ロボット農機、いよいよ本格実用期に!

クボタが描くスマート農業の未来と現状

 日本の農業に大きな変革をもたらすツールとして期待が集まるロボット農機が、いよいよ本格実用期に入ってきた。2017年から今年2018年にかけて、国内農機大手から無人で運転できるロボットトラクターが続々登場。コンバインも有人運転のロボット機が年内に市場投入される。田植機は、既にGPS(全地球測位システム)機能付きの自動操舵機が人気を集めている。これらのロボット農機やドローン、クラウドやAI(人工知能)といったIT技術を組み合わせて活用する「スマート農業」がすぐ手が届くところにまで来ているのだ。この分野を牽引する農機最大手のクボタにスマート農業の未来と現在について聞いた。

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2台で協調連携するクボタのロボットトラクターSL60A。「アグリロボトラクタ」と呼ばれる、無人で自動運転できる最新鋭のロボット農機だ。2017年9月からモニター販売が始まった。RTK(Real Time Kinematic)- GPSという位置情報を正確に把握する機能を使って誤差2、3センチでの高精度な耕作ができる。写真は1台にオペレーターが乗り、もう1台の無人機と連携して作業を進めている。(写真:クボタ提供)

 農業の世界にロボット化とAIの大きな波が押し寄せている。

 国内農機大手によって、農業の三種の神器とも言えるトラクター、田植機、コンバインのロボット化が急ピッチで進められている。並行して、ロボット農機とAI(人工知能)、ビッグデータ技術などを連携活用するクラウドサービスの仕組みづくりが進む。農林水産省もこの動きを後押しする。ロボット農機やAI、IoT(Internet of Things)などを活用する「スマート農業加速化実証プロジェクト」に50億円(平成31年度予算)とかなり大きな予算を付け、実用化と普及のスピードアップを支援する構えだ。

 いくつかの要素技術の中で、いち早く進化を遂げているツールがトラクターだ。高機能のロボットトラクターが続々と世に出てきている。最初の動きは昨年。2017年9月に農機最大手のクボタが「アグリロボトラクタ SL60A」という機種をモニター販売し始めた。これを皮切りに、今年に入ってヤンマーが続き、井関農機も年内発売を目指し製品化を進める。

 いずれも高度なGPS機能を搭載し、圃場(水田や畑)内で誤差わずか2、3センチという精密な位置制御をしながら無人での自動運転ができる。しかも、1台だけでの単独作業だけではなく、複数台が自動通信で連携しながら作業できるスグレモノだ。

 こうしたロボット農機の進化は、高齢化によって担い手が減少の一途をたどる日本の農業にとって大きな福音になる。日本の農業従事者の平均年齢は2017年で約67歳。農業従事者の数は年々減る一方だ。この結果、一部の担い手に農地が集中、一戸当たりの耕作面積は恐ろしいほどの勢いで膨れ上がる。

農家が減少し、集約化が進む

 農機大手のクボタで研究開発本部長を務める佐々木真治氏(同社 取締役専務執行役員。以下、佐々木専務と略)は、ロボット農機の実用化が急がれている背景を次のように語る。

未来の農業について語るクボタ 取締役専務執行役員の佐々木真治氏。研究開発本部長として同社の研究・開発を指揮する。(写真:高山 和良)

 「2015年には138万戸あった農家が、2030年には約40万戸にまで激減するという予測もあります。手を打てば80万戸くらいには留まるかもしれませんが、どんどん減っていくことは間違いない。それに伴って、多数圃場の管理が非常に大きな課題になります。つまり、農家1戸当たりが管理する圃場の面積と数が格段に増える。結果的に、農業経験の浅い人を雇用して指示を出して農作業をしてもらうことになりますが、これがなかなかうまくいかないのです」

 農地の集約化というと、米国やオーストラリアの広大な農場を思い浮かべる人もいるだろう。一筆書きでつながる大規模農場で単一の作物を大量生産するスタイルだ。こうなれば効率的じゃないか、と思われるかもしれない。しかし、日本の農地はこれとはわけが違う。大きくても10アール(1000平方メートル)ほどの小さな圃場(水田や畑)が農道や公道を挟んで分散している。いわゆる分散圃場だ。道を挟んで隣接していればまだいいほうで、飛び地のようにあちらこちらと点在する例も多い。

 しかも、大規模な農家ほど多品種を作り分けている。米づくり農家で言えば、収穫期の違う品種や業務用米や銘柄米、時には酒米など多くの品種をいくつもの水田で作り分ける。作業の平準化と収益面でのリスク分散という観点からだ。数多くの生産拠点で多品種少量生産をするわけで、必然的に農作業は時期をまたぎ、作業の種類も多岐にわたる。品質の高い米を作ろうとすれば、いっそう複雑な作業と工程管理が必要になる。

 管理する圃場が増える中、人員が少ない状況で農業経営をスムーズに進めていくためには、作業効率を段違いに上げるイノベーションが必要になる。そして、こうした“アグリ・イノベーション”とも言うべき大変革をもたらすものがロボット農機であり、クラウドやAIと連携して活用する「スマート農業」なのだ。