講評

審査委員講評(敬称略・五十音順)

  • 写真:石井 昌彦

    石井 昌彦

    博報堂DYメディアパートナーズ 執行役員 第一メディアビジネス総括担当

     いよいよ今回からクリエーティブ部門とストラテジック部門を統合し、戦略と表現を分けずに評価する審査会となった。広告環境が激変する中で、日経BPのアセットを使った企業のマーケティング活動の価値を向上させていくためには、ストラテジーもクリエーティブも同時に兼ね備えた作品を顕彰していくことは必然である。一方で、すべてを一つのモノサシで評価することは作品の方向性の幅を狭めることになるのではないか、と危惧をしていたことも確か。しかし、それは杞憂に終わった。結果的には例年以上さまざまなタイプの広告活動が2020アニュアルに記録として刻まれることになった。三井ホーム ハイクオリティ住宅のハイクオリティ同梱冊子、興和 パルモディア投薬期間制限解除の規制の下でのさまざまな仕掛け、ゴムノイナキのシンプルな周年広告のビジュアル力、等々、多様性のある審査員の多様な評価ポイントによって、銀賞は可能性のデパートとなった。金賞も同様。ニューバランスジャパンは働き方改革に向けてスニーカー通勤というテーマ設定の現代性とECにリンクした仕掛けのチャレンジが評価された。日立製作所はオウンドサイト内で展開するハードな技術評論コンテンツへ、真新しい読者を「食」という真新しい切り口から誘導する雑誌編集力MAXなコンテンツが評価ポイント。グランプリは新会社NTTアーバンソリューションズを設立時に、自力で地道に事業認知を図るだけではなく、日経BP総研と共創でメディアを作る、というブランド垂直立ち上げ大作戦がダイナミックであった。「ひとまち結び」というタイトルも秀逸。この仕事をライトハウスケースとして、共創メディア型の市場は雑誌広告の大きな可能性であると感じた。拍手!

  • 写真:石崎 徹

    石崎 徹

    専修大学 教授

     第6回「日経BP Marketing Awards」の審査会に臨んだ。今回の審査より、評価の高いものから「グランプリ」「金賞」「銀賞」となった。今回も選りすぐりのエントリー作品ばかりで、純広告、Web、タイアップ、多メディア展開、冊子など多様な展開方法が取られていた。それぞれの展開方法で持ち味がある。例えば、クリエーティブ力は純広告が目を引くが、企画力はタイアップが高く、説得力はWebや多メディア展開がやはり強いといったところである。しかし、今回は総合力で判断したので、あらゆる側面でシナジー効果を発揮した作品が上位に食い込んできたと思われる。

     グランプリに輝いたのは、NTTアーバンソリューションズの「『ひとまち結び』まちづくりブランディング」である。日経ビジネス電子版と日経 xTECHを活用したWebによる協業メディア展開で、2019年10月にスタートしたとのこと。同社のブランドおよび「まちづくり」コンサルタント事業の認知を目的として展開している。特集、コラム、事例紹介をしており、東京・三鷹の無人本屋さん、2019年に話題となった「うんこミュージアム」を開催した面白法人カヤックなどを取り上げた。地域に密着し、まちの魅力づくりやまちの発展に寄与しているユニークな事業を前面に出し、同社がさりげなく関与することで上手に好感を生み出す展開となっている。そうしたところが高く評価されたのだろう。

  • 写真:大越 いづみ

    大越 いづみ

    電通 データ・テクノロジーセンター EPD

     年1回の「日経BP Marketing Awards」は、各産業のビジネスパーソン向けコミュニケーションを通じて、マーケティングの課題と手法のトレンドを知る貴重な機会と捉えている。これまでは、クリエーティブとストラテジーの両面からターゲットへの届け方・伝え方の工夫からトレンドを読み解いてきたが、今回はその傾向自体に変化を感じ取った。

     まず、コミュニケーション・ストラテジーがシンプルにそぎ落とされてきている。日経BPの“読者”の中から確実に潜在顧客を見つけ出す。その顧客に対して、自社への認知、事業内容の理解、カンファレンスへの集客など、狙いを明確に絞り込んでいる。それを実現するために、日経BPが有するリソースである「読者ID」「取材力・編集力・コンサルティング力」を駆使して、確実にKPIの達成に寄与する協業フォーメーションが定着した。その結果、エントリー作品の上位には、オンラインのエディトリアル型コンテンツが並び立つことになった。審査は難しいものとなったが、NTTアーバンソリューションズの「ひとまち結び」は、「まちづくり」という領域で短期間に企業ブランドとプレゼンスを作り出すために、日経BPとの協働により充実した質と量のコンテンツ生成を成し遂げた点で、頭一つ抜け出していた。

