KnowBe4 Japan合同会社
セキュリティエバンジェリスト
広瀬 努氏
DXやデータドリブンの進展に伴い企業の経営にデジタルが深く融合している今日、サイバーセキュリティーリスクはかつてないほど高まっている。多くの企業が、システムの各レイヤーにセキュリティーソリューションを導入することで対策強化に努めているが、「人」に関わるリスクを防ぎ切ることは難しい。
「私たちKnowBe4は、従業員のセキュリティー意識を向上させるための製品をプラットフォームで提供する企業です。しかし、そんな我々でさえも先般、従業員の雇用に際してサイバー攻撃者による詐欺の被害に遭ってしまいました」とKnowBe4 Japanの広瀬 努氏は打ち明ける。
調査の結果、それによるKnowBe4のシステムへの不正アクセスやデータの漏洩、紛失、流出はなかった。しかし、同社はこのことを重要な教訓としてもらうために、広く世の中に公表している。
経緯は次のようなものだ。まず同社は、米国本社のAIチームが必要とするソフトウエアエンジニアを求人広告で募集した。応募者の選考ではオンライン面接を4回実施するとともに、履歴書や住民ID、卒業証明書、推薦者への確認などに基づく身元調査も行ったという。
「特に問題は認められなかったため、当社はあるエンジニアを採用しました。ところが、当該エンジニアに業務用のMacワークステーションを配布した直後から、マルウエアファイルのダウンロードが開始されていることがEDRツールによって確認されたのです」(広瀬氏)。そこで同社のSOCは、速やかに当該デバイスをネットワークから隔離するとともに実態調査を開始。エンジニア本人へのヒアリングも試みたが、最終的に会話できないまま音信不通になったという。
「その後、外部のセキュリティー企業や調査会社との連携のもとで詳細調査を進めた結果、当該エンジニアのIDは盗難された別人のもので、実際は海外からVPN経由でアクセスしていたことが分かりました。履歴書の写真も、ディープフェイクで加工されたものだったのです」と広瀬氏。当該エンジニアは北朝鮮の人物で、国家規模の犯罪組織が関与している可能性があるものと同社は見ている。
このような国家支援型の不正な活動の舞台は、何も米国に限らない。日本においても「北朝鮮IT労働者に関する企業等に対する注意喚起」という報道発表資料が、警察庁から2024年3月26日に公開されている。同様のことは、あらゆる日本企業にも起こる可能性があるといえるだろう。
経緯を見る限り、KnowBe4が人材採用において取ったプロセスには特に手落ちがあったわけではなく、むしろ厳重なチェックを経たものといっていい。それでも、攻撃者は巧妙な手口を使って組織に忍び込もうと試みてくるのだ。