




古代においては、主食を大量生産できないと巨大文明を築けませんでした。
現代においても、主食を大量生産して自給できないと、途上国段階から経済発展するのが難しくなります。
なぜでしょう? それは貧しいまま物価が高い、という状況に国の経済が陥るからです。
主食が自給できないと、穀類の国内需要を海外からの輸入に頼ることになります。経済力のある先進国ならばともかく、途上国のアフリカ諸国にとって主食の輸入は大いなる負担となります。なにせ、代わりに海外に売る商品がないのですから。
すると当然、国内の物価は相対的に上昇します。つまり負担は最終的に一般市民に押し付けられ、「主食が高い=物価高」という状況が慢性化します。
第1章でも説明しましたように、今のアフリカは道路などの物流インフラが不足していることで物流コストが高くなり、その結果物価高を招いています。その上、主食が割高、ということで、さらに物価高が上乗せされます。
結果、労働者一人当たりの人件費はとても割高、という奇妙な現象が起きます。それがアフリカの多くの国の労働市場の現実です。

これは大問題です。労働コストが割高なために、たとえば工場をアフリカに移転するメリットがなくなってしまうわけですから。
東南アジアや南米の急成長を支えたのは、欧米や日本など先進国からの工場移転でした。割安な労働力があるからこそ、先進国の企業が生産地をアジアや南米に移したのです。アジア諸国や南米などの場合、主食の自給が可能でした。結果、食料の物価が押さえられ、人件費も先進国に比べて割安なために、工場移転が実現しました。
ところが、アフリカの多くの国には、先進国から、あるいはアジアや南米と競争して積極的に工場を誘致できるだけの、コスト面での魅力がありません。
現状を打破するには、物流インフラの充実に加え、農業革命を起こして農業の生産性を一気に向上し、主食の自給率を高めて物価を下げる努力をする必要があります。
アフリカにおける穀類の自給率を眺めてみましょう。
今回現地取材をしたケニアでは、58%。モザンビークでは、87%です(出典:FAO STAT, 2009年)。各国の穀類自給率を眺めると、アフリカ諸国の多くの自給率の低さが際立ちます。東南アジア諸国の高い自給率とは対照的です。
低い穀物自給率がそのまま物価に跳ね返ってきてしまいます。大いなる改善が急務です。