受賞者インタビュー金賞

旭精機工業 あらゆる人々が活躍できる環境を目指し
インクルーシブな広告に思いを託す

神谷 真二 氏

神谷 真二
旭精機工業株式会社
取締役社長


松原 幸弘 氏

松原 幸弘
旭精機工業株式会社
取締役

加藤 旭精機工業の企業広告が金賞を受賞しました。感想をお聞かせください。

神谷 弊社は今年創立70周年を迎えます。その記念すべき年にこのような賞をいただくことができ、大変ありがたく感じています。この先も、ものづくりにこだわった事業を続けていく上で、社員にとっても自信や励みになると思います。

アール・ブリュット作品を採用し
誰もが活躍できる未来を表現

加藤 今回の広告では、INCLUSIVE(インクルーシブ)というワードを掲げていますが、どのようなメッセージを込めているのでしょうか。

神谷 旭精機工業では、長期開発ビジョン「ALPHANOMOUS(アルファノマス)」の実現を目指しています。これは、弊社が創立100周年を迎える2053年の生産現場で、機械の自律化により人が介在する作業を極限までなくすことを追求する技術開発構想です。IoTやAIを活用することで、作業者が離れた場所にいても生産に関わることができる。そんな理想の現場を目指しています。ハードルは高いのですが、現在要素技術を積み上げている段階です。「ALPHANOMOUS」が完成すれば、これまで生産に携わることが難しかった方も作業が可能になり、「あらゆる人々が活躍できる現場」が実現します。そんな未来への思いを広告に託しました。

加藤 生産現場から人が介在する作業をなくすということは、社会全体の課題でもある人材不足を解消することにもつながりますね。

神谷 昨今、採用活動では人材確保の難しさを実感しています。加えて、生産現場も高齢化しており、人に頼るものづくりは今後立ち行かないことは明白です。「ALPHANOMOUS」が形になれば、熟練の技術を要する領域でも人に頼らない現場が実現することを、広告から感じ取っていただければという期待もあります。

加藤 今回の広告には、文化や流行、教育にとらわれず、自らの衝動に従って表現するアール・ブリュット作品が採用されています。その経緯をお聞かせください。

松原 2020東京パラリンピックの文化プログラムとして行われていたアール・ブリュット作品展を弊社の広告制作担当者が目にしたことが始まりです。その独創的な作風に面白みを感じて興味を持ち、広告制作でご協力いただいている印刷会社の方のご紹介で、障がいのある方の創作活動を支援されている方にお話をうかがう機会を得ました。そのとき印象に残ったのが、障がい者の方がかんしゃくや問題行動を起こす要因の一つに、自己表現が難しく、相手に思いを伝えられないことによる自信の喪失や不安感があるということ。ですが、アール・ブリュット作品を通じて社会とのつながりを感じるようになると、自信や自己肯定感が生まれ、問題行動に向かっていたエネルギーがクリエイティブな方向に向くようになるということでした。アール・ブリュット作品の素晴らしさを伝えることは、「ALPHANOMOUS」の成果となりうるSDGsやD&I実現への貢献につながるのではないか。そう考えて、2022年に障がいのある方々の作品展を愛知県尾張旭市の文化会館で開催し、そのつながりを生かしてアール・ブリュット作品を弊社の企業広告に採用しました。

加藤 今回、3種類の作品が使用されていますが、いずれも心に迫ってくるような力を感じます。これらはどのように制作されたのですか。

松原 一人の作家さんに、フォーミングマシンやプレス機械といった弊社の代表的な機械の写真をお渡しし、「これを見て感じるままに描いてください」とお願いしました。仕上がりを見たとき、その豊かな色彩や独創性に圧倒されましたね。従来の広告では機械の写真を使用していましたが、それよりもアール・ブリュット作品を掲載することで、見ていただいた方にインパクトを与えられると感じました。

一過性のメッセージにせず
継続的な情報発信で理解浸透を図る

加藤 雅浩

加藤 雅浩
日経BP
技術コンテンツユニット
編集委員

加藤 社外からはどのような反応がありましたか。

神谷 「D&Iへの取り組みが理解できた」とご評価いただいた半面、「何を言いたいのかわからない」とのご意見もありました。しかし、それは想定内のことであり、すぐに理解を得られるとは考えていません。長期開発ビジョンを推進する中で、広告を含めて情報発信し、理解が進むように取り組みを続けていきます。

加藤 確かに、社会課題に向けた取り組みは、継続してこそ意味があると思います。そのような広告の掲載媒体を日経ものづくりとした理由を教えてください。

神谷 近年、自動車業界は100年に1度の大変革期を迎えているといわれています。それにともない、部品メーカーでもある弊社も激変する環境下に置かれています。そうした中でも、ものづくりにこだわりたい弊社にとって、日経ものづくりが一番マッチすると考え、選択しました。また、究極のものづくり現場を実現する「ALPHANOMOUS」をPRするメディアとしても同誌が最適だと考えています。

加藤 D&I活動やマーケティング活動について、今後の方針をお聞かせください。

神谷 D&I活動に関しては、まだスタート地点といえます。社員の意識改革を行い、雰囲気の醸成を図っていきます。一方、マーケティング活動については、変化する事業環境の中でさらに強化する必要があります。市場ニーズや顧客ニーズをいち早く的確に捉え、事業展開に生かしていけるような取り組みを行っていきます。

加藤 弊社としてもその取り組みにご協力し、一緒に歩んでいきたいと思います。日経ものづくりをはじめ、日経BPの媒体に期待することを教えてください。

神谷 岸田政権が進める「新しい資本主義」での「成長と分配の好循環」の実現に向け、今日本は正念場にあり、弊社ももがいている最中です。今後も日経BPの媒体には、新たな事業展開へのヒントを与えてくれる存在であってほしいと思います。

※所属・肩書はインタビュー時点

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