
鈴木 健氏
株式会社ニューバランスジャパン
マーケティング部
ディレクター
藤井 近年、Webの時代となり、ビジネス環境やユーザーの消費行動が変わってきていますが、御社ではどのようなマーケティング戦略を講じているのでしょうか。
鈴木 従来のマーケティングをいかに新しい変化の中で捉え直すかということが重要だと思います。当社ではここ10年ほどで、再度ニューバランスの強みに焦点を当て、マーケティングをし直しました。その結果、例えばランニングシューズといった一つのカテゴリーに集中するのではなく、ニューバランスというブランドと消費者の接点を広げていくようなマーケティングに移行してきました。
藤井 今回の広告は、それを象徴するようなWebの手法だと思います。各界の旬なビジネスリーダーを通じて、接点を広げていくという狙いだったのでしょうか。
鈴木 そうですね。商品を使っている著名人に使用感を聞くというパターンはややもすると古い手法に見えますが、この企画はそれだけで終わらなかったことが奏功したと思います。創業以来、プライベートカンパニーとして独自性を貫いてきたニューバランスでは、ブランドプラットフォームとして「Fearlessly Independent」という方針を掲げています。今回、キャスティングした皆さんは、まさにFearlessly Independent、何者をも恐れずに我が道を進んでいる方々です。そうした強いパーソナリティの方々のストーリーに、ニューバランスというブランドがさまざまな接点で関与していることを示すことができたところがよかったと思います。

藤井 省吾
日経BP総合研究所
副所長
兼メディカル・ヘルスラボ所長
藤井 今回、「働く」ということをテーマにしていますが、多様な働き方を実現するための「働き方改革」とスニーカーの関係について、どう捉えていますか。
鈴木 高度経済成長期のような時代であれば、働き方も服装も一律である方が連帯感や公平感が強まるという利点があったと思います。その点、現代人の生活スタイルはどんどん複雑化しています。そうした状況での働き方改革というのは、時間の使い方や服装を含めて自分がベストなコンディションで仕事に取り組むことを目指すことでもある。忙しく働く中でリフレッシュしたり、健康的であるためには体を動かすことが大切ですが、運動を意識したワークスタイルとスニーカーは非常に相性がいいと思います。また、スニーカーで通勤するのは楽だし動きやすいからというだけでなく、自分はスポーティでありたいとか、気持ちは自由でいたいとか、自分の価値観の反映でもあるといえます。当社はそういったライフスタイルやニーズに応えるようなスニーカーをデザインし、提供することが重要だと考えています。
藤井 マネージャー層の読者が多い日経ビジネス電子版に出稿されたわけですが、この企画で伝えたかったことやこだわった点をお聞かせください。
鈴木 今回の企画で取り上げたウォーキングシューズはニューバランスの主軸ではないものの、日本国内販売足数・金額が7年連続No.1※という実力のある商品です。ただ、そのことを前面に出してアピールするより、どうしてそうなのかということを伝えたいと考えました。そこで、機能性を訴求するだけでは堅苦しくなるので、ニューバランスの価値観とシンクロするFearlessly Independentな人たちのストーリーを通して、自然な形で商品の隠れた強さが伝わるようにしたいという意図がありました。
藤井 私自身、この広告で発見したのですが、ニューバランスのウォーキングシューズは働く人にとても馴染み感がありますね。
鈴木 1906年に誕生したニューバランスは、扁平足など足に不自由を抱える人に向けた矯正靴の製造からスタートしていますから、その本物感がビジネスシーンに馴染むのだと思います。ブランドのイメージもどちらかというと保守的ですが、当社の歴史はチャレンジの歴史でもあります。同様に今回ご登場いただいた方々も、チャレンジの積み重ねの上に今のステータスがある。日経ビジネスの読者層であるマネージャーの方々には、ニューバランスの安心感や信頼感はもちろん、ブランドとしてのチャレンジ精神も感じてもらえたらという思いもありました。
藤井 日経ビジネス電子版の掲載にあたってはABCマートの特設ページとも連携していますが、どのような成果がありましたか。
鈴木 今回はデジタルのメディアを使って、靴流通の中でも大手チェーンのABCマートと連携できたことは大きかったですね。ABCマートからは、メディアを通して個性的な方々がそれぞれの価値観のもとにニューバランスを選んでいるというメッセージにプラスして、働き方改革というテーマから靴というものを見直してみようといった問題提起がお客様へのアテンションとなり、店頭でもスムーズなセールスにつながったという評価をいただいています。その結果、広告のターゲットであるビジネスパーソンにかなり響いたようで、ウォーキングシューズの購入にも結びつきました。また、信頼感のあるメッセージを作るのは一番難しいところですが、媒体自体に信頼感があり、ビジネスパーソンにしっかりリーチできる日経ビジネス電子版が非常に良いパートナーになったと思います。
藤井 今後の展開や実現したいことなどをお聞かせください。
鈴木 ニューバランスでは「アスレティック ブランド」になることを目標としています。これは、競技としてのスポーツということではなく、健康的な生活や人間らしい生活といったものを創造するために運動を取り入れる人を応援するということ。そのための仕掛けとして、靴やウエアを売って終わりというのではなく、将来的にはその後の生活提案やサービスまで提供していければと考えています。
※矢野経済研究所「YPSスポーツシューズデータ:2013年~2019年ウォーキングシューズ販売足数・金額ベース」(全国主要スポーツショップをはじめとした、2031店舗のスポーツブランドを対象とした定点観測調査2020年1月現在)
※所属・肩書はインタビュー時点