現可能だ。
「また、AIが自ら考えてサポートする世界では、人間が中心となる従来型のPDCAサイクルが適さないケースが多くあります」と桜井氏は続ける。そこでSCSKは、AIを中心とした「ABCDサイクル」へのシフトを提唱している(図2)。具体的には、データを基にAIが自律的に異常や兆候を示唆し、それをBIで多角的に詳細分析する。その上で、人間が分析結果を精査して意思決定を行い、施策を実行するというものだ。
図2 ABCDサイクル
AI時代に適した経営・業務のスタイルとして、SCSKはABCDサイクルを提唱している。AIと人が協働してこのサイクルを回すことが肝心だ
「目指すべきゴールは『時間の削減』ではありません。AIによって生まれた時間を、ビジネスが成長するためのコア業務へシフトさせることです。AIを『仕事を奪う敵』だと考えるのではなく、『人間の可能性と時間を最大化するパートナー』だと考え、協働すること。これこそ、当社がPROACTIVEを通じて皆様と共に築きたい未来の姿です」と桜井氏は強調する。
多くの課題に直面する従来のERPから脱却し、AI時代に求められるデータドリブン経営を実現する。このことが、あらゆる企業に求められている。
※ 1 内閣府「令和8 年版高齢社会白書」
※ 2 データとビジネス言語の間に位置し、データにビジネス上の意味(セマンティック)を与える層のこと
