



第1章では、アフリカの経済成長には道路や港湾設備などの物流インフラの充実が不可欠である――――というレポートをいたしました。ただし、物流インフラの充実だけでは、アフリカの経済成長の土台はできません。
もうひとつ、絶対に欠かせないことがあります。
それは、主食をアフリカの土地でたくさん生産できるようになることです。アフリカ諸国が主食を自給できるような農業革命を進めることです。

主食とは、小麦や米やトウモロコシや大豆といった穀類を指します。 なぜ、主食の生産がアフリカの成長に欠かせないのでしょうか? なぜ、主食の自給率を高めなければならないのでしょうか?
理由は3つあります。
第1に、現代文明にとって、主食となる穀類の大量生産は欠かせないから。
第2に、主食となる穀類を自給できないと、社会が安定せず、物価が高いままで、経済競争力がつかないから。
第3に、人口爆発が予想されるアフリカで主食となる穀類が大量生産できないと、世界的な食料不足につながりかねないから。
アフリカが主食を生産できるようになる、というのは、文明的な必然であり、新興国として世界の経済競争に参入する上で必須条件であり、未来の地球の胃袋を満たす上で絶対目標なのです。
個々の理由について詳しく見ていきましょう。

5000年前、世界で巨大文明が誕生し始めます。

チグリス・ユーフラテス川沿いのメソポタミア文明やナイル川河口域のオリエント文明、インドのガンジス文明やインダス文明、揚子江沿いの中国文明。いずれも巨大河川の下流部です。
ここで発達したのが、貯蔵可能な小麦や米といった主食穀物を大量生産する巨大農業でした。いや、農業の巨大化がむしろ文明の発達を促した、ともいえます。食物の安定供給が可能となってはじめて、人口が増大し、市場が形成され、技術が発展し、国家が成立し、文化が生まれたわけですから。
つまり、巨大農業は現代文明の生みの親なのです。現代の機械文明も、この巨大農耕文明の延長線上にあります。
ところが、サハラ砂漠以南、いわゆるサブサハラのアフリカの多くの地域では、巨大農業が発達しませんでした。理由は主に、天候や降雨量や大陸のかたちなど、この地域の地理的な条件が巨大農業の発達にあわなかったという偶然によるものです。
その結果として、サブサハラのアフリカでは人口の爆発的増大が起きず、技術革新がなく、巨大国家が誕生しませんでした。つまり結果として、今の近代文明に至る道を通ることができないままでした。
そしてアフリカ大陸のほとんどが、巨大農耕文明を経て近代化し、機械化したヨーロッパの植民地になってしまったのです。近代化に関してアフリカが出遅れたおおもとに、農業の未発達、があったわけですね。