先端ハウスとITで挑む高品質トマトの多収栽培

最終ターゲットは品質・収量の自在なコントロール

静岡県菊川市に最新のテクノロジーや新しい栽培手法を大胆に取り入れながらユニークなトマト生産に取り組む農業法人がある。その名を「ベルファーム」と言う。年間約700トンの高品位トマトを生産・販売する生産法人であり、静岡県を代表する企業体でエネルギー関連事業を核とする鈴与グループの一員でもある。2019年にトマトが育つハウス内の気流や温度・湿度などを精密にコントロールする最新の技術を取り入れた国産ハウスを導入して話題を呼んだ。さらに2020年5月にはITやAI、ロボット技術などを活用してトマトの収量と品質を高精度にコントロールするスマート農業の実証プロジェクトをスタートさせた。中規模経営体として最先端技術に果敢に挑戦するその姿勢に関係者の注目が集まっている。同社の指揮を執る岡田典久社長に、取り組みの現状と今後目指す姿について聞いた。
ベルファームでは約20万平方メートルの敷地に20棟近くのハウスを設置し年間約700トンのトマトを生産している。主力は、糖度が5~6度と高い大玉の「あかでみトマト」(提供:ベルファーム)

昨年、ハウス内の環境や気流を精密にコントロールできる話題の最先端ハウス「プロファーム T-キューブ」(以下、Tキューブと略)の第1号機を導入され、農業関係者の間で注目を集めました。自動車部品大手のデンソーと農業資材のトヨタネ、ハウス大手の大仙が合弁会社を設立し、昨年市場に投下した最先端ハウスですが、大規模の先端ハウスと言えばオランダ製のものが多い中で、なぜこれを導入したのかを教えて下さい。

岡田社長(以下、敬称略):私たちはここでトマトの栽培を始めてまる10年経過しています。課題がいろいろある中でいかに生産性を上げていくかが重要です。特に、温暖な静岡県では温度が上がる夏場の環境制御は難しいところがあります。これに対してTキューブは強制換気による環境制御をしていくという新しい考え方があるハウスでしたので、これを使いたいと考えました。

 別の角度から申し上げると、ベルファームは鈴与商事というエネルギーを扱う会社の関連会社でして、農業の中でいろいろなビジネスチャンスを広げていけないか、そこで供給できるエネルギーとして新たなものがないかを模索しています。こういうユニット型のハウスも、場合によっては私どもの商材になるかもしれないし、自らが使いながらコンサル的なサービスなども考えられるのではないかということがもう一つの大きな動機になっています。

日本国内で導入される先端のハウスはオランダ製の大型のものが多いと思っていましたが……。

岡田:そうですね。今回導入したものは20アール(1アールは100平方メートル)というサイズのものです。私どものこれまでのハウスは50アールのもので、それがたくさんあるという状態です。今回のTキューブを20アールというサイズのものにしたのはもちろん敷地的な事情もありますが、50アールのハウスで環境制御をするよりも、もう少し狭い方が制御しやすいと思っていたからです。ハウスのサイズが半分以下でも生産性が高ければ同等の収量にできるわけで、ユニット単位としては決して大きくないが20アールにしたということです。ただ、もともと50アールのハウスがたくさんあるのがベースで、そこに今回20アール分プラスした感じです。

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Tキューブについて語る岡田社長とTキューブ内部の様子(提供:ベルファーム)