     いわばその対極として、審査会では、1枚のグラフィックが持つ力を評価するという機運も生まれた。専門誌の誌面中で、一瞬で伝える力は今回も健在であった。住友ゴム工業の技術広告には正統派の品格を感じることができた。日本のタフな自然環境の中で磨かれる技術を一つずつ「作品」として提示したことで、そこに関わる人たちが勇気を得て、誇りを持つことができたであろう。また、日本アキュライドの「スライドレールのお悩み相談 編」のシリーズからは、素直に共感を持たせる愛嬌を感じた。

     ディスラプティブなイノベーションの嵐が吹き荒れ、攻めと防戦のマーケティングが繰り広げられた過去2〜3年に対し、着実な成果を求めていく姿勢には手堅さを感じた。変化が激しい競争環境の中で、ちぢこまっているのではないと信じたい。

  • 写真:小林 弘人

    小林 弘人

    インフォバーン 代表取締役CVO

     グランプリを受賞したNTTアーバンソリューションズの「ひとまち結び」は、聞くところによると新たに創設された同社が、認知を広げるために行った施策だという。審査委員会も全員一致で本作を認めたが、何がそこまで我々を魅了したのだろうか。これは私見ではあるが、おそらくこれからの日本における可能性を求めると、そのヒントは地方にあると、そこはかとなく全員が認識しているのかもしれない。課題が山積であるがゆえ、「そのソリューションを知りたい」という欲求があるがゆえ、第一に本作は「読みたくなる」コンテンツが揃っていることが奏功したのではないか。そんな時代背景に、まだ活動間もない同社がコンテンツを揃えることは必然だった。第二に、日経BPが得意とする取材、記事作成といったスキルが十二分に発揮されたコンテンツ・マーケティングとなっている点だ。本作の受賞によって、企業メッセージ並びにその問題提起の手法がいかに時代と合致しているか、編集的視座の重要性を問う。これについては、日立製作所の手法も私は高く評価したい。

     一方、今年より対象部門を一つに絞ったことにより、紙媒体だけで勝負する広告もオムニチャネルを駆使した立体的な手法と同一次元で争わねばならなくなった。その中でも住友ゴム工業のブランド広告は完成度では群を抜いていた。限られたスペースの中で、写真とコピー、それを効果的に配置するデザインといった「古き良き」クリエーティビティがまだまだ健在であることを再認識させてくれた。誌面から「音が聴こえる」「絵が動く」ような広告表現は、Web全盛時代の今だからこそ記憶に留まる。

  • 写真:酒井 光雄

    酒井 光雄

    個人事務所酒井光雄 代表

     日経BPは上質なビジネスパーソンを中核にした読者を擁し、800万人に及ぶ日経ID会員の購読者データを活用して、企業と生活者の双方が求める情報の橋渡し役を担っている。メディアのデジタル化対応として、同社は編集ノウハウを駆使して魅力あるコンテンツを企業に提供し、併せて自社のデータベースを活用して読者を各企業サイトへいざない、クライアントの課題解決に貢献している。その一方、従来の紙媒体では、雑誌ならではのインパクトのある純広告や同梱プロモーションを提供するなど、想定顧客に最適な情報を伝達する諸施策を実践する。クライアント側もデジタルとアナログを使い分け、さらに両者を融合させてコミュニケーション効果を最大限発揮しようとする姿勢が、今回の作品群から明確に伝わってくる。今回の「日経BP Marketing Awards」は広告表現に留まらず、マーケティング・サイエンスを加味して、結果を出しているかどうかまでを視野に入れ、選考が行われた。

     新会社として設立間もないNTTアーバンソリューションズは、不足する自社コンテンツを短期間のうちにサイト上に生み出し、「『ひとまち結び』まちづくりブランディング」として結実させた結果、グランプリを受賞した。金賞を受賞したニューバランスジャパンは日経ビジネス電子版を購読する中高年ビジネスパーソンに「働き方改革とスニーカー通勤」というテーマで自社のスニーカーをアピールし、ダイレクト購入に繋げた。

     銀賞受賞作品では、従前より制約が多くなった医薬品広告の中で、「『パルモディア』投薬期間制限解除」を興和は真摯に訴え、日本アキュライドはインパクトのある純広告のクリエーティブにより「スライドレール」の訴求に成功した。同じく三井ホームは高額商品である「ハイクオリティ住宅」を上質な冊子に仕立て、日経ビジネス本誌に同梱する手法によって結果を出した。どの受賞作品も秀逸なコミュニケーションが読者に行動を促し、想定した効果を発揮している。

  • 写真:裵 英洙

    裵 英洙

    ハイズ 代表取締役/慶應義塾大学特任教授

     これがマーケティングの力か…。

     第6回「日経BP Marketing Awards」はプロフェッショナル達が創り出した作品の凄さに圧倒され、自身にない視点を見せつけられることで心地よい劣等感と爽快感に包まれた稀有な機会であった。

     各作品は、ターゲットの選定、届け方、そして伝え方でさまざまな手法を用いつつ、挑戦心にあふれ、見るものを飽きさせず、かつ惹きつけるものが多かった。その中でグランプリに輝いたのは、NTTアーバンソリューションズの「『ひとまち結び』まちづくりブランディング」。特集、コラム、事例紹介の3ジャンルで定期的に複数コンテンツを投入し、継続感・渇望感を醸成する作り。スマホ閲覧を想定した見やすさ。親近感にこだわった徹底した生活者目線。幾重にも散りばめられた戦略的な創意工夫の結果、見事なグランプリ受賞。惜しみない拍手を送りたい。

     また、医療に関わる者として、銀賞を獲得した興和の「『パルモディア』投薬期間制限解除」は興味深い。現在、コンプライアンスの観点から医薬品・医療機器産業では広告規制が厳しくなりつつある中で、製品価値に真っすぐに向き合った内容。媒体も日経メディカルの雑誌媒体への差し込み広告&記事体広告といったクラシカルで武骨な正攻法もニクい。実直さと真摯な姿勢がターゲット層に深く刺さったことだろう。

     最後に、いずれも素晴らしい広告であるがゆえに、あらゆる人に届いてほしいという気持ちが私にはある。その点を踏まえて、今回の作品群を医療人としての視点から振り返ってみたところ、Web媒体を使用している作品の多くが、音声読み上げ機能や文字拡大機能、外国語翻訳対応等がなく、さまざまな背景を持つ人々にまで届くような工夫が見られなかったのはやや残念である。多様性や共生社会がうたわれている時代であるからこそ、最先端のマーケティング分野から率先して多様性に向き合う姿勢が見られるとなお嬉しい。

  • 写真:本荘 修二

    本荘 修二

    経営コンサルタント/多摩大学(MBA)客員教授

     審査員として三度目の「日経BP Marketing Awards」となった今回は、これまでよりも非凡なものが少ない印象だったが、クリエーティブとストラテジックの2部門制から一本化されたため、より自由な視点で作品を見られたことがプラスになった。

     グランプリ受賞のNTTアーバンソリューションズは、会社設立前から起こしたプロジェクトであり、かつ中長期的に継続する可能性がある、一つのモデルケースになり得る作品だ。

     金賞の日立製作所は、エンタープライズICTを超えた広いオーディエンスを惹きつける企画で、かつ深く知りたい層には専門的なサイトへの誘導を図るという、なかなかよくできた作品になっている。

     もう一つの金賞のニューバランスジャパンは、ビジネス媒体にファッション/スポーツが登場し、それも新たな働き方というマネージャー層へのメッセージ性を持った点で、組み合わせの妙味が感じられた。

     銀賞は、さまざまな特色が認められた作品が選ばれた。雑誌や冊子、Webなどそれぞれ異なる形態で、訴求力のある表現や充実したコンテンツを展開する、特定の枠にとどまらない作品の評価となった。減点主義でなく、良いところを見つけようというスタンスで、審査自体を楽しめた。

     予選にあたる事前審査では、挑戦が乏しいという印象のある作品も多かった。膨大な情報の中に埋もれず効果を得るには、イノベーションや枠を超えるトライが大切だ。

     審査会の議論でも、ここで留まっていてはもったいない、もう一歩前にと期待したい、など、育もうという声が聞かれ、本Awardsの姿勢が表れたと言えよう。

  • 写真:水島 久光

    水島 久光

    東海大学 教授

     今年度から部門賞をなくしたことにより、かえって日経BPの媒体ならではの取り組みに数多くの光を当てることができ、楽しい審査会となった。

     グランプリと金賞は、Webタイアップやオリジナルコンテンツ企画が占めた。新会社設立のブランディングを委ねたNTTアーバンソリューションズの思い切り、日立製作所の絶妙のテーマ設定、ニューバランスのバランスの取れた人選は多くの企業の参考になるだろう。

     銀賞は個性派揃い。三井ホームの小冊子のクオリティ、エービーシー商会のメディアミックスはまさに日経BPらしいプロモーション。クリエーティブで光ったのは日本アキュライドと住友ゴム工業。興和の制約の厳しい中でのクリエーティブ、ゴムノイナキの周年事業だからこその企画など、いずれも選び甲斐のあるものばかりであった。

     メディア・マーケティングは、媒体社とクライアント企業の個性のぶつかり合いである。受賞ラインアップのいずれからも、ここに至るまで、担当者同士の充実した話し合いの積み重ねがあったことが想像できる。まさにそのプロセスが重要であり、そこから我々は企業の信頼を読み取ることができる。

     5G、DX、サブスク…etc.とかく言葉ばかりが先走りしてしまう昨今ではあるが、それらの言葉に意味を与え、実体化していくためには地道な関係性、顧客とのエンゲージメントを構築していく取り組みが不可欠なのだ。そうしたことを考える機会を与えてくれた、2020年のMarketing Awardsであった。

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