農業の限界を突破するドローン、GPS技術

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JAいわみざわ、GPSでトラクターを制御

 ドローンなどの先端技術を活用して、より精緻に作業の効率化を図るという動きはほかにもある。最近では、GPSにRTK(リアルタイム・キネマティック)という技術を組み合わせて、より高い精度で農機の自動制御を進めるケースが出ている。北海道の中央部に位置する岩見沢市のいわみざわ農業協同組合(JAいわみざわ)が取り組んでいるのが、GPSやGIS利用によってトラクターの運転を制御し、耕起や代かき(田に水を張って、土を砕いてならす作業)などの作業の精度向上、効率化、収量アップなどを目指した事業だ。

JAいわみざわ管内でのトラクター作業の様子<br>(写真:いわみざわ農業協同組合)
JAいわみざわ管内でのトラクター作業の様子
(写真:いわみざわ農業協同組合)

 岩見沢市は北海道らしい広い大地を活用して稲作のほか、野菜や果樹栽培なども盛んだ。JAいわみざわ農業振興部の水口貴文氏は、「1軒の農家が電波補正の基地局を立てて、GPSを使った農機制御を取り入れたのが最初です」という。トラクターの位置を把握するにはGPSだけでは精度不足。それを補正するのが電波の位相差を利用して位置情報を補正するRTK装置だ。

 ICT推進に積極的な岩見沢市では、13年から14年にインフラ整備の一環としてRTK基地局を3基設置。トラクターに搭載する端末は、14年から導入を進めている。

自動操舵でトラクターの夜間作業も可能に

 15年から本格的にGPSを使った農機制御が稼働開始。その効果は、「時間および作業の効率化を図ることができた」(水口氏)という。GPS端末のガイダンスによる自動制御なら周囲が見えない夜でも作業ができる。GPS端末の画面上では、作業した場所が色分けされて表示されるうえ、作業機の幅も考慮して制御するので、重複して作業することがなくなり「代かきは時間が半分になりました」(水口氏)というほど効果を挙げている。

自動操舵による無人の水田作業<br>(写真:いわみざわ農業協同組合)
自動操舵による無人の水田作業
(写真:いわみざわ農業協同組合)

 トラクターの作業では、田や畑の端まで来ると方向を変えるために回転する。しかし回転半径があるため、作業を済ませた列のすぐ隣を耕起することはできない。もし、作業機の幅を1列あけて作業を続けられれば、最終的に折り返してから、残した列を作業すれば済む。RTKを装備しないGPSでは、精度が粗いため作業機の幅を設定できないが、RTKを使えば、補正で数cm以下の精度を実現できるため、作業機の幅ぴったりにトラクターの転回が可能になった。それにより、時間短縮とともに、トラクターの切り返しでいったん耕した土を再びタイヤで踏み固めることも最小限で済む。

トラクターに搭載されたGPSのモニター<br>(写真:いわみざわ農業協同組合)
トラクターに搭載されたGPSのモニター
(写真:いわみざわ農業協同組合)

 さらに、「夜間作業が可能になったことが大きい」(水口氏)。生産者はGPSのモニターを見ているだけで済むので、作業状況を目視確認する必要がない。照明などがない真っ暗な田や畑でも自動操舵で作業が行われる。翌日に天候が荒れそうな時でも、前日の夜に作業を終えることができるので作業スケジュールを組みやすい。自動操舵により、「作業しながらトラクターのキャビンで食事もできると喜ばれています」と水口氏も笑いながら話す。経験の浅い人でもトラクター作業ができるほど作業が楽で、しかも精度が高くなったということだ。

有人運転と無人の自動操舵を併用した協調作業による種まき作業<br>(写真:いわみざわ農業協同組合)
有人運転と無人の自動操舵を併用した協調作業による種まき作業
(写真:いわみざわ農業協同組合)

 このように、イメージセンシング技術の活用や高精度のカメラを搭載したドローン、GPSとRTK利用のトラクターなど、ICT技術を活用することで、農業分野においてもさまざまな可能性が広がっている。これまで出合うことがなかった先端技術と農業分野の融合によって、今後、ビジネスの可能性がより広範囲にわたって芽生えるといえるだろう。