海外の協同組合。組合員たちの働き方にヒントあり

フランス、英国、イタリアの協同組合事情

生協の認知度が高く組合員の参加も積極的なイタリア

 次に、イタリアの生活協同組合(生協)について紹介する。生協の基本的な成り立ちは日本と変わらないが、イタリアでは流通市場におけるマーケットシェアが大きく、市場での認知度も高いという特徴がある。

 日本生活協同組合連合会の渉外広報本部国際部シニア国際担当の宮沢佳奈子氏によれば、「英国の工業都市マンチェスター近郊の町ロッチデールで、現在の生協の源流となる生協が誕生したのが1844年。イタリアの生協はその10年後に誕生しました」という。日本の生協は宅配が主軸だが、欧州の生協は店舗スタイルがメーン。また、日本では組合員だけが利用できるが、欧州では組合員でなくても利用できる。また、「イタリアの生協では、組合員の利用状況が一定数以上に達していないと減税制度が受けられないという特徴があり、各生協では組合員の利用促進には熱心に取り組んでいます」という。

日本生活協同組合連合会
渉外広報本部 国際部 シニア国際担当
宮沢 佳奈子 氏

 組合員の利用状況で減税措置が受けられるというように、社会の中での生協の位置づけはは大きい。第二次世界大戦で疲弊したイタリアは、戦後制定された憲法で、相互扶助や生協について触れている。「欧州全体にいえますが、もともと相互扶助の意識が高い。特にイタリアは、生活に密着する存在として生協の認知度が高い」と宮沢氏は話す。

 その理由の1つは、「商圏の小ささ」と宮沢氏は指摘する。小さな田舎町が多いイタリアでは、生協でしか買い物ができない場合もある。その結果、必然的に生協の役割が大きくなったと考えられる。現在、イタリアには巨大生協が7つあり、それぞれがハイパーマーケット(6000平米以上の巨大スーパー)、スーパーストア、小型店舗と様々な形態で各都市に出店している。

フィレンツェにある生活協同組合の店舗(写真:日本生活協同組合連合会)

 特にイタリア北部では生協が発達している。フィレンツェのあるトスカーナ州、トリノのあるピエモンテ州、ボローニャのあるエリミア=ロマーナ州などでは生協の力が強い。反対に北部との経済格差の大きな南部では、地域の購買力が低いこともあって、生協が発達してこなかった。

 イタリア生協の特徴に挙げられるのは、社会的な倫理規範が強固なこと。体によい食品の供給、フェアトレード、動物愛護・環境保護はもとより、イタリア南部で政府が展開するリベラ・テッラ(マフィアの土地を没収し、そこで生産された農作物のブランド)を積極的に扱うなども行っている。

 イタリアの流通市場での生協のシェアは18%超と高い。これは小売業者の中でトップだ。その仕入力を生かして、組合員だけでなくイタリアの消費者に対して、「適切な価格で適切な商品を販売する意識が守られています」と宮沢氏は解説する。

生協店舗内の様子(写真:日本生活協同組合連合会)

 また、組合員が経営に積極的に関わっている点もイタリアの生協の特徴だ。生協では、販売する商品について、組合員が商品テストを行っているが、2015年には3万人強の組合員が商品テストに参加したというデータがある。

 イタリアの生協の店舗では、組合員のための集会室のほか、地域住民に向けた図書館を併設するケースも多い。そこでは組合員がボランティアとして働く。そうした活動からも、組合員による積極的な経営参加と、生協が市民生活に浸透し認知されているのが分かる。

生協の店舗内にある図書館(写真:日本生活協同組合連合会)

イタリアの生協商品を日本で販売

コープトレード・ジャパン
海外商品グループ グループマネージャー
北山 博之 氏
イタリアのコープブランドの商品

 イタリアの生協商品を日本の生協で販売する取り組みがスタートする。コープトレード・ジャパン海外商品グループの北山博之グループマネージャーによれば、「イタリアからの輸入は歴史が古く、現在ではコープトレード・ジャパンで扱う輸入加工食品の25%はイタリアからの輸入です」というほど、実は関係が深い。

 今回日本で販売を開始するのは、パスタやバルサミコクリームなど8種の食品。「イタリアの生協は流通市場で圧倒的なシェアを持っているので、大量の商品を取り扱います。そこで食品メーカーは、生協向けの商品開発を重視する傾向にあります。生協の方針に沿った、安心・安全な商品を開発しているのです」と北山氏。組合員が商品テストにも参加するだけに、生協の商品は安心というイメージがあるようだ。今回の商品は、2017年6月から宅配および店舗で販売される予定。「日本にはない、イタリアならでは、という商品を選びました」と、北山氏は自信を見せる。

マルチスキルが当たり前。英国の労働者協同組合

 生協発祥の国である英国にはユニークな協同組合も多い。日本生活協同組合渉外広報本部国際部部長の天野晴元氏に、オーガニック食品など自然食品などを取り扱うスマ・ホールフーズについて伺った。

日本生活協同組合連合会
渉外広報本部 国際部 部長
天野 晴元 氏

 スマ・ホールフーズの本拠地は、労働者の街として知られるマンチェスターから鉄道で約30分のところにあるウェストヨークシャー。自然食品を扱っていた小売業者が廃業し、そこで働いていた社員7人が引き継いで、労働者協同組合としてスタートした。

 スマ・ホールフーズでは、2016年4月時点で本部に145人の組合員職員、18人の試用職員、約40人のアルバイトが働く。またロンドンにオフィスがあり12人の組合員職員が在籍するが、給与は全員が同一賃金である。

 組合員が職員であり、試用職員が正規職員になるには9カ月にわたって様々な業務を経験する。また、「正規職員もフォークリフトの運転から事務作業まで、日によって異なる業務をこなしています」と、平等に作業を担う。

スマ・ホールフーズの倉庫。組合員は倉庫内でのフォークリフト作業から経理、商品パッケージのデザインまで多種多様の業務をこなす(写真:日本生活協同組合連合会)

 組合員全員が協同組合の運営を、経営者として、また職員としてこなす。そのためにマルチスキルが当たり前になっている。

 これらヨーロッパの協同組合の例は、企業にとってもぜひ取り入れたい要素を多く持つ。まさに、先進的な取り組みといって過言ではないだろう。協同組合という組織だからこそ成り立つ部分もあるが、我々が学ぶべき点はすくなくないはずだ